表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蒼鋼のブレイバー  作者: Sangomiya
第4章 Hazard children
25/32

第18話

 文化祭の出し物はである、演劇が近付いてきた。衣装や道具、機材の準備は問題なく進行しているが。


「黒岩さん、いつになったら覚えるのかしら」


「うるさいわねー、ちまちま!」


 案の定、役者の相性が悪すぎるため稽古の効率が悪い。姫の二重人格の演出は姫役二人が舞台に上がり台詞のある方にスポットライトが当たる仕様だ。そのため二人の連携が求められる。


「二人とも、落ち着いて。また最初からやろうよ」


「白鋼さんは黙ってて」


「もっとイケメン王子だったらやる気も出るのになー」


 まぁ、こんな感じで非常に空気も悪い。あとイケメンじゃ無くて悪かった。


「ハイハイ。じゃあ、一旦休憩にしよう」


 脚本を担当する生徒が稽古の流れをまとめており、休憩のお達しだ。稽古の合間に入るこの休憩が心の拠り所になっている。ドリンクを飲み一呼吸。疲れた身体にスポーツ飲料が染みる。


「もう、姫役一人にしない?」


「あの子、やる気もないしね。一人にしてもストーリーには影響ないし」


「この際、代役でも良くない?」


 裏方スタッフの話し声が聞こえてきた。きっと黒岩さんを外してストーリーを練る方針を考えているのだろう。出来ない人間を外せば事は上手く運ぶ。けど、そんなのは傲慢だ。


 稽古は続き......


「とりあえず今日はこのくらいで。白鋼君と委員長は良い演技、その調子で。黒岩さんはもっと頑張ろうか」


「チッ」


 とりあえず今日は終了。大まかな流れは覚えたな。本番まで台詞を忘れないようにしないと。


 スマートフォンを見ると蒼助から着信履歴が残っている。


「もしもし、何かあった?」


「主治医のこと、天宮から聞いた。名前は柳葉(ヤナギバ)。看護師の噂だが、旧棟に出入りしている姿を見られているらしい」


「旧棟って使われていないよな。本当だとしたら、かなり怪しいな」


「旧棟を調べる価値はある。スーツの調整も最終段階に入る。終わり次第だな」


「了解!」


 一応、蒼助が光上さんへ連絡しておいてくれる。任せよう。






 演劇本番まで残り二週間。実際の劇場にて準備を行っているが、相変わらず二人の息は合わない。


「そこ私の台詞でしょ!」


「ちょっと間違えただけじゃん!」


 このままじゃダメだ。黒岩さんが本当に外される可能性がある。


「二人とも今日は残って練習しよう、俺も残るしさ」


「私もそれがいいと思うわ」


「はぁー、もうなんか面倒くさい、あと勝手にやって」


 黒岩さんは衣装のウィッグを床に投げつけ、場を離れようとしている。本番まで時間もあまりない。なんとしても引き止めないと。


「ちょっとづつでも、できるようになって来てるし頑張ろうぜ」


「うざいよいちいち」


 フォローするつもりが彼女には届かなかった。さすがの俺も暴慢な態度を取られ癇に触る。クラス一丸となってここまで来たため、その努力が無駄になるとも感じたから。


「いい加減にしろよ!」


「うるさいな、そんなにやりたいなら私抜きでやればいいじゃん! 私はただ、お姫様役でちやほやされたかっただけ!」


 周りが沈黙するほどの衝撃音が劇場に鳴り響いた。音の方向を辿ると委員長が黒岩さんの頬を叩いている。赤く腫れた自分の頬に手を当て唖然とする黒岩さんを前に叱り飛ばした。


「いい加減にしなさい」


「え......」


「自分から志願して役を受け持ったなら責任を持ちなさい!」


 黒岩さんは委員長を睨み付けたあと、眼に涙を浮かべ去っていった。


「やり過ぎちゃったかも」


 委員長は良く言ってくれた、と言いたいが黒岩さんが本当に辞めたら困る。彼女を切って演劇が成功しても納得できない。


「ちょっと追いかけてくるよ」


 彼女が行った方向は更衣室じゃないから、きっと外だろう。


「やっぱりいたな」


 出入口の前の階段に座り、悲しげにスマートフォンを眺めている。


「あ、白鋼......さっきはごめん」


「俺は気にしてないから。むしろ大丈夫か?」


 さっきは怒りを感じたが、目の前で女子が悲しんでいたら責める気にはなれない。


「良い人だよね」


「いや、そんな」


「あ、委員長がね。私のためを思ってあそこまでしてくれるなんて!」


 ......さいですか。何かを期待した自分が馬鹿らしい。だがやる気は取り戻してくれた様で、階段を上がって入り口まで向かっていく。彼女は衣装のスカートを大輪の様に広げ、扉の前で振り向いた。


「どうした?」


「白鋼も心配してくれてありがと」


「王子ですから」


 劇場での準備はキリのいいところまで進んだらしく、他のスタッフは全員帰宅した。


「委員長、ありがと」


「へ?」


「あんなこと言ってくれるの委員長くらいだから」


「別に私は演劇を台無しにしたくなかっただけで......むしろ、ごめんなさい」


 姫役二人は面と向かい謝罪し合っている。その後、俺達は残り練習を続け二人の息も段々合ってきた。これなら上手く行くはずだ。


「二人とも夜遅いし、今日は終わりにしよう。本番もきっと成功するよ」


「そうね、また今度にしましょうか」


「あのさ委員長、連絡先交換しない?」


「え、いいけど......」


 二人は頬を赤く染めている。黒岩さんが役を辞めなくて本当に良かった。本番上手く行くといいな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