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蒼鋼のブレイバー  作者: Sangomiya
第1章 Beginning
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第3話

「邪魔だぁ!」


 叫びながら逃げる如月は近くの森林に逃げ込んでいた。鬱蒼とした木々の中に幾つかの沼がある場所だ。追うとその先に焚流がいた。


「邪魔な存在はお前だ」


 尋常じゃない力で突き飛ばされ尻餅を着く如月。その後、顔面を蹴り飛ばされ地面に倒れ、首に向かって足先が食い込む。


「タ、スケテ......クレ」


「裁きを受けろ」


「焚流! 落ち着け!」


 いつもの焚流じゃない。何かに取り憑かれた様な邪悪な笑みを浮かべている。


「白鋼君、居たんだね。見ててよ僕強くなったから」


「人殺しをするつもりか!」


「違うよ。これは世直しだ。白鋼君も一緒にやろうよ」


 怒りで目の前が見えてないのか。


「焚流、止めるんだ」


「白鋼君は分かってくれると思ってくれると思ったんだけどな。じゃあ、さようならだね」


 如月ではなく、こちらに眼光が向く。それでも説得しないと。


「力で押さえつけたらお前も、アイツらと同じだぞ!」


「うるさい! そういう世界じゃないか!」


 地面にひびが入るほど両足に力を溜め、上空へ跳躍した。こちらに向かって脚撃を放つ。


「なんなんだ、この力。まさか!」


 避けきれない、とっさに右腕に装着されているデバイスを起動した。


「装甲ヲ展開シマス」


 電子音声と共にデバイスの画面からパワードスーツのホログラムが前方に出現する。瞬時に身体に重なり実体化した。


「正常二装着サレマシタ」


 脚部のブースターを点火し後ろに距離を置き直撃は避けたが、衝撃に巻き込まれ吹っ飛ばされる。防御が間に合い、バランスを保てた。


「白鋼君も力を持っていたんだね、本当に残念だよ」


 焚流は懐から注射器を取り出し自らの首に刺した。


「やめろ! 焚流!」


昆虫の脱皮の様に背中が裂け、そこから粘液を纏い生まれ変わった焚流が出てきた。二つの赤い複眼、二本足で立つ昆虫型のモンスター。両腕は上腕までしかないが、鋭い爪が生えた強靭な両足を地面に突き立てている。


「結局こうなるのか......」


 再度、焚流は両足に力を溜める。人間態であの威力ならモンスター化したら計り知れない。跳躍力も何倍も高い。


「生い茂った草木に隠れるしかないか」


 それでもヤツは上空から正確に狙いを定め襲い掛かってきた。


「ぐあぁ!」


 両腕で防御したが、左腕にヤツの脚撃が直撃し装甲に大きく亀裂が入り火花が散る。


「左前腕、防御機能停止」


 そして衝撃により周囲の木々はへし折れ地面は抉られている。


「クソッ、どうすれば」


 逃げても隠れても無駄。避けるのに専念するのがやっとだ。足場はぬかるんでいて動きにくい。足場? これだ!


「来いよ! 焚流!」


 またジャンプ攻撃を仕掛けてくるが、直撃を避け衝撃に耐える。沼地の泥が飛び散り、雨のように降り注ぐ。そう、ヤツが着地した場所は沼地。浅い沼だが、ヤツの脚力で落下すれば、その足は泥に飲み込まれる。


 必死にもがく焚流。両腕が前腕までしかなく退化しているため這い上がって来れない。激痛が走る左腕をやっと動かしデバイスにかざす。


「安全装置ヲ解除シマス」


「目を覚ましてくれ」


 拳を顔面に叩き込んだ。倒れ込んだ身体を沼から引っ張り出し、少ししたら人間の姿に戻った。


「へへッ、ざまーみろだ」


 気絶していた如月が覚醒し罵声を浴びせる。その姿を見て怒りがこみ上げてきた。


「そこの青いの、誰だか知らんが助かったぜ」


 近付いてきた如月の胸ぐらを右手で掴み、そのまま宙に浮かせる。


「おまっ、なん......だよっ!」


「二度とこんな真似はするな」


 右手を放し地面に落ちる。


「なんなんだよ、クソッ」


 苦痛に歪む顔で睨み付けてくる。捨て台詞を吐き、よろめきながら去っていった。


 焚流を背負い小屋へ戻ると取り巻きはおらず、白鷺会長が女子生徒を介抱していた。


「大丈夫かい!? 如月の仕業だね、救急車を呼ぶよ」


 上手いこと話を合わせ、戦ったことを悟られないように立ち回らないと。


「お願いします。焚流が噂を嗅ぎ付けて近くに来てました。如月とぶつかり合ってしまい......」


「そうか、焚流君からしたら憎き相手だろうし。けど、戻って来てくれて良かった」


 救急車を呼んだ後は白鷺会長が対応してくれた。焚流は当分の間、眠りにつくだろう。今までも、モンスターと化した人間達はそうだった。そして目が覚めるとモンスターに関する記憶は消えている。彼も同じだろう。


 後日、蒼助と今回の事件について話していた。如月は白鷺会長の活躍によって罪を償うことになった。まぁ、やつの性格的に更正するとは思わないが。


「お疲れさん。如月の罪が明るみになったし、結果オーライだろ」


「まぁな。けど焚流と彼女の傷が癒える訳じゃない」


 モンスター化した焚流を止めたのは正解だったのだろうか。仇を打たせた方が良かったのではないかと考えてしまう。 

 

「白けた顔してんなよ。お前は最善を尽くしたろ」


「本当にこれで良かったのかなって」


「誰かを守る。それが俺達のやり方だろ。お前が止めなきゃ斉賀焚流(サイガタケル)は殺人者になってたかも知れない」


「そう......だな、そうだよな」


 誰かを守る。忘れちゃいけないな。

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