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  白井雪は勇者の娘に転生する その2

 ライラ・ホワイトスノー・ヴィラード

 それが私の名前。


 この世界の勇者である父、ホルン・ヴィラードの次女で第3子。

 母のマリア・ヴィラードは、元勇者パーティの賢者である。

 私の生まれる8年前、魔王の領域となっていた大陸の約8割が、人族の版図に復帰した。

 父と母を中心とした勇者パーティが、魔王軍の進撃をストップさせ、潰走させたのだ。


 父は侯爵に叙爵した。母の実家である公爵家。ローレンス家の力もあった。ローレンス家の寄子として組み込まれ、肩身が狭いらしい。

 しかし、平和になった世界に、必要以上の力を持つ勇者の力を危惧する王侯貴族たちがいる。その派閥から逃れるための方策であったと、おばあさまが話していた。


 平和な世では、勇者の価値も異なる。

 勇者はより多くの子を残すことを求められる。この世界のスキルは、血統に大きく依存すると認識されている。

 多種多様な強力スキルを有する勇者の血は、多くの王族貴族権力者から求められる。


 人族はか弱い。

 エルフ・ドワーフなどの強力な身体能力、高い魔法適性を持つ亜人族。

 強靭な肉体を持ち、五感に優れたものを持つ獣人族。

 亜人族と獣人族両方の利点を持ち、高い知力を有する魔族、天人族。

 その中で、あまりにも人族は弱かった。

 人族が生き延びていくためにも、勇者の血統は広めていかなくてはならない。

 これは全人類の共通認識であった。

 勇者パーティの勇者と賢者が結婚してできた子。

 そんな人族が注目する勇者の血統。

 私はのちに8人いる勇者の子供の上から3番目、勇者の次女としてこの世界に転生した。

 世界最高レベルの鑑定を持つ神官が、この娘にはスキルがないと鑑定した。

 胎内にいるときからわかってはいたようだったが、魔術スキル、武技スキルはおろか、一般庶民の使用する生活魔法のスキルを覚えることもできないだろう。という鑑定結果だった。


 基本となる魔力がないのだ。


 勇者の子供たちは生まれる前より、婚約者候補が数多くいる。

 私(白井雪)は勇者からにライラ・ホワイトスノーと名付けられた。

 ライラは、この世界では珍しい漆黒の闇夜のような黒髪から。

 ホワイトスノーは、真白な雪景色のようにそのスキル欄が空白だったから。

 両親はスキルを持たないスノーに悲観したわけではない。

 逆に喜んでいた。

 この子には普通の人生を送らせてあげることができると。

 使命や宿命に、とらわれることがないのだと。


 私はスキルを持っていないわけではない。

 スキル「ハイド&シーク」

 異世界の神から授けられた、神の権能スキル。

 かくれんぼうスキルによってステータスが隠されていたのだった。 


 逃げる。隠れる。空気に溶ける。

 得意なんです。私。



 家庭教師が付いた。

 元勇者パーティの探索斥候職シーカー

 シズカ・アインメル

 ガチの英雄である。

 父が三顧の礼で迎えたらしいのだが、心の底からもったいないと思わざるを得ない。

 私の兄であり、勇者の長男。

 若くして英雄候補。大国フィナリウス王立学院に留学中のラインハルト兄さまあたりにつくのが世界のためになると思う。

 心の底から。


 物心つく前。

 2歳で辺境の地ルーザリアの知り合いの土地に預けられることになった。

 ルーザリアには魔力が回復するという泉がある。

 そこでの湯治治療の意味を兼ねている。

 主たる理由は周囲の視線。魑魅魍魎が跋扈する貴族宮廷から守るためだった。

 冷たい視線には慣れた。

 同情する視線にも慣れた。

 しかし、計算する視線にはおぞましさを感じた。

 スキル、魔力もちでなくとも、勇者の血。隔世遺伝ということもある。

 王族、侯爵家には難しくとも、伯爵や男爵家には喉から手が出るほど欲しいのだろう。ダメな娘でも婚約希望者が後を絶たなかった。

 嫁ぎ先で不遇な思いをするかもしれないが、子供を産むことのできる能力があればよい。貴族の倫理だった。



 父は決断した

 自分の故郷の村に。

 自分の幸せな思い出のあるあの村に娘を逃がそうと思ったのだろう。

 父は告げた。

 「己のなすべきことをなすために、コヴォルクツヴァイダンジョンにて生きるすべを身につけなさい。私もそうした。」

 父はその日から笑うことがなくなった。





 ダンジョン信仰というものがある。

 ダンジョンのふもとに広がる町や村が中心となって広がっていく、土着信仰の一種だ。

 主な戒律がいくつかあり、その中でも有名なものが、「ダンジョンに倒れたものは、ダンジョンに還る。」というものだ。

 ダンジョンの恵みを糧として、生きていく。

 それは人に幸不幸をもたらす。

 モンスターも、人間も亜人もエルフもドワーフも、その点において平等である。


 ダンジョンで死んだ場合、死後24時間を経過後ダンジョンに飲み込まれていく。

 逆に返せば死後24時間以内であれば、遺体を持ち帰ることも可能なのだ。

 戒律に反する行為とみなされるが。

 父の実家はダンジョン潜りの案内人一族。

 ダンジョン信仰のおひざ元、私はその一族の族長のもとに預けられた。

 この地は生まれたときより何度も来た土地で、現在住んでいる王都よりもなじみが深い。




 この世界に転生してとうとう12年がたった。

 父の故郷で私は今、ダンジョンの潜り方を学んでいる。

 


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よろしかったらほかのお話もどうぞ

上の作者名をクリックしていただけると、いろいろ読めます

処女作「おもちをのどに詰まらせて転生したらもちもちでした。」

https://ncode.syosetu.com/n0965gt/

2P完結で手軽に読めるのでお勧めです!


初めて書いたお話なんです!

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