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黒界異人伝・異世界英雄譚 -ようこそ、造られた異世界へ-  作者: 明鏡止水
1章・始まり・セドラル

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第7話 大盗賊

奥の部屋には、多数の木箱と数人の盗賊。

あと、木で作られた階段の上に小高い壇があり、その奥に親分らしき男が座っていた。

そいつは、すぐにこちらに気づいてきた。

「ん…おぉ、お客さんが来たみたいだな。

おい、もてなしてやれ」

親分がそう言うと、盗賊たちが一斉に武器を向けてきた。

奴らの武器は剣、斧、棍棒、あとナタみたいな刃物。

剣以外は、そんなに分が悪い相手でもない。


「よし…やろうぜ」

俺がそう言うと、樹は棍を構え、キョウラは手を肩の高さで広げて白い球体を作り出した。

「へえ、こいつは驚いた。聖女様もいるじゃあねぇか。よし、男どもだけ殺せ」

親分の言葉に反応するように、盗賊たちは俺達に襲いかかってきた。



しばらくは適当にやり合っていたが、乱闘を繰り広げて気付いた事がある。

奴らは俺達にはムキになってかかってくるが、キョウラが相手になった途端あからさまに手を抜くのだ。

そして、見事キョウラの魔法で消えていく。


女相手には優しくなるのか。

やはり盗賊…というか、男であるようだ。

だが、奴らを前にして遠慮なく魔法を使う様子からすると、キョウラは気づいていないらしい。

純粋なのだろうか。


キョウラは盗賊達の自分への当たり方に関わらず、次々に盗賊達の生命力を吸い取る。

盗賊たちは、次々とその場に倒れてゆく。

なかなかに恐ろしい光景だ。


気づけば、盗賊は親分とその両横にいる二人を除いて全滅していた。


「わ…はわわっ…!?」

面白いくらい拍子抜けな台詞を発して怖気づいた親分に、俺達は詰め寄った。

「さて、あとはお前らだけか。どうしてやろうか」


「捕らえてギルドへ身柄を渡しましょう。然るべき裁きを下してくれるはずです」


「いや、ここで始末したほうがいいと思う。もしまだ残党がいたら、連れて行く途中に襲って来かねないからな」

キョウラと樹がそんな話をしているなか、唯一こいつらの処分について言及していない俺に対し、親分は命乞いみたいなことをしてきた。

「わ、わかった!あんたらにゃかなわねぇ!10000だすから、見逃してくれ!頼む!」

単位がないのでわからないが、恐らくは金を出すから見逃してくれと言ってるのだろう。

ダメだと言うと、「なら15000!どうだ!?」と言ってきたが、答えは樹達の方を見るまでもなかった。


「…!わかったよ、30000出す!だから…頼む!」

親分は、子分二人と共にひざまずいて懇願してきた。

だが、俺はそんな頼みを受ける気はない。

無言で奴を睨むと、奴は逆上した。

「なんだ、まだ欲しいってのか!

がめつい奴だ!お前ら、やっちまうぞ!」


さっきまでとは打って代わり、子分と並んで剣を出した。

「ようやくその気になったか。よし、行くぞ!」


まず、子分の片方が斧を振り上げて俺に向かってきた。

向こうの斧をかわして、顔にカウンターを決めたが、奴はそれでは倒れなかった。

なので、素早く後ろから頭を叩き割ると、奴は倒れた。


「やりやがったな!」

それを見たもう片方の子分がこちらに向かってきたが、キョウラの魔法を背後から食らって転倒した所に樹の棍を叩きつけられ、事切れた。

残るは親分だけだ。


「あとはお前だけだ!」


「へへ…そいつはどうかな…?」

親分がそう言うと、親分と同じ姿をした分身みたいなのが5体現れた。


「なっ…!?」

俺は、キョウラと樹が驚いたのが気になった

多分、普通に魔法を使ったんだと思うのだが。


「今の…「アピアー」だよな?なんでこいつが使えるんだ!?」


「はい…間違いありません。なぜ、白魔法を使えるのです!?」

そう言えば、白魔法ってのはキョウラ…というか修道士、あと他のいくつかの種族が扱う魔法だって言ってたな。

とすると、こいつもそれらの種族なのか?


…いや、それは違う。

なんとなくだが、わかる。

こいつは、紛れもなく俺の同族だ。

そして、防人は白魔法は使えない。

となると、こいつは本来種族上使えないはずの魔法を使ったってことになる。


こうなると、俺にも意味がわかる。

そして、疑問が湧く。

なんでだ?なんで、あんなの使えてるんだ?


