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蒼鋼のブレイバー  作者: Sangomiya
第3章 Fierce fight
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第X話 Promise

「近くに居るはずだ! 探せ!」


 二頭を持つ犬型の超獣。それを使役する武装兵達が追ってくる。山の中へ逃げ込み身を隠す。犬型の超獣は研究所を脱走した実験体を追う能力に特化した存在だ。臭いから追跡を開始するため、山に逃げ込んでもいずれ戦闘になるだろう。全員を相手にするには危険だが、犬型と武装兵を切り離せば勝ち目はある。山の中では武装兵は動き難くなるため、犬型のみを誘い込み易くなる。戦略を立てていると人間の子供に見つかってしまった。こんな夜の山に子供が居るとは思わなかった。


「お兄ちゃんってもしかして、ヘンシン勇者ビクトリーに出てくる昆虫の新しいヒーロー!? カッコいいな~」


 少年が何を言っているのか理解できない。昆虫人間の姿を見て恐怖を感じていない様子だった。


「お兄ちゃんビクトリー知らないの? 困っている人がいたら必ず助けてくれるヒーローなんだよ! 僕のために来てくれたんでしょ!」 


 少年はキラキラとした目でこちらを見つめ理解できないことを喋り続けた。


「でも僕、もう疲れちゃったんだ。だからここに来たんだ」


 どうやら少年の名は音無零治(オトナシレイジ)と言うらしい。辛い思いを抱え、この山に来たようだ。綺麗な身なりをしており裕福そうな容姿をしている。少年を観察していると、臭いを追って来た犬型の超獣が不意に火球を吐き出した。少年を抱え跳躍し避ける。何故少年を抱えたのか自分でも分からなかった。自分の存在を知られた以上口封じのために殺害するべきだが。


「うわぁー! すげー! 飛んでるー!」


 楽しそうに大声を出し、危機感を感じていないようだ。少年を庇いながらの戦いは不利であるため、岩影に隠した。犬型が居る以上この山から逃げ切れず戦いになるだろう。


「お兄ちゃん、戻って来てね」


 心配する零治を余所に追ってくる犬型へ突撃する。二頭から吐く火球による攻撃にて牽制されるが、木々の中へ身を隠し自分の体液を木に塗り、嗅覚を狂わせた。戸惑う犬型へ襲撃し格闘戦を持ち込み片目に爪を突き刺した。狂乱する犬型の突進を受け吹き飛ばされ地面に叩きつけられる。両方の口から火を溜めこちらを向く。死を覚悟したその時だった。


 何かを呟き、零治が目の前に立っていた。火球が直撃し吹き飛ばされる。零治は火球を全身で受け姿は変わり果てており、すでに息をしていなかった。


 身体の奥から何かが沸き上がった。犬型が吐く火球を避け飛びかかり、マウントを取った。


「グルゥ! グギャー!」


 右の顎に左腕を噛まれるが腕の刺を伸ばし内部から体液が噴射し動かなくなった。左の顎は右手で抑え、背中の触手を伸ばし何度も突き刺した。戦いの音に武装兵が集まって来たが、気づいたときには全滅していた。最後の力を使いその場を離れ、気力を失い倒れ込んだ。


 次の日目を覚ますと、全身が小さくなっており両手は人間の手をしていた。意識がはっきりしないまま、遠くから声が聞こえる。


「零治~!!」


「あ、あそこに居るわよ! あなた!」


 病院へ搬送され、原因は分からないがあの少年、音無零治の姿になっていた。記憶も受け継ぎ表社会のある程度のことも理解した。そして零治が同じ学校の特定の人間に敵意を向けられていたことも分かった。これが辛い思いの原因なのだろう。彼らとは学校で平和的な話し合いを行い理解してくれたようで、敵意を向けられることは無くなった。


 それから時が過ぎ、人の姿になってからは超獣に追われることはなく、音無家の人間に不利益なこともなかった。奴らは人間の子供に化けたとは思っていないのだろう。


「ボーッとして、大丈夫ですか? 音無部長?」

 

 昔の事を思い出していたら、後輩に心配を掛けてしまったようだ。零治が絶命した時のことを今でも思い出す。たった一瞬の出逢いだったが彼に同情していたのかも知れない。


「ありがとう。谷口さん、僕は大丈夫だよ」


 高校生になった僕はミステリー研究部にて超獣に関しての事件を追っている。目的を果たすために。彼があの時残した最後の言葉に誓って。


「お兄ちゃん、僕の分まで生きてね」


                    

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