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5話 スライムの雫

5話 スライムの雫


「なるほど、にわかには信じがたいがレッドスライムを倒した事実がある以上、信じない訳にはいかないのう」


信じられない内容に戸惑いを隠し切れていない。話が終わった頃にミミが水を持ってきてくれた。


「そういえば僕がレッドスライムを倒した事をよく分かりましたね?ブルースライムは倒したら弾けて消えてしまったのに?」


ブルースライムは弾けた後、飛び散った水滴までも霧のようになり完全に消え去ってしまっている。レッドスライムも同じならミミ達が助けてくれた時にはもう何も残っていないはずなのだ。


「おお!忘れておった。お主のそばにこれが落ちておったのじゃよ」


「これは?」


それは赤い液体の入った瓶だった。しかし何か分からない力を感じる存在感がある。


「これは<スライムの雫>じゃ。レッドスライムが低い確率で落とすアイテムなのじゃよ」


「スライムの雫?」


「これを飲めば大概の状態異常は一瞬で回復してしまう強力なアイテム、しかもレッドスライム自体珍しいモンスターなのにさらに滅多に落とさないのでかなりの貴重品なのじゃよ」


ワンスは大輝にスライムの雫を手渡した。


「こんな貴重品を渡されても管理できませんよ!ワンスさんが持っていてください」


家も鞄も何もない手ぶらの状態ですぐに割れてしまいそうな瓶の貴重品を渡されても正直絶対割ってしまう自信がある。今も緊張して両手でしっかり持ちテーブルに置くことも出来ないのだ。


「こんな高い物をわしに渡されても困るのう。それにお主は召喚された者じゃろ、ならステータスのカードに10個までなら道具をしまえるはずじゃよ」


「カードに?」


一先ずワンスさんにスライムの雫を持ってもらいカードを出す。


「そう、そのカードに道具を重ねて収納するイメージを持てば出来るはずじゃ」


スライムの雫にカードを重ねてみるとワンスの持つスライムの雫が吸い込まれるように消えてしまう。その後カードの内容を見ると


天兎 大輝


レベル 1    レベル 3


HP   41 / 41

MP   85 / 85


スキル  強化  ・ 風の初級魔法 (LV2)


