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黒界異人伝・異世界英雄譚 -ようこそ、造られた異世界へ-  作者: 明鏡止水
4章・ロードアの長旅

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第119話 危険なクエスト

目的地へ向かっている途中、イルクがこんなことを言った。

「なあ、ちょっとリスクがある…って言ってたけど、結局何があるんだ?」

彼ら2人を連れ出す時、今回のクエストには少しばかりリスクがある、ということを言ってあったのだ。


「うーん、なんというか…目的ははっきりしてるんだけど、それ以外の危険因子がある、って感じかな」


「え…?」

煌汰の説明ではイルクはよくわからないようだったので、俺が説明した。

「今回の目的は、浪人の集団を片付けることだ。でもマスターの話によれば、こういう時には強い異形とか異人が乱入してくることがあるらしい。リスクってのは、そういう意味だよ」


「あ、そういうことか。確かに、クエスト先で聞いてない相手が出てくることはあるな」

イルクはそれで納得したようだった…というか、クエストをやったことがあるのだろうか。

「ありゃ、経験あるのか?」


「おう。おれたちは小騎士団だからな、クエストはよくやってたんだ。まあ大抵は盗賊とか下級異形を倒すやつだけど…それでもたまに、面倒なやつが出てくることがあったよ」


「面倒な…?」

キョウラが首を突っ込んだ。

「ん?なんだ、キョウラさん興味あるのか?」


「イルクさんたちは、サンライトとセドラルの国境付近で活動していたのですよね?あのあたりに、そんな危険な異形や異人がいたでしょうか、と思って…」


「…あーいや、違う違う。おれたちは元々、このロードアに住んでたんだ。で、10年くらい前にセドラルに移り住んだ。セドラルに行ってからは、クエスト中に何かに乱入されることはほとんどなくなった。だから、今言ったのはロードアにいた時の話だ」


「そうでしたか…具体的にはどのようなものが現れたのですか?」


「中級とか上級の異形だな。中級の異形は、基本的に兄貴がなんとかしてくれてたが…兄貴でも、どうにもならないことが何度かあった。その中一番は、やっぱり魔女に出くわした時だな。あ、知らないかもしれねえが、魔女ってのは魔法使いの仲間で一番強い種族だ」


「ええ、存じ上げております」


「…おっと、こいつは失礼。とにかく、おれたちはその魔女にばったり出くわしたことがあってな。こっちにそんなつもりはなかったんだが、向こうはばっちり襲ってきやがった。兄貴が応戦したが、まるで歯が立たなかったもんで、慌てて逃げたんだ。なんとか逃げ切れたけど…今思うと、助かってよかったと思うぜ」

魔女…か。

なんか、いかにも悪って感じの種族である。


「そんなことがしばらく続いたもんで、おれたちは安全性が高いクエストが多いっていうセドラルに引っ越したんだ。そういや、あいつに会ったのちょうどこの辺だったような?ま、さすがに今はいねえと思うけど、一応用心しようぜ」


過去に前例があったのか。となると、本当にいても不思議はない。

一層、気を引き締める必要がありそうだ。




結局、浪人はすぐに見つけられた。北の平原はそこまで広くなく、見晴らしもよかったからだ。

また浪人自体もそんな手強い相手でもなく、簡単に倒すことができた。


…なのだが、数が足りない。

受け取ってきた依頼書には、浪人は「10人」と書かれているのだが、見つけて倒したのは8人。

…なんだか嫌な予感がする。


「もうちょい奥に行ってみよう。浪人の居場所の近くには、焚き火の跡とかがあるはずだ。奴らは基本野宿だからね」

煌汰の言葉に乗り、少し奥の山に登った。




その、わずか数分後のことだった。


山の中に、やけに大柄な男の異人が1人いた。

しかし、それはどう見ても浪人とは違う。

服の汚れ方こそ浪人に近いが、真っ黒な衣服に鈍い銀色の剣を差して、妙に強い魔力を全身から放っており、明らかに浪人より強いヤツの雰囲気を醸し出していた。


俺達はみな、棒立ちして黙り込んだ。

向こうは真っ黒な瞳で、こちらを睨みつけてくる。

「…え、えーと…」

煌汰が絞り出すように声を出した。



…直後、そいつは信じられないくらいの速度で突っ込んできた。

そして、剣で煌汰の腹を刺し貫いた。

「…!!」


すぐにイルクが突っかかったが、容易く止められて弾き飛ばされた。

俺も火球を飛ばしたが、これも弾いてきた。

ならばと、俺は奥義を出した。


「奥義 [炎剣ストーカー]」

剣に炎をまとわせ、突っかかった…のだが、あろうことか俺が攻撃した途端に相手の体が揺らぎ、消えてしまった。

「なっ…」

思わず声を出してしまった。

そしてその直後、背後から気配を感じて振り返り、剣を間一髪で受け止めた。


手が塞がっている間にキョウラが魔法を放ってくれたが、これもさして効いていないようだった。


そうしている間に、俺は投げ飛ばされ、木に背中を打ち付けた。

そして、奴が一歩一歩近づいて来て…



「[バニシング]!」

キョウラの声と共にパシャッという音が鳴り、奴は腕で目を覆った。

その隙にキョウラが飛び出し、俺を救い出してそのまま離れた場所の低木の陰まで運んでくれた。


「姜芽様…大丈夫ですか?」


「ああ、何とかな…」

俺はそう答えたが、キョウラは念のため、と言って回復魔法をかけてくれた。

正直ちょっと痛みがきつかったので助かった。


「ありがとう…みんなは大丈夫か?」

イルク達を見ると、二人はどうにか大丈夫そうだった。

「ああ、なんとかな…」


「キョウラさんのおかげでな。しっかし、あいつは一体何なんだ…」


イルクとともに目線を外に移すと、奴はまだあたりをうろうろしていた。

「わからないけど、少なくとも浪人ではないな。残り二人だし、あいつに見つからないように片付けるしかなさそうだ」


諦めよう、と言われなくてよかった。

出来ることなら、受けた依頼は完遂したい。



奴に見つからないように身を隠しながら、山の中で浪人を探した。焚き火の跡を見つけたら、その周りを重点的に探し回る。そして、見つけたら静かに撃破する。これがなかなか大変だったが、どうにかクリアできた。


「これで…クリアだよな」

2人を倒したことを確認し、速やかに山を降りる。

もちろん見つからないよう、静かに、しかし迅速に。

幸いにも、下山するまで見つかることはなかったし、下山したあとも敵に遭遇することはなかった。


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