「さあて、なんでだろうなあ…行け!」

奴が叫ぶと、奴の分身は一斉に向かってきた。

それらはそれぞれ武器が違い、剣、槍、斧、弓、あと短剣を持ったやつがいた。


最初に俺に向かってきたのは、槍を持った分身。

向こうはリーチが長いのできついかと思ったのだが、そうでもなかった。

まあ、これは当然なのだが、槍の攻撃は突きがメインだ。

しかも、剣と違って至近では刃を受けない。

なので、突きを回避して懐に潜りこめば、比較的安全に攻撃を当てられる。

それに、これはやらなかったが、槍は細身の武器であるので、斧ならへし折るのも恐らく容易い。


斧は、槍には強い。

故に、有利に立ち回れる。

俺の中の何かが、そう訴えかけてきた。


一方で剣持ちに関しては、一目見ただけで勝ち目が薄い、避けようという考えが浮かんできた。

理由としては、剣は斧より軌道が読みづらく、さらに斧より軽いので取り回しも効く。

また斧には出来ない「突き」が出来るので、多少距離があっても攻撃が届く。

短剣などにも同じ事が言えるが、機動性が高い武器を持った相手には、斧では分が悪い。

…と、俺の中の何かが語っている。


「姜芽!」

樹が、弓持ちの矢をかわしながら言ってきた。

「変われ!そいつはオレがやる!」


「わ、わかった!」

樹と入れ替わり、弓持ちの相手をする。

向こうはサッサッと矢をつがえて放ってくるので、近づく隙がない。

やはり、遠距離武器相手ではキツイか…と思った直後、ふと思った。

弓の矢は貧弱なので、斧ならば防ぐ事は容易い。

つまり…


斧を縦に持ち、盾代わりにする。

そして、向こうの構えに合わせて斧を動かし、矢を弾く。

こうすることで、矢を完全にシャットアウトできる。

そしてそのままじりじりと近づき、至近まで近づいたら斧を振るう。

こうして、あっさりと撃破できた。


よかった…と思った直後、何かが右の耳元をかすめていく感触があったかと思えば、鋭い痛みが走った。

慌てて耳を手で抑えたが、幸い切り落とされてはいなかった。

「姜芽様…!大丈夫ですか!?」


「ああ…」

キョウラの方を見ると、短剣持ちとやり合っている所だった。

そいつは、キョウラに肉薄しつつ短剣を投げてきていた。

どうやら流れ弾…というか、キョウラに当たらなかった短剣が俺の耳をかすめたようだ。


「キョウラ!」

助けたいが、短剣が相手では…。

と思った直後、はっと閃いた。

そうだ、何も真っ向からやり合う必要はないんだ。


「…」

奴の手元に意識を集中し、短剣を振るうその手を発火させる。

すると、奴は驚き、慌てふためいた。

そこをついて、キョウラが剣で斬りかかると、分身は消えた。


さっきの弓持ちもそうだったが、この分身、耐久力はないようだ。

これなら、まだいくらか楽が出来そうだ。

と思った矢先、樹が剣持ちを始末してくれた。

残る斧持ちはどうするか…と思ったら、キョウラが魔法を使った。

「[フラッシュ]」

白い光が放たれ、斧持ちを照らしつつダメージを与える。

これで、斧持ちも消えた。


「へえ…やるじゃねえか。だがな、このオレはそう簡単には倒されないぜ!」

奴は俺に向かってきた。

剣を受け止めたが、押すのが地味にきつい。

斧では、一時のガードをするのが精一杯なのかもしれない。


「[ディヴァイン]!」

キョウラが放った光魔法を、奴はバク宙してかわした。

そしてキョウラに突進し、斧で薙ぎ払った。

「きゃっ!」


「キョウラ!」

それを見た樹は、棍を振り上げてぐるぐると回し始めた。

すると、樹の足元から泡のような水が湧き上がり、樹の棍にまとわりついていく。

そして…


「ようし…!」

水が棍全体を包みこむと、樹は棍を回すのを止めた。

そして、親分に飛びかかる。

親分は剣を構えたが、樹は素早く横に回り込み、

「奥義 [水竜乱撃]」

水を纏った棍で、5連続の攻撃を打ち込んだ。

「がっ…はっ…」

樹の攻撃を全てもろに食らった親分は、にわかに血を吐いて倒れた。

樹は親分の安否を確認することなく、キョウラに駆け寄った。

「キョウラ…大丈夫か!?」


「はい…大丈夫です。回復魔法を使いましたので」


「ならよかった。修道士は打たれ弱いからな、物理の被弾には気をつけろ」


「わかりました…ありがとうございます」

まあ俺としては、キョウラは回復も出来るし大丈夫だろうと思っていた。

それより、せっかく覚えた奥義を今の戦いで使えなかった事が残念だった。

カッコよく魅せるチャンスだったのに…。


あたりの木箱を調べたら、どうも今までに人々から奪ったもののようだった。

どうしようか悩んだが、キョウラが良さげな案を出してくれた。


「とりあえずギルドへ持っていきましょう。あと、ソネットの壊滅も報告しなくては」


「だな。よし、ギルドに戻ろう」


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