5爆発事故
ポカンとカブトは川上を見つめ、
「犬耳?」
と問いかけた。
ぶぅー、とレディが噴き出し、そのまま腹を抱えて笑い出した。
「どこのファンタジー世界だよ、男の犬耳って!」
カブトに至っては、リングサイドから転落するように笑い転げている。
影繰りなので問題ないだろうが、病み上がりなので、誠はヒヤリとした。
川上は、自分の手を見て小刻みに震えていた。
見ると、手にも鋭い爪が黒々と発生していいるようだった。
それから笑われている事に気が付き、耳に手をやって、
「おおっ!」
川上は叫んだ。
「俺!
影繰りになったぞっ!」
川上は、やったぁ! と絶叫した。
そんな川上を見ながら、誠は、こんなんでよかったのかなぁ? と思っていた。
「しかし犬耳が、何の役に立つんだ?」
桜庭学園からの帰り道、まだレディは笑っている。
「もしかすると、中途半端に目覚めさせちゃんたんじゃないでしょうか?
本当はアクトレス教官みたいに、オオカミに変身する影の一部分だとか…」
誠は不安げに言う。
「可愛いのが武器なんだよ、きっと。
犬耳でスリスリするんだ!」
カブトは、レディに頭をスリスリしていた。
「俺はともかく、指切りだってしたんだから、明日、学校に連絡します。
誠さん、本当にありがとうございました」
「うん。
新学期から同級生だね」
第一京浜を大門駅に向かって歩き、左に折れれば浜松町の駅だ。
誠は地下鉄の方が好きだったが、他の三人が浜松町だったため、今日は付き合うことになった。
だが駅周辺には溢れるほどの群中が集まり、ヒステリックな興奮状態にあった。
駅のアナウンスが流れている。
「JR品川駅で爆発事故が起こりました。
原因は不明ですが、現在山手線は上下線とも止まっています。
復旧の見込みが付いたらお知らせします。
なお代替え輸送は…」
「爆発事故?
なんだそりゃあ?」
レディが叫ぶ。
カブトも不安げに呟いた。
「えー、遅くなると怒られちゃうよ…」
「大崎まで歩くか、大門から地下鉄で帰るかですね」
誠は冷静にルートを語るが、レディは、
「めちゃめちゃ混むぞ、きっと。
それよりミオに送ってもらおう」
とスマホを使った。
「ん、あ、ミオ。
浜松町で電車が停まってて、えっ、どうやら影繰りの仕業なのか?」
携帯を切るとレディは言った。
「とりあえず、近くだから本部に行けってさ。
川上、お前も来い」