7話 ダンジョン攻略
7話 ダンジョン攻略
今日も朝から東の森へ行き薬草を補充する。昨日は薬草を1つ使用したので今日は2つ集めて合計4つにしてから南のダンジョンに挑む予定にした。
ブルースライムを倒しながら薬草探しをして昼過ぎには2つ見つける事が出来たのでダンジョンに向かう事にした。やはりブルースライムの経験値は少ないらしくレベルアップはしなかった。
「此処が南のダンジョンか…、西の森にも感じた息苦しさが更に酷くなった感じだな」
まずは無理をせずに入口付近を見て回りモンスターの生態を調べる事をする。
ワンスさんに借りたランタンで周りを照らしながら、どんなモンスターがいるか緊張して進むとそこにはブルースライムがいた。
「このダンジョンにはブルースライムがいるのか」
ブルースライムを倒した後、周囲を確認するが他にモンスターはいないようだ。入口付近は瘴気が少ないのか強いモンスターはいないようなので壁に左手を当てながら少しずつ進んで行く事にする。
進むにつれてモンスターに変化が出た。大きさは昨日戦った角ウサギと変わらない蝙蝠が襲って来たのだ。
「洞窟と言えば蝙蝠か!」
蝙蝠の攻撃に合わせて木の棒を振るが当たらない。初の空を飛ぶモンスターとの戦闘で上ばかり見ていると足元にブルースライムと近くに角ウサギが現れていた。
角ウサギの攻撃をかわしながら上を見ると蝙蝠が近くまで来ていてとっさに出した右腕を噛まれてしまい木の棒を落としてしまう。
すぐに拾おうとしたが角ウサギの突進が来たので避けた為、棒との距離が離れてしまった。
「ダメージは少ないがこの連携は厄介だ!」
棒を落としてしまったので魔法で対応するしか無くなったので、蝙蝠が近づいて来たタイミングでいつも通りカウンターのかまいたちを放ち倒す。
その後角ウサギも魔法を使い倒した。
「早速MPを消費してしまったな…」
とりあえず落とした木の棒を探した。そして少しして見つけた木の棒の上にはブルースライムがいた…。
木の棒は真ん中らへんで融けて今にも折れそうになっていた。弱いし特に危険がないと判断していたモンスターだった為に忘れていたら武器が駄目になってしまった。スライム達はその体で物を溶かし吸収するモンスターだった為こうなる可能性も知ってはいたが明らかに大輝の油断である。
「昨日のレベルアップでMPもまだ100あるし残り50を切ったら引き返すか…」
ブルースライムは経験値が少ない為、スルーしてダンジョンを進んで行く。
10分ほど進んで行く中で蝙蝠を2匹倒したが、特に宝箱などのなく普通の洞窟のようだった。少しゲームみたいに宝箱などが置いてあると、期待していたが腕試しのダンジョンにあるわけないよな。などと薬草を食べて考えながら奥に進んで行く。
更に30分ほど歩いた時に辺りの瘴気が急に濃くなっていた。その空間はそんなに広い訳ではなかったが明らかに空気が違った。
「何だ、この場所は…。怖い、気持ち悪い…、早くこの場所から離れないと!」
そうこの場所には一秒でもいたくない。そう感じられる空気があり腹の底からこみ上げてくる不安感があった。引き返す為に後ろを振り向いた瞬間、そこにいた存在に気付いた。
今までのモンスターよりも大きい、正面から見た座っている姿で150センチはある巨大なネズミがいたのだ。
「まさか、ダンジョンボス!」
その声が合図になったように巨大ネズミが体当たりをしてきて大輝は直撃をもらい、先ほど入りたくないと思っていた空間に押し込まれてしまった。
助走が少なかったせいかさほどダメージはないが、この異常な瘴気の空間に入ってしまった為に大輝は強烈な吐き気に襲われており余裕が無くなっている。
