4話 レベルアップ
4話 レベルアップ
「<かまいたち>!」
早速次のブルースライムを見つけ魔法を放つ。距離は3メートル、風の刃の幅はさっきの1メートルの約半分。結果は予想通り切り裂く量が倍くらいになった。
「もう一度<かまいたち>」
同じ所に風の刃を受けたブルースライムは弾けた。この距離と風の刃の幅で大体木の棒で叩く4倍の攻撃力、一回は落胆したが十分遠距離での武器になると分かると少し安心した。問題はMPで今のところ風の初級魔法を4回使ったから残り6回分しかない。しかし快勝を続けた二人は調子に乗り始めていた。
「さあ次は何処かな?」
「どんどん行こう!」
完全にモンスターとの戦闘という危機感が欠如していた。そういう油断が入った時こそ事故が起こるタイミングである。
二人にも例外なくその事故が起こった。
「あっちの木の裏で音がしたよ!」
「よし戦闘だ!」
調子に乗り木の裏に回るとそこには赤いスライムがいた。
「レ、レッドスライムだ」
「これがレッドスライム…」
そうまさに目の前にレッドスライムがいた。全体が真っ赤でブルースライムより一回り大きい。そして攻撃範囲に入ってしまったのかいきなり飛びかかってきた。
「ミミ逃げて!」
とっさにミミを突き飛ばして逃がした為、防御も出来ず直撃を受けてしまい近くの木まで吹き飛ばされた。まるで走って来た自転車とぶつかったような衝撃だった。
「ぐ、思ってた以上に速い!」
「お兄ちゃん大丈夫!」
「僕は大丈夫、ミミは早く逃げて!僕が引きつけるから」
「でも!」
「ミミが逃げたら僕も隙を見て逃げるから!」
本当はかなりやばい。おそらく左腕の骨が折れている。しかしこの相手にミミを守りながら戦うのは無理そうなので先に逃げてほしい。
「分かった!村に戻って大人の人を呼んでくる」
そう言ってミミは走って行った。その間も目もないレッドスライムの視線を感じ目が離せない。なんとか姿勢を整え木の棒を構えるとまたレッドスライムの体当たりが飛んできた。
「危な!」
ドン!!!!!
レッドスライムの攻撃をかわした事で後ろにあった木に当たり大きく揺れた。驚いたが攻撃のチャンスと思い木の棒で叩きつけた。
「くらえ!!」
気合いを入れて叩きつけたが感触がブルースライムと違い過ぎた。まるでゴムのタイヤを叩いたような衝撃に木の棒が折れてしまった。次の瞬間またレッドスライムの体当たりが飛んできたがなんとかかわした事で距離を稼げた。
「なら<かまいたち>!」
約2メートルの距離で風の刃を放つ。ブルースライムなら2発で倒せる威力だ。しかしレッドスライムの表面が少しへこんだだけで終わってしまう。
「まじかよ……」
正直倒せないにしても少しはダメージがあると思っていたのでショックは大きい。レッドスライムも自分を倒す手段がなさそうと感じたのか容赦なく体当たりをしてくる。
「せめて赤なら3倍の強さで終わってほしかったよ…」
体当たりをなんとかかわしながらぼやいていたが余裕が無くなっていく。そうして何度かかわした後、かわしきれずに足に一撃もらってしまう。
「い!まずい!」
今の一撃でおそらく骨がやられた。このレッドスライムは頭も良いのか自分が優勢かどうか分かるようでじっくり力を溜めて狙いを定めているようだ。もはや出し惜しみしている余裕がない為またもやぶっつけ本番だが強化の魔法に頼るしかない。しかも今度は魔法に魔法を掛ける、はたして出来るのかどうか分からないがやるしかない。そして威力を上げるために相手の攻撃に近距離でカウンターを合わせるしかない。
そうしてレッドスライムの矢の様な体当たりが飛んでくる。
「最後の攻撃だ!<かまいたち><強化>!!!」
