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蒼鋼のブレイバー  作者: Sangomiya
第2章 First brave
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 気が付けば黄昏時。カフェで話した後、潤と二人で学校に向かっていた。モンスターの謎や上木華の失踪について調べるためである。今の時間帯であれば警察も居ないはずだ。校門前に来ると、一人の女性が花を持ち、佇んでいる。彼女は俺達と目が合うと逃げるように背を向け歩きだした。


「どっかで見たことあるな......」


「蒼助、知り合いか?」


 思い出した。あの時、逃げ惑う中にいた女子だ。あのときバスケ部のユニフォームを来ていたはず。現場にいたバスケ部は保護されているため、彼女は貴重な情報源になるかもしれない。


「おい! お前バスケ部だろ」


 声を掛けると彼女は足を止めた。


「もしかして何か知ってますか!? 僕達もあの場所に居たんです!」


 潤の必死さに応えるように、彼女は振り返り驚いた顔で口を開けた。


「あなた達もあそこに居たんですか? あの後どうなったか知っていますか!?」


 想像以上に強い関心をみせた。俺達は些細な情報でも手に入れたい。だが、自分達が戦かったことも知られる訳にはいかない。慎重に対応するべきだ。


「俺達が行った時にはもう、警察が対応していた。大きな動物が暴れていたがなんとかなったらしい」


「なんとかなったって、どういうことですか? あの子は何も悪くないのに......」


 頭の理解が追い付かない。あの子? どうも嫌な予感がする。先に口を開いたのは潤だった。


「すまない、一から教えてくれないか」


「ごめんなさい。私はあの日、補習を受けていました。遅れてバスケ部に行ったら華ちゃんの身体が膨れ上がって......」


 膨れ......上がる......?


「私は怖くてすぐに逃げ出したんです」

「いじめをしていた罰が当たったんです。見て見ぬふりをしていた自分も同罪です。だから、謝りに来たんです」


 背筋が凍りついた。俺達が戦ったのはモンスターじゃなかったのか......? 潤は彼女の両肩を掴み問うた。


「上木さんが......あの、巨大動物になったってことですか!?」


 潤のあの顔は一度も見たことがない。顔面を蒼白にし恐怖に打ちひしがれた、そんな顔だった。彼女は潤に恐怖したように腕を振りほどいた。


「私だって......分からないですよ!」


 持っていた花を落とし去っていく彼女を前に潤は崩れた。俺は黙って見ることしかできなかった。


 翌朝スマートフォンを見ると一通のメールが来ていた。


「俺はもう戦えない」


 潤からのメールだ。モンスターの正体は人間の上木華である可能性が高い。きっと体育館での戦いで人を殺めたと考えているはずだ。行方不明になったのは闘いの末、灰塵と化したためだろう。戦えるのは潤だけだ。パワードスーツを託せるのも。俺達にはアイツが必要だ。三人で話し合おう。


 大門寺と共に潤の家に向かう。アポは取ってないが。


「潤くん、きっとショックだよね一番......」


「そうだな、けどもし罪を感じているなら俺も同罪だ。モンスターを倒す装備を作ったのは俺だ。潤が代わりに戦ったのも、俺がすぐにのびちまったからな」


「罪って......潤君はみんなを守ってくれたのに」


「アイツが、来なかったらあそこに居た全員殺されていただろうな。だが、あのモンスターは人間だった」


「こんな報われないことってあるのかな......」


 何が原因で上木がモンスターになったかは分からない。だからこそ、俺達は真実にたどり着かなければならない。


「報われねぇからこそ、会いに行く」


「うん!」


 大門寺は俺の顔を見るとニコッと笑った。二人を巻き込みたくはない。けど、あの戦いで分かった、一人では不可能でも三人なら可能だと言うことを。


「二人ともなんでッ!?」


「うっす、上がらせてもらう」


「お邪魔します」


 潤の家に突撃した。家ではまずいと感じたのか、近くの浜辺に行くことになった。家族に聞かれたら怪しまれる可能性があるからな。海風が肌に染みるなか深刻な表情で潤は口を開ける。


「俺は人を殺めた......自首しようと思う」


 真面目な潤らしい台詞だ。俺は目を閉じ大きく息吸って叫んだ。


「あの時から俺達三人は運命共同体だ! もしお前が自首するなら俺も自首する!」


「私も!」


 さらに俺は潤の胸ぐらを掴み大声を上げた。


「だがもし俺達全員が自首したら、誰が守る!? 誰が真実を暴く!?」


 久しぶりに声をあげ、息が上がる。罪から逃げる訳じゃない。俺達は人を殺めました、と自首してそれで事件が二度と起こらなければそれでいい。けどそうはならないはずだ。


「真実を暴くってのは俺達が戦ってきたことも公に出す。それが正義だ」


 最後まで戦って、事が終わったら全てを話す。それで終わりだ。潤は今まで見たこない表情をしている。それもそうだろう。こんなに声を出すなんて初めてだからな。


「分かった! 分かった!」


 潤はそう言うと俺の手を払い、頭を下げた。


「俺だけ逃げてごめん、怖かったんだ。戦う事が、それに元が人間だったなんて知ったらなおさら」


 そんなの当たり前だ。潤は最前線で戦っている。一番リスクが高いのは潤だ。


「俺も戦いに巻き込んで悪いと思ってる。だが、今はお前の力が必要なんだ」


 俺も頭を下げ、願う。潤も同じく頭を下げた。


「なら、俺の命を預ける。恐怖も弱さも罪も、二人が支えてくれるなら戦える」


 潤は頭を上げると真っ直ぐな瞳で俺と大門寺を見つめる。やはり、こいつの眼は死んでいなかった。


「それに潤、お前に殺しはもうさせねぇ」


「それって?」


「対策する。相手が人間って分かったんなら元に戻せばいいだけだ」


 口で言えば簡単だが、勿論検討なんかついてない。けどやるしかない。


「やっぱり二人はすごいな」


「大門寺さん?」


「だってそうでしょ。蒼助くんが作ったスーツで潤くんがみんなを守る。私は成り行きで二人といるだけ......」


 こんな寂しそうな顔をする大門寺は初めて見た。笑ってないときのこいつの顔を見ていると胃がキリキリし出した。


「何言ってんだよ、お前も十分すごいだろ」


「え?」


「モンスターが現れたのに生身一人でわざわざ体育館に来たのは誰だよ」


「大門寺さんはみんなを助けようとしたんだよね?」


「蒼助くん、潤くん......」


 なんか少し照れ臭い。柄じゃないことやり取りをしているなと思っていると。


「蒼助くん顔真っ赤だよ」


「!?」


「耳もな」


「そんなわけねぇだろ、海風が冷たくてそうなっただけだろ! ああ、後デザインダサいって言ってたよな」


「ギクッ! あれは勢いで言っちゃって......」


「これから研究する。大門寺、お前が補佐しろ。潤にはまたスーツの機能説明をする」


 学校が休校になると同時に、科学研究部に移した父親の機材は俺の家に移動させてある。母親は仕事で居ないため、三人で集まった。そして。


「これで、完成だな」


「理論は間違ってないはずだ」


 父親の本を読み直したが、モンスターを人に戻す計算式は書いてなかった。だが、研究を重ね、二人の協力もあり特殊な薬液の開発に成功した。


「で、大門寺先生的にデザインはいかがなもんだ?」


「うーん、まぁまぁかな」


 まぁまぁなのかよ。とりあえずこれが、命名、デザイン共に大門寺。これが俺達の新たな力。


「ブレイブスーツ」

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