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黒界異人伝・異世界英雄譚 -ようこそ、造られた異世界へ-  作者: 明鏡止水
1章・始まり・セドラル

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第5話 奥義

「…じゃ、本題に入ろう。奥義、ってのを覚えたいんだが」


「え、もうそこまで行くか?」

樹にはちょっと引かれたが、俺は奥義なるものを早く覚えたい。

まあ、特に理由はない…強いて言えば、カッコいいから。あと、オリジナルの技ってのがなんか…心が震えるからだ。

「ああ!だって、オリジナルの技ってなんかカッコいいからな」


「軽いな…まあ、わかるけどさ。

悪いが、こればっかりは自力で編み出すしかないぜ?」


「むっ…そうか」

よく考えてみれば当然ではある。

オリジナルの技、というくらいだから、誰かに教わるようなものではないだろう。

「奥義は教わるもんじゃない。自身の経験と発想力と知恵を振り絞って、編み出すもんだぜ」

そうは言われても、俺はそんな発想力がある訳ではない。

技もだが、その名前にも悩む。

厨二病にかかってたこともあるにはあるが…だからと言って、こういう時にすぐ技を編み出せるかとなると別問題である。

しかし…出来れば、早めに覚えたい。


「うーん…難しいな」

ここで、1つ考えが浮かんだ。

「そうだ、なら樹とキョウラの奥義を見せてくれないか?」


「私達の…ですか?」


「ああ。…あれ、キョウラも奥義持ってるんだよな?」


「ええ、一応…」


「いや、なんでそうなる?」


「どんな感じなのか知りたいし、あと…実際に見れば、何かヒントになるかもしれないと思ってな」


「確かに、それは一理ありますね。樹様、ここは姜芽様のお願いを聞き届けましょう」


「…まあ、いいか。損する訳でもないしな」

というわけで、見せてくれる事になった。






「まずは…そうだな、キョウラから見せてくれるか?」


「私から、ですか?」


「頼む!」

手を合わせると、キョウラは躊躇しながらも「わかりました」と言ってくれた。


「では、行きますね…」

そしてキョウラは息を整え、剣に手をかけた。

「奥義解放。…[白光円斬]」

キョウラが剣を抜いて払うと、空中に白い斬撃が孤を描いて走った。

「…いかが、でしたか?」

心配するような声で聞いてきたが、答えは決まっている。

「…すげえよ!カッコよかったぜ!」


「そ、そうですか…?」


「ああ!」


「あ、ありがとうございます…」

キョウラは、照れつつも嬉しそうだった。

女の子のこういう顔を見て、悪い気になる男は恐らくいないであろう。


「おお、いいなあ…姜芽、ありがとな」

なぜか樹に感謝された。

てか、そう言えば樹は少しばかりムッツリな所があったんだっけ。

そう考えると、やはりこいつは樹なんだな、と思わされる。


「じゃ、次はオレが行くぜ。二人共、よーく見とけよ!」

樹は棍を横に構える。

「奥義 [大滝(おおたき)登り]」

すると、地面から水の柱が文字通り滝のような速度で吹き上がった。


「おぉ…!」

なんか、某大食い一頭身のゲームの、ロボットなプラネットが舞台の作品のギミックを思い出した。

凍らせたら、上に乗れたりしないだろうか。


「どうだ…?」

樹はドヤ顔を決めてきた。

なんかムカつくが…まあいいだろう。

「ああ、派手でよかったよ…」


「なんか反応薄いな。…ま、いいけどさ。で、どうだ?今のでなんか閃いたか?」


「いや、そんなすぐには…」

そう言いかけて、ふと思いついた。

「いや、ちょっと待てよ…」

だが、これは今の俺にできるかわからないので、まずは手をかざして空中にサッカーボールくらいの大きさの火の玉を召喚する。


「…よし、いけそうだ」

テストは大丈夫そうだ。

火の玉を消し、次に斧を後ろに構える。

そしてそれを振り上げつつ、地面から火柱を噴き上げる。

「おお…なかなかいい感じじゃんか」


「水柱を作るのを見て閃いたんだ。そして、ここに…」

言いながら、斧を振り下ろす。


「おお…!いいじゃん!」


「姜芽様…すごいです!」

そう言ってもらえると、嬉しい。

これだけでも十分強力なように思えたが、さらにそこに樹が助言をくれた。

「斧で切る時は、斧に火をまとわせるといいんじゃないか?」


「火を?」


「そうだ。そうすれば、全部で3回火属性の攻撃が出来る事になるし」

なるほど、もっともだ。

もう一度試してみることにする。


その前にまず斧を火で包めるか試してみたが、大丈夫だった。

なので、斧に火をまとわせ、その状態で振り上げ、火柱を起こし、振り下ろす。

「結構様になってるぜ。奥義にふさわしい演出だし、威力も相当あるだろ」


「だよな!…よし、名前をつけよう」

とは言え、これが地味に苦戦した。

あまり安直過ぎる名前だとなんかダサいし、逆に厨二病を拗らせたような名前にするのもなんか気に食わない。

短時間の間に、めちゃくちゃ悩んだ。


「バーニング…ブレイズ…ファイアー…」

思いつく「火」に関する単語をぶつぶつと口に出す。

そして必死に頭を捻り、編み出した名前は…

「フレイム…ん?フレイム…フレイムポール!

なあ、[フレイムポール]ってのはどうだ!?」


「よい名前だと思います。格好いいです」


「ま、姜芽がそれでいいならいいんじゃないか?奥義の名前なんて、そんな深い意味はないし」

相変わらず樹は冷めた反応をしてくれるが、そんな事はどうでもいい。

俺の考えた名前。それを、キョウラも樹も少なくとも否定はしてこなかった。

それが、嬉しかった。


「なら、決まりだな。奥義…あ、そう言えばキョウラは『奥義解放』って言ってたけど、樹は単に『奥義』って言ってたよな。どっちが正しいんだ?」


「正式には解放をつけるけど、実際は略す事の方が多いな。ただ、技と違って『奥義』から詠唱しないと基本的に出せないからそこは気を付けろよ」


「わかった。てか、技って詠唱なしでも出せるのか」


「ああ。何なら宣言する必要はなかったりするぜ…まあ、なんか宣言したくなるけどな」

それはそうだ…というか、ある意味当然である。

自慢の技を繰り出して魅せるのだから、技の銘を叫ぶのは当たり前だろう。


「よし、じゃあ決まりだ。奥義 [フレイムポール]、これが俺の最初の奥義だ!」


「よかったですね。私も心強いです」


「ま、やっと異人っぽくなったって感じだな。

…よっしゃ!ここまで出来ればもう十分だ。あとは、早いとこ盗賊どもを潰しに行こうぜ!」


「言われなくてもそのつもりだ。キョウラ、行くぜ。準備はいいか?」


「はい、姜芽様」


「よーし。それじゃ、行こう!」


正直、不安は根強くあった。

まだ、戦いに慣れてはいない。

奥義にしろ、たった今習得したばかりだ。

だが、これから少しずつ時間をかけて自分のものにしていけばいい。

俺は、人間界でも生き抜く事が出来たのだ。

この世界でも、きっと生きて行けるはずだ。   


戦いでもなんでも、切り抜けてやる。

どんな相手が現れようと、必ず。

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