まさに目の前30センチの距離に放つ強烈な風の刃がレッドスライムを2つに切り裂きそのまま後ろに分かれて飛んでいった。
「倒せたか…?」
もはや戦う余裕はない。もしまだ生きていたらと不安になっていると頭の中にファンファーレが鳴る。
「何、今の音は?」
周囲を見回しても誰もいない。もしかしてとステータスを確認してみる。
天兎 大輝
レベル1 レベル3
HP 12 / 41
MP 0 / 85
スキル 強化 ・ 風の初級魔法 (LV2)
レベルが上がっている。しかも2つ一気に上がりスキルのレベルも上がっている。そして気になるのがMPが0になっていることだ。間違いなく強化の魔法の影響だろうけどミミの話だとこの後気を失うんだろうな…と覚悟しているとやはり来た。
「ああ…ミミが来てくれるまで他のモンスターが来ないと良いな……」
そう言いながら僕は意識を失った。
目が覚めた時は屋根っぽい天井があった。
「ここは?って言うか最近寝る時は気を失ってばっかりだな…」
こっちの世界に来てから毎日気を失ってる事実にうんざりしていると。
「あ、目が覚めたんだ」
声がする方を見るとミミが心配そうな顔をしてこっちに近づいてきた。
「大丈夫?薬草持ってきたから食べて。今おじいちゃんを呼んでくるから休んでて」
立て続けに言い薬草を置いて急いで部屋を出て行った。体の状態を確認したら腕と足の骨が折れている事を思い出した。気がつくと痛みが出てきたので急いで薬草を食べると痛みが消え骨もくっついたようっだ。
「薬草はやっぱり凄いな。日本に帰れる時には持って帰って増やしたいな」
体の回復具合を確認していると二人がこっちに来た。
「もう大丈夫かい?」
「あ、はい。もうすっかり回復しました。」
ミミと一緒にきた老人は60歳は過ぎていそうな腰の曲がった人だった。
「助けていただいてありがとうございました。僕は天兎 大輝と言います。」
「わしは<ワンス>じゃ。この村の村長をやっておる。こちらこそミミを助けてくれてありがとう、おかげでこの子も元気でおれる」
そう言いミミの頭をなでると少し気まずそう顔をしていた。
「でもお兄ちゃんすごいね。レッドスライムを倒しちゃうなんて!普通の大人でも武器なしでは勝つのが難しい相手なのに!」
さっきまでの気まずそうな空気が一転して興奮気味にミミが話続ける。
「どうやったの?風の魔法で?でもレッドスライムは体も硬いからそんなにダメージを与えれなさそうだし、どうやったの?」
ミミの話が止まらない、相当興奮しているようだ。僕は口をはさむタイミングすらなく苦笑するしかなくなっていると。
「ミミ。そんなに立て続けに質問したら答えようがなかろう。それに彼はまだ治りたて、安静にしてやらねば。とりあえず水でも持ってきてあげなさい」
「ごめんなさい!今、水を持ってきます」
ミミは悪い事をしたと分かったか急いで水を汲みに行った。
「さて、お主はノームの城下町で呼ばれた召喚奴隷じゃな」
「な!」
突然の確信をついた言葉にただ戸惑う事しか出来なくなっていると。
「その反応だけで十分答えじゃ。それにこの世界で姓を持つ者は王族か上位の貴族しかおらぬ、隠したいのなら姓は名乗らん事だ。」
「そうなんですか?気を付けます。ありがとうございます」
「しかし、お主は奴隷契約をされていないようだが一体?」
「あー僕は呼ばれた日に脱走出来たからかな?でも奴隷契約とはなんでしょう?」
「奴隷契約とは主の命令は逆らえず逃げても居場所が分かるためすぐに追手に追われるだろう。しかしそうなると今度はレッドスライムに勝てた理由が分からん?」
「実は・・・」
僕は二つのレベルにスキル、そしてエルディアの事を話、二つのスキルを使いレッドスライムを倒した事を説明した。