第22話
プロローグ
大門寺雪の視点になります。
最近できたカフェ、ダイヤモンド。住宅街にひっそりと佇む、小さなお店。心に傷を負った人達が社会復帰を目標にスタッフとして活動している場所でもある。
「いらっしゃい。雪ちゃん、いつもありがとう」
この人はオーナーの水城冬。淡い水色のゆるふわなショートカットに細い華奢な身体は同性の私からみてもドキドキするほど可憐だ。お兄さんもいて名前は水城氷。厨房から基本的に顔を出さないけど、この前一瞬見たことがあって、とても背が高く、ツンツンした長い髪型が特徴だった。
「ダイヤモンドティー、お願いします」
「フフッ、いつものね」
冬さんが放つ大人のオーラ、スタッフと和気あいあいと接する優しい姿は私の目標だ。
「お、お、お待たせしました」
「ありがとう」
注文したダイヤモンドティーは無色透明でありながら一滴でも口に入れると華やかな風味が全身を巡る。ティーカップの中には白い花びらが舞い、名前の由来でもあり、ダイヤモンドダストそのものだ。
それを届けてくれたのは私と同い年の女の子だった。この子は人と接することに恐怖を感じているみたい。けど、一生懸命さが伝わってきて頑張ろうって勇気を貰える。だから、私はこの店が好きだ。
頑張っている、と言うと友達が戦いで倒れたことを数日前に知り、急いで病院へ駆け込んだ。容体は安定しており、大事には至らなかった。ティーカップの縁を指でなぞり、思いふけていると向かえの椅子に冬さんが座った。
「何か悩みごと?」
近くで見るとぱっちりとした瞳に、白い肌はより羨ましく感じる。
「あ、いえ。将来のことを考えていて。私には何ができるんだろうって」
「その歳で将来なんてしっかりしてるわね」
しっかりなんかしてない。焦っているだけ。
「将来のためにすごく頑張ってる二人の友達が居るのに私は何もできなくて」
進んでいく二人の背中をただ眺めている。ボロボロになっても誰かのために立ち上がる姿を見ると自分が惨めに感じた。
「冬さんもすごいですよね。自分でやりたいことを見つけて」
考えれば考えるほど卑屈になってくる。そんな私に冬さんは親身に応えてくれた。
「逆に雪ちゃんは何でもできるってことじゃない?」
「なんでもできる......?」
「うん、これから色々な事に挑戦していば良いじゃない」
そんなこと考えたことなかったな。色々な事に挑戦か......
「この道しかない、私とは違うから......」
「冬さん?」
「何でもないわ。そうだこれ!」
冬さんから渡されたのはこの店の看板商品の一つ、結晶クッキーだった。雪の結晶を型どった可愛くも美しい見た目をしたクッキーであり、SNSで良く見かける。
「いいから貰って、二人の友達と一緒に食べて!」
「何から何まで......ありがとうございます!」
やっぱり私はこの店が好きだ。いつか、誰かの心に寄り添い合えるそんな人に成りたいと思っている。




