表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒界異人伝・異世界英雄譚 -ようこそ、造られた異世界へ-  作者: 明鏡止水
4章・ロードアの長旅

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

129/689

第116話 首都アラル

異形を消し去り、吏廻琉はため息をついた。

「さて…と。あとは、彼らを戻しましょう」

吏廻琉が樹に向かって「[セイブ]」と唱えると、小さな白い光が空中に現れ、樹の胸に吸い込まれるように消えた。

そして、樹は目を覚ました。

「樹!無事か!?」


「…。あれ?あいつは?」


「異形はもう消えた。吏廻琉が倒してくれた」


「そうか。それはよかった」


吏廻琉は続いて、セルクにも魔法を使った。

「[リテール]」

バラバラになったセルクの体の一つ一つが浮き上がり、元通りにくっついた。


「セルクさん…!」

メニィが声をかけると、セルクは目を覚ました。

「メニィさん…」

セルクは辺りを見渡して状況を理解したらしく、

「そうか…皆さん、ごめんね」


「気にするな」



一応、本当にあいつが司祭と関係があるのか吏廻琉に聞いてみたが、「そんなわけないでしょう?あれは邪霊系の異形よ」と一蹴された。

まあ、それはそうだろう。

「それにしても、実に不愉快な異形だったわ。司祭の使いを騙るなんて…」

何やら、意味深な感じなように感じられた。

「もしかして、あんな感じの異形は他にもいるのか?」


「ええ…上位の異人や権力者の関係者を騙って、悪事を働く異形はそれなりにいる。勿論、総じてそれらの権力者とは関係ない。肩書きを借りれば好き勝手できると思ってるのかもしれないけど、そんな事はないわ」


吏廻琉は杖を横に持ち、目をぎらりと光らせた。

どこか妖艶なようにも取れるが、見方によっては不気味だ。彼女の敵たる異形なら、尚更だろう。





そんなこんなでラニエダを抜け、30分もしないうちに町についた。

騎士の町…というから、いかにもな感じの西洋風の鎧が歩き回ってるのかな、なんて思ったが、そんなことはなかった。寧ろ、なんというか…軽装の旅人みたいな格好の人ばかりだった。


なんか意外だな…と思ったが、よく考えれば騎士である煌汰もこんな感じの格好をしてるし、おかしくはないか。

街角でハンマーを持ち金属を叩いている人、剣を背負って数人で盛り上がっている人、とファンタジー世界らしいことをしてる人もちらほら目についた。


「あとは、真っ昼間から酒盛りしてる連中でもいれば完璧なんだけどなあ…」


思わず心の声がこぼれた。

いや、別に大した意味はない。ただ、もう少し雰囲気を感じるためのあくまで個人的な意見、というだけである。

しかしそれが通じたのか、はたまた偶然か、煌汰がこう反応した。

「いるよ。外にはいないだけで、酒場に行けばまず間違いなく見れると思う」


「マジかよ。じゃ、行ってみよう」




煌汰の案内で、町の西にある酒場へやってきた。この町には酒場は5箇所あるらしいが、ここが一番入り口から近いという。

確かに、ここまで5分くらい歩いただけで着いた。


個人的に意外…というかちょっと気になったのが、店の外に飲食スペースがまったくないことだ。それはここだけでなく、道中の料理店なども同様だった。

この現象について煌汰に尋ねた所、何でもこの国ではもとより屋外で食事をする文化があまりない、というのと、酒の存在が大きいのだという。

騎士は酒好きが多いが、酔った様子を部外者に見られる事には恥を感じる。そのため、外で飲んで酔った様子を不特定多数に見られないために、外に飲食スペースを置かないようになったらしい。


代わりに、酒場や飲食店の店内はかなり広いという。

ものは試しとばかりに覗いてみたら、確かに結構広かった。何畳くらいあるかはわからないが、学校の教室を3つか4つくっつけたくらいの広さはある。

店自体がやたらと縦長だったのがなんか新鮮な感じだった。


そして奥には、煌汰の言ってた通り酒盛りをしてる騎士達がいた。

4人から6人の3つのグループが、豪快に笑ったり大声で話したりしながら宴会を開いていた。


それを見てたらなんか腹が減ってきたので、適当に食事を取ることにした。

居酒屋っぽく焼き鳥や刺し身もあったが、刺し身が妙に割高な事に驚いた。

焼き鳥が100テルン(記号はアルファベットのVにUを逆さにしてくっつけたような形。一見読めなかったが、3秒後にわかった)、ビールが120テルンであるのに対し、刺し身は600テルンと書かれていた。


マスターに聞いたところ、この国には海がないため、海水魚は貴重らしい。

一方で降水はそこそこあり、年間通じての気温も高めなので農業は比較的容易で、古くから酪農や耕作が盛んだった。そして、その中でも特に発展していったのが麦類、そして酒の製造であったという。


「この国では、パンとビスケットと酒が庶民の味方なんです。いや、城のお偉方だってほぼ毎日これらが食卓に上がってる。もしもこれらがなくなったら、この国の人達は、まあ…生きていけないでしょうね」


マスターはそう言った。

ビスケットか…騎士もお菓子は食べるんだな。と思った矢先、お通しの野菜の漬物をつまみながら、煌汰が突拍子もない事を言い出した。


「ねえマスター、なんかクエストはない?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