・スライムの雫


新たにアイテム欄が出てきた。


「アイテムを取り出すときも同じでイメージすれば大丈夫じゃ」


「なるほど、これはかなり便利なカードだ!ワンスさんは色々物知りですね」


「昔この村に召喚された者が来たんじゃよ。その時に色々話を聞いたぐらいじゃよ」


「なら色々な事を教えてほしいのですが良いでしょうか?」


「わしの知ってる事でよければ構わぬよ」



ワンスさんの話で色々分かった。

この世界のモンスターは周囲の瘴気と大地の力が集まり生まれ、瘴気が濃い所ほど強いモンスターが生まれやすい。

レベルアップに必要な経験値はモンスターが生まれる時に混ざった大地の力を吸収して得る。

ステータスでは分からないがレベルが上がれば力や足の速さなども上がる。

スキルのレベルは30になると中級魔法が覚えれるが上級魔法を覚えている人には会っていない為分からない。

新たな属性の魔法は太古の遺産にあるがその技術は今は失われている。

この世界のお金はゼニーと言いアイテムと同じでカードに収納出来る。

カードにはアイテム以外にも武器なども収納出来るが生物は収納出来ない。

この世界に召喚され自由を得た者の多くは冒険者ギルドに登録して生活している。


そして地球に帰る方法を得た人の話は聞いたことがないらしい……


「一先ず今の僕に必要なのは冒険者ギルドに登録できるぐらいの力を手に入れる事ですね」


「わしはお主の世界へ帰る方法を知らないが大きな町にはあるかも知れない。希望を持つのじゃよ」


落胆した様子が分かったのかワンスさんが励ましてくれる。


「大丈夫ですよ。僕もいきなり分かると思っていませんでしたよ。それより一先ずの目標が出来て気が楽になりました。ありがとうございます」


「そうか…なら冒険者になるまで家に泊っていけばよい」


「そんな、そこまでしてもらう訳にはいきませんよ」


確かに家も拠点もない大輝には嬉しい話ではあるが助けてもらった上にさらに世話になる訳にはいかない。


「気にするでない。ミミも懐いているようだしのう」


「でも……そうだ!さっきのスライムの雫を貰ってください」


「それは持っていなさい。きっとそれがお主の下に来たのは意味があるはずじゃ」


頑として受け取ろうしないワンスさんに他にやれる事はないか考えるがこの世界に来て間もない大輝に思いつくはずもなく困っていると。


「ならレベルアップの目的で村の周辺のモンスターを倒してもらえんかのう。最近はモンスター退治が行われてないので増え続けてきてそろそろ村に影響が出始める頃なんじゃよ」


「モンスターとはブルースライムですか?」


正直ブルースライムはそんなに脅威と感じない。多少増えたからといって村に影響が出るとは思えない。


「もちろんブルースライムもほっておくと夜中に作物を食い荒されて困るがお主が通った東の森の反対にある西の森には角が生えた大きなモンスターなどがいて危険なのじゃよ。もちろんレッドスライムほどは危険ではないがまずはブルースライムでレベルを上げて、せめてレベルが5以上になってからそっちの森に行ってほしい」


「分かりました。しばらくお世話になります」


僕は頭を下げてワンスさんにお礼をした。


「今日は遅いから活動は明日からにしてもう寝るとしよう。ミミも寝てしまったしのう」


「そうですね。おやすみなさい」


「ああ、おやすみ」


話が長かったので寝てしまっていたミミをワンスさんはやさしく抱きかかえ部屋を出て行った。


「さてと」


活動は明日からと言ったがせっかくMPが全快しているのにこのまま寝るのはもったいない、と考えた大輝はレベルの上がった風の初級魔法の性能をまず調べる事にした。


「<そよ風>」


レベル1で使った時は10秒ほどで消えたそよ風がレベル2では13秒ほど続いた。レベルが1上がる度に三割増しになるなら今後鍛え続ければ結構な武器になりそうだ。後は強化の魔法の効果を調べるのと調整する練習が必要だ。なにしろ今の所一度使えばまずMPが空になり気を失ってしまう。戦闘中に気を失うなど即アウトである。


「まずは風の魔法を少し強化してみるか。<そよ風>、<強化>!」


ステータスを確認しながら風の魔法と強化を使う。MPの残りが70になった。風の魔法の消費MPが6だから強化でMPは3使用した事になる。結果そよ風は16秒ほどで消えたので、今ので約二割増しになった訳だ。


「次は2倍の強化を目指して、<そよ風>、<強化>!」


残りMPが20まで減っている。強化に35ものMPを使用して、そよ風は約48秒続いた。


「三倍くらいの強化になってしまったか…、調整が難しいな。残り20のMPではもう強化は練習できないか」


強化はあきらめて風の魔法を3回使って残りMP2まで減らし寝ようと思った。がMPが足りない状況で魔法を使うとどうなるか気になり試してみる事にする。


風の魔法は発動しなかった。


次は強化を使用してみる。残りMPから一割半の強化が可能だがあえてもう一度2倍に挑戦した。


…結果、MPは当然0になったが更にHPが41から25まで減っている。力を強化したのでどれだけ上がっているか分からないが大輝の体調が急激に悪くなった。強烈な疲労感が襲い心臓が跳ねるように鼓動し呼吸も荒くなったのだ。


最悪の体調の中で強化の魔法はMPがなくてもHPを代用して使うことが出来るのが分かったが、加減を間違うと命の危険も伴う魔法である。


「これは早いところ調整に慣れる必要があるな…後、レベルを上げてMPに余裕を持てるようにならないとな………」


そのまま大輝は倒れるように気を失ってしまった。

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