そのまま巨大ネズミは口を開けて噛みついて来たので転がるように避け、そのままかまいたちを放つ。その風の刃が当たり軽く切りつけた。防御力はたいして強くはないようでダメージは与えれるが決定打に欠けている。
傷つけられて怒ったのか目の色を変えて大輝に突進してくる。
その攻撃を転がるように何度も避けながら風の刃を当てていく。このまま続けれれば倒せるだろうがその前にMPが持ちそうにない。この場所に来るまでに風の魔法を9回使用しておりMPは残り58だった。そして巨大ネズミにすでに4回使用しているので、後風の魔法は5回しか使えない。
「まずいな…出口は反対方向だし、相手の方が素早さが上だし逃げる事は無理だろうしな…」
何か手はないかと考えているがこの環境のせいか、良い案が浮かばない。考える事に気を取られていた為巨大ネズミに体当たりに反応が遅れ吹っ飛ばされた。
「これはまずい!薬草を食べないと」
急いで薬草を取り出し口に放り込み次の攻撃を避ける。壁に勢い良く当たりダンジョン自体が揺れるような振動が起こる。
そして転がるように避けた先にうすく光る物を見つける。
それは刃の部分が20センチくらいある錆びた鉄のナイフだった。
「武器!でも錆びているから切る事は出来ないか…なら!」
そのナイフを手に持ち軽い脳震盪を起こしている巨大ネズミに向かって行く。
「刺され!!!」
巨大ネズミの横からナイフを刺す。
「刺さった!ならそのまま弾けろ!!!」
刺さったナイフを起点に巨大ネズミの内部で風を瞬間的に爆発させる。外からはモンスターの魔法抵抗があるようで相手の内部に魔法を起こす事は出来ないが、手に持つ武器を通してなら可能ではないかと掛けてみたが成功したようだ。
巨大ネズミはそのまま動かなくなり大輝の頭の中でレベルアップのファンファーレがなった。
「やばかった…最近、無理しすぎだな。……早くこの場所から出よう」
そう思い動き始めた時、異変が起こった。
急に足元の地盤が「キシ」と鳴ったかと思うと崩れ始め大輝も逃げようとしたが間に合わず、大輝は地盤と一緒に下の空洞に落ちてしまった。
「嘘だろぉぉぉーーーー!!!!!」
大輝の絶叫と共に落ちていく。
「やばい!やばい!このままじゃやばい!」
大輝は風の魔法を使い下に突風を起こし落下の勢いを殺して行く。
「早い、間に合わない!」
目の前に下の地盤が見えて、慌ててもう一度風の魔法を使う。
「止まれーーー!!!」
「ドン!」
勢いは大分減らしたが先に落ちた岩などがあり大輝は何カ所か骨を折り、擦り傷も多大にあるが一命は取り留めた。
「…体中が痛いが、なんとか生きてるか」
傷ついた体を動かして薬草を食べる。しかし1つ食べても痛みが完全には消えずステータスを確認してみると
天兎 大輝
レベル 1 レベル 7
HP 64 / 73
MP 16 / 125
スキル 強化 ・ 風の初級魔法 (LV3)
・スライムの雫
・薬草
HPが全快にはなっていない。薬草を使う前を確認していないが1つで約50~60の回復力のようだ。痛みは残っているが骨折などは治っているようなので我慢して周囲を確認すると、幸いな事にランタンも無事な様で明りを確保する事が出来た。
「結構な高さから落ちたな…」
上を見るとなんとか光が届き、高さとしてビル5、6階分はありそうに見えるが階段のようになっている所があるので上には上がれそうだ。そしてそのまま周囲を照らして見ると奥に小道がある。
「あそこの道から強い瘴気が出ているようだが一体何があるんだ?」
長い時間、濃い瘴気の中にいたせいか大輝はこの環境に慣れてきている。この場所はモンスターの気配どころか生き物の気配すら感じられない。
まるで何かに呼ばれているような感覚に大輝は抵抗出来ず小道の方へ進んで行く。
そこには小さな祠があった。