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夜明け前

作者: 天満宮 修

終わらない悪夢を見ているようで、ただ毎日寝て起きて、繰り返しでは無いのだけれど、それでも辛さはあり、私は生きてるのが嫌になった。


           十二月の月明るき夜。


 山々の上は、ミカン色に染まっていた。やがてそれは、空の屋根まで広がり、淡い林檎色になっていた。

 私は、悪夢を見ていたのである。明日の不安に堪らなくなり、目が覚めてしまったのである。目は、まだおぼつかず、あたりで鶏舎から鶏の雄叫びが聞こえた。

 悪夢とは明日への恐怖であり、その恐怖とは明日が来ることであった。

 つまり、ここで私が言いたかったことは、ちっとも私は悪夢から覚めていないのであった。


           冬の早く目覚めき朝。


 ここまでは、私のいわゆる日常と言われるものである。しかし、いつまでも事実を綴っても、それでは私の伝えたいことは伝わらないだろう。更に私の心の有り様と言うものを書こう。いや、伝えて良いのだろうか、きっと皆んな呆れてイライラして、誰も私の気持ちなんて理解しようとしないのでは無いか。


 世の中は、好きか嫌いかの二択であり、この感情がありとあらゆるものの中心であるかのように思える。

 私は、理解されない事よりも、理解しようとしない事にのみ悲しみを覚える。こんなことを言うと、自称の知識人やら、博識だとか何だの人たちが一斉に私を虐めるであろう。私は如何なる時も論理に従い、客観的に判断するだろうとね。彼は、自身のありとあらゆるものを使って、自分の考えを最適解であると言う。

 此処に私の心理があるように思えてならない。


 私が高等学校に在籍していた頃の話である。

 クラスの一人に、二、三年、アメリカに住んでいたとか何とかで、英語に長けていて広い知識を持っていたやつがいた。

 彼と私は、たまたま同じグループになり、共に活動をする事があった。私は彼に自分の意見を述べた。そうすると、たちまち彼は饒舌になりながら唾を飛ばして、その持ち前の知識を使って自身の正当性を魅せたのである。私は、彼が少しのイライラ持っている事を瞬時に見抜いた。

 いやに、長くなったが、最後に補足を。人の考えには、必ずしも好きか嫌いかの二択である。もし、この二つを持たなければ、それはきっと機械的な冷たい、道義なんか古臭いと笑うような奴だろう。

 

私が言いたいのは、つまり分かり合うなんて事は不可能に近いのでは無いのかと言う事である。これと同じ事をある人に言ったら、そんな事を言うから戦争がなくならないんだとか、突拍子もない事を言ってきて、私と分かり合おうとはしなかったのである。

 かくいう私は、戦争という今起きてる悲惨な言葉を聞いて、同情し、仕方なしに彼の好きを好きになろうとした。


 きっと皆んな私が嫌いである。



 いやはや、何と怪奇的。まるでこれでは呪いの文では無いか。辛い辛い辛い辛い辛い辛い。


 二、三度咳をする。身体を弱り、死ぬ思いである。今より、更に三、四度咳をすれば、崩れ落ちて消えて無くなる。魂さえ高潔にいられたら、苦しまなくて済んだろうに。死ねる思いであった。そんな事はない、ただの風邪であった。


 私の周りでは、皆んな死にたいと言うけれども、次の日にはまた社会の不安と自信の嫌悪を呟いている。

 なぁ、やはり嘘だろう。

 それは一種の承認欲求。生物として最大の承認。

 


 今の私の生きる望みは、細やかな幸せと微塵もない不幸せである。

 辛くても、生きるしかないのだ。何とか踏ん張るしかないのだ。生物としての自分がそれを望む。

 社会に埋もれた哀れな自分がそれを拒む。

 今日も太陽は昇っている。

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