第17話
文化祭の役決め、主演は女の子二人か。問題はもう一人の主演、王子様役だな。確実にじゃんけんになるのは間違いない。蒼助は除外されているから、確率はほんの少し高くなるか。
「私、お姫様役やってもいいけど王子様役だれやるの? まさかこのクラスの男子?」
感じの悪い女子は黒岩さん、所謂ギャルだ。そういう系統の女子達でグループを組んでおり、浮いてしまってる印象を受ける。主演なんて誰もやりたくないだろうから、この子は確定か。ますます王子役がしんどくなってきたな。
「とりあえず今日中に主演だけ、決めたいから他に希望なければじゃんけんになるけど」
誰も上げないよな。ならば仕方ない。最初はグー! じゃんけん、ポン!
「白鋼よろしくな」
「サンキュー白鋼」
「ハハハ......」
じゃんけんに最後まで負けてしまった。主演は演技を覚える必要があるため早めに準備を行う。女子の方は。
「ウソでしょ......」
学級委員の高松さんだ。
「委員長かよ」
黒岩さんが嘆く。犬猿の仲の二人が姫役か。無事に終わるだろうか、文化祭。いや終わってくれ。
その他、諸々の役決めが終わった。蒼助は照明、大門寺さんは衣装作りか。
「なに世界の終わりみたいな顔してんだ?」
「あっ! 王子様だ」
俺が机の上でうなだれていると、冷やかしに二人がやってきた。
「二人はいいよな、裏方で」
「潤君は王子様役ぴったりだと思うけど?」
「フッ、確かに」
あの蒼助が笑っている。大門寺さんは純粋なキラキラした目を向けてくる。
「すごくかっこ良くしてあげるね」
「止めてくれ」
あぁ、まだ先のことだが憂鬱だ。学校で行うならいいのだが外部の劇場を借りて演劇を行うのが翠櫻高校の恒例になっている。地域に住む人達が毎年楽しみにしているようで満席は必至。だから嫌なんだが。
「本格的な準備はまだ先だよね? 蒼助君も戻ってきたし、雫ちゃんのお見舞い一緒に行かない?」
天宮さんのことも気になるし、少しでも演劇のことを忘れたくて賛同した。
「いいね、次の休みの日にしようか。蒼助は大丈夫か?」
「問題ない」
天宮さんが入院している翠櫻中央病院は学校からさほど遠くないため、現地集合とした。建て直しをした病院であり、旧棟は残ったままだが機能していない。
受付を済ませ病室へ向かう。天宮さんにアポを取るとき、リハビリ病棟にいると聞いている。六階病棟の個室、ここか。
「失礼します」
部屋へ入ると天宮さんと主治医が話していた。
「検査の結果なにも問題ありません。退院に向けた調整をしていきましょう」
「ありがとうございます先生、ん? みんな来てくれたんだー」
「お友達ですか、どうぞ。では私はこれで」
三十代の若い先生だ。綺麗に纏められた頭髪と眼鏡が真面目な印象を受ける。そして、先生は部屋から出るときに俺の肩に手を置いた。
「あの子は残念でしたね」
「えっ!?」
振り向いた時には先生は消えていた。
「おい、潤どうした?」
「いや、なんでもない」
何で俺に? あの子、残念......まさか!?
「白鋼、顔色悪いよー」
「入院してる雫ちゃんに心配されるなんて、よっぽど王子様役が嫌なんだね」
「えー、何それ、聞きたい」
女子二人は演劇のことで話が盛り上がっている。お見舞いのプリザーブドフラワーも気に入ってくれてるようだ。
蒼助は俺のことを察したように退室を早めた。
「元気そうでなにより、大門寺あと任せた」
「えー、もう行っちゃうの?」
「天宮さんの元気な顔を見れて良かったよ、大門寺さんあとよろしく」
病院を出て帰り道を歩く。さっきのことを蒼助に伝えた。
「お前にわざわざ言ったってことは超獣に関わっている可能性があるな」
「あの子......上木華だよな。俺達が最初に戦った」
「だろうな。主治医を調べるのは俺がやっておく」
「いいのか」
「頑張れよ、王子様」
「それを今言わないでくれ......」




