第23話
あれから順調に回復し、あとはリハビリをして退院となる。とはいってもかなり身体は鈍ってしまっているが。
「退院したらトレーニングしないとな」
先ほどお見舞いに大門寺から貰った結晶クッキーはどうやら行きつけのカフェのお菓子らしい。カラフルな飴細工に加工されており、噛みごたえのある食感は癖になりそうなほどだ。
入院中は蒼助やイージスからの連絡はなく、戦っていたことが嘘のように静かな毎日を過ごしている。
看護師の噂だがルーラーこと柳葉は退職されたらしい。光上さんからは詳しい話は聞いてないが罪を償うためだろう。彼が直接他人の命を奪った訳ではないがハザードチルドレンを作ってしまったからな。患者や看護師からは好かれていたみたいだし、いつかどこかで医師として働いているのではないだろうか。
「ふぅー、着いた」
暇になるといつも決まって最上階の展望台で時間を潰している。階段から行けば運動にもなるし眺めも悪くない。
「あ、お兄ちゃん」
椅子に座っていると少年が話しかけてきた。彼は入院中を知り合った、星峠 幸太郎。北区での超獣災害に巻き込まれ、両親共に病院へ搬送されたが彼が目覚めた時には二人は他界していた。
「よっ、幸太郎」
「お兄ちゃん、聞いて! 僕退院が決まったんだ!」
「お、良かったな」
「けど......」
退院は決まっているが、表情は晴れない。身よりのない彼は児童養護施設へ入所する予定になっている。想像もできない不安があるに違いない。
「不安か?」
「うん」
独りぼっちになってしまったうえに小学校も今までと違う所になる。環境が大きく変わるし幼い彼には想像もできないだろう。
「ほらよ」
「ありがとう」
自動販売機で飲み物を買い渡した。小さな両手でペットボトルを持ちジュースを飲み、先ほどよりも微かに表情は柔らかくなっている。
「美味しいか?」
「うん! やっぱりお兄ちゃん優しいね」
純粋な瞳で見つめられると照れるな。
「あのね、怖くて今まで誰にも言えなかったんだけど、僕ね見たんだ。青いロボットが悪者と戦ってるの!」
青いロボット? もしかしてスーツのことか?
「へ、へ~。気になるな~」
「教えてあげるね! 白いロボットも出てきてね、追い払ってくれたんだよ! 」
ユーリのことだな。あの戦いを見ていたのか。
「だから僕も将来、困っている人を助けられるロボットを作りたいんだ」
「幸太郎ならできるよ」
「それにあの悪い奴らを懲らしめたい! お父さんとお母さんみたいな人がこれ以上でてほしくないから......」
幸太郎の考えはごく自然なことだ。だけど力でねじ伏せても、争いが争いを生むことになる。
「懲らしめるんじゃなくて話し合って解決して欲しい」
「なんで?」
「人の中には嫌なことをされたら、逆に仕返しをする人もいるからね」
「そっか、そうだね」
拳を振るって戦っている俺がこんなこと言えた義理じゃないが。
「幸太郎には優しさで困っている人を助けて欲しいな」
「わかったよ、お兄ちゃん」
現実は話し合いだけじゃ解決なんかしない。けど、その根本を忘れたらきっと取り返しのつかない事になってしまうから。
「後、あの悪い奴らは、お兄ちゃんが必ず捕まえて話し合って来るから待ってな」
幸太郎の頭をクシャクシャに撫でてから展望台を後にした。
「お兄ちゃん......?」
「また、会おうぜ」
幸太郎は強い少年だ。自らの不幸を他人に被らないように将来を見いだしている。その大切さを忘れないようにしないとな。




