第14話
研究所から出てスーツを解除し、腕を天に向け思いっきり身体を伸ばした。
「はぁ~」
「新たなタイプの超獣といい、行方不明者の亡骸といい滅入りましたね」
極度の緊張感から解き放たれた。光が届かない暗く物々しい悪魔の巣窟から出て感じる木漏れ日はとても神秘的に感じた。思わずスマートフォンを取り出し写真を撮ってしまうほどだ。
「ユーリ、帰って休もう」
「賛成です。イージスのメンバーが来ましたね、任せましょう」
超獣と行方不明者の遺体は回収しやすいように研究所の出入口近くまで移動させてある。アドレナリンが出ているため、恐怖を感じることなく運んだが今になって例の超獣の姿を思い出すと寒気が襲う。容姿もさながら、中和剤が効かないタイプは初めてだ。
「お疲れ様です、二人とも。麓に車を置いています」
イージスのメンバーに促され、下山した。味方が来たときの安心感たるや。
「ありがとうございます」
イージス本部へ戻ると以前蒼助を連れ去って行った中華服の姉妹がそれぞれ、蒼助の左右の手を握っている。
「モテモテだな、蒼助」
「笑ってないで、助けてくれよ」
ニヤニヤしながら見ていたが、当の本人はしんどそうだ。
「こんにちは、白鋼潤です。君達もメンバーなのかい?」
膝を曲げ目線を合わせて話してみたが蒼助の後ろに隠れてしまった。少し待つと儚い小さな声が聞こえる。
「白鋼知ってる、パイロット」
「私達、ユーリのスーツ専門」
「潤はあの後任務にすぐ行っちまったから知らなかったな。コイツらは天才かも知れない」
彼女ら姉妹は高いIQを持ちイージスに勧誘され正式なメンバーになった。赤を基調とした服を来てるのが燦、青を基調とした服が嵐と言う。俺達の事はある程度知られており、以前からスーツを一人で開発した蒼助の事が気になっていたらしい。ユーリのセイクリッドスーツをカスタマイズしたのが彼女らであるため蒼助同等の頭脳を持っているとのこと。
「コイツらは中和剤もヒントなく発明したからたいしたもんだよ」
「蒼助が言うなら、ほんとにすごいんだね」
姉妹は頬を赤らめ、口角が少し上がっており嬉しそうだ。
「へぇ~、アンタらが例の協力者ね」
姉妹と話していると別の女性の声が聞こえてきた。ツナギの作業着を着ており、上半身部分を降ろし袖を腰部で巻いており、黒のT シャツが見える。バンダナから茶色い髪が見え隠れしていた。十代半ば位だろうか。姉妹は蒼助から離れ彼女の元に走った。
「振られちまったな」
「うるせー」
ツナギの女性は俺達をまじまじ見始め、手を顎に当てた。
「そっちの根暗そうなのが、蒼助」
「ね、根暗......」
「根暗だって」
肘で蒼助を突っつくが、割と効いているようで反応が無かった。そして彼女は俺を指差した。
「アンタが真面目バカな、潤ね」
「まじめ......ば、ばか......」
蒼助は急に元気が出た様にゲラゲラ笑いだした。笑い事じゃ無いぞ。真面目バカ? 一度もそんな事を言われた事が無かったので、立ち直れないほどのダメージを受けた。見知らぬ人に言われれば尚の事。
「いつもの爽やかな笑顔が引き吊ってるぞ」
そんなこと言われれば誰だって動揺するだろ。気を取り治して彼女へ逆に質問した。誰なのだろう。
「こほん、失礼ですがあなたは?」
彼女はバンダナをとり、長い茶色い髪をなびかせた。
「私は霧雨 雷武器の開発をしている、技術顧問みたいなものね」
「君がかい?」
「意外かしら?」
霧雨雷はイージスメンバーが使用する対超獣用装備の開発をしている。北区での戦いの際、駆けつけた装甲車やメンバーが持っていた銃は彼女が開発したとのこと。
「量産が決まれば工場で作っちゃうんだけどね。それに、セイクリッドスーツの剣と盾は私が実物を作ってそれを使ってるのよ。基本的にスーツの装備は電子データ上で作るけど限界があるからね」
俺が使うブレイブスーツも蒼助がパソコンで作りそのデータをデバイスに移していたな。スタンロッドやバイクも全てデータ上で作られている。
「わざわざ武器を運んで装備しているのか? 不便だな」
「そんな訳無いでしょ。実物を電子データに変換してるのよ。この天才二人がね」
「何ッ! そんなことが、本当に?」
驚愕する蒼助の目の前で、霧雨さんは姉妹の頭を撫で始めた。
「私は基本的に一般装備の開発だけど燦と嵐と一緒にスーツの開発も手伝っていて、共同開発もしているの。二人はホントにすごいわよ」
俺にはわからん小難しいやり取りが続く。けど、進む道は一緒だ。
「要は超獣の被害を食い止めるために色々研究してるってことだろ?」
みんなが白い目で俺を見始めた。馬鹿を見るような目で見ないでくれ。
「やっぱり真面目バカね」
「グッ!」
「でも、嫌いじゃないわ......」




