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3話 実戦

3話 実戦


気が付くと目の前には木が生い茂っていた。耳を澄ませば近くに川の流れる音も聞こえる。


「いったい何が…?体中が痛い…」


体中が痛く起き上がれない。最後の記憶から考えると、どうやら気を失い川に流されたようだ。よく無事だったなと思う。痛い体で周りを見回していると


「あ、目が覚めた!」


声がする方を見てみると、そこには茶色い髪の10才前後の女の子が元気そうな笑顔でいた。


「大丈夫?川に流されてたみたいだけど…、どこか痛い所はない?」


心配そうに僕の顔を覗き込んできた。


「君が助けてくれたのか、ありがとう。残念だけど体中が痛くて動けないよ」


「薬草があるけど食べる?」


そう言う女の子の手には、よく分からない緑の草を持っていた。


薬草…確かポールがHPを回復する方法で言っていたな。現物を見た事はないからよく分からないけど、あれを食べると回復するなら拒む理由はないな。


「ありがとう。いただくよ」


大輝は笑顔で返事をした。


「じゃあはい、口を開けて!」


女の子が薬草?を僕の口に近づけてくる。


「え!?そのまま食べるの?」


僕はその薬草をすり潰したりして飲むものとイメージしていたので、その行動が想定外で驚いてしまった。


「このまま食べるんだよ?さあ口を開けて」


何を当たり前の事を言っているの?、って不思議そうな顔をしているからには、これが世間一般の使用方法なのだと思い諦めた。


「分かったよ。いただきます」


そう言って薬草を食べる。苦みなどの味はほとんどなく、抵抗なく喉を通っていくと一瞬自分の体が光り、その後急に体が楽になった。


「あれ?急に体の痛みが消えた?」


体の痛みが急になくなり起きることも出来た。不思議そうに自分の体を見ていると。


「それはそうよ、薬草を食べたんだから。お兄ちゃん変なこと言うのね」


笑いながら言う女の子を見た後に、自分の体の状態を確認していると細かい擦り傷も治っていた事に驚いた。これを日本に持って帰れば病院経営や製薬会社などが大ダメージを受けそうだな、と的外れな考えも浮かんだが一先ず置いておき、


「僕は天兎 大輝。君のおかげで助かったよ。ありがとう」


僕は立ち上がって頭を下げお礼をいった。


「いいよ別に、困った時はお互い様。あ、私は<ミミ>よろしくね!」


急に頭を下げられた事に、戸惑いながらも笑顔で自己紹介をしてくれた。


「ところで此処はどこなのかな?」


頭を上げた僕はミミに聞いた。正直この世界の事が全く分からないし情報がなさすぎた。周りは木と川しかない、とにかく聞ける余裕があるときに少しでも情報がほしい所だ。


「此処はノームの城下町の南にある、ファスト村の近くの川だよ」


「ここから城下町は結構遠いのかい?」


正直、地名で言われてもサッパリだった。


「結構遠いと思うよ。馬で二日は掛かるって、おじいちゃんが言ってたから」


捜索範囲が馬で2日分の距離なら、まず安心の状況に安堵した。結果として川に流されたのは、移動手段としては良かったとも言えるだろう。


……もう二度とやりたくはないけどね。


「ところでお兄ちゃんは、なんで川に流されてたの?」


突然のミミの質問に戸惑った。事実を言ってどこからどう人の口を伝って広まるか分からない以上、ほんとの事を言うわけにもいかない。結果当たり障りのないように答えるしか出来なかったのだ。


「実は川の付近にいた時に、急に眩暈がして気を失って川に落ちてしまったんだよ」


「あー、もしかして魔法を使いすぎたの?無理をしたらあぶないよ」


ミミが指を立てて、大輝を注意するように言った。


「え?魔法が何か関係するの?」


「?、魔法を使いすぎると、眩暈とか気を失ったりしちゃうのは常識でしょ?」


当たり前の事を聞いたようで、不思議そうな顔をミミはしていた。


「どうして?」


「よく分からないけど、おじいちゃんがそう言ってた」


詳しいことは分からないが納得がいく話だ。確かにあの時は風の魔法にポールに掛けた強化の魔法、そして無意識だけど逃げる時についていこうと魔法を使っていたなら、あの段階でMPが空になっていても不思議ではない。……今後の事を考えるなら、魔法にもっと慣れておく必要がある。


「それでどうするのこれから?私の村に来る?」


「いいのかい?助かるよ」


ときどき話に出てきたミミのおじいちゃんに、詳しい話を聞いておきたいと思っていたし、よく分からない世界で野宿をする恐怖もあった。正直助かったと思うばかりだ。


「それじゃ行こうか!村はこの森を抜けた所にあるの」


そう言うとミミは置いてあった木の棒を持ち、森に入って行った。


「そう言えばこの森は大丈夫なの?モンスターとか?」


森と言えばゲームではモンスターとのエンカウント率が上がる場所だが、

あまりにも普通にミミが進んで行くので気楽に聞いてみると。


「大丈夫だよ。此処のモンスターは弱いから!」


「え!モンスター出るの?」


ミミの言葉に声を大きくして驚いてしまった。


「もちろん!でも私でも勝てるから大丈夫!」


実際のモンスターを見ていない僕からすればまるで安心出来ない。万が一の時は魔法に頼るしかない為、MPの残量を確認するためにステータスを見る事にする。


天兎 大輝


レベル1    レベル1


HP     28 / 28

MP     64 / 64


スキル  強化   ・ 風の初級魔法 (LV1)


結構な時間寝ていたのかMPは全快していたし、HPも薬草のおかげか全快だ。これなら最悪はミミを担いで逃げられると思っていると。


「モンスターがいた!」


ミミの声に緊張が高まり前方を確認した。

そこには青いゼリーのようなバスケットボールくらいの物体があった。


「…ミミ、あれは?」


「あれはブルースライムだよ。」


そのままの名前に気が抜けてしまっていたら、ミミが木の棒を構えてブルースライムに向かっていき叩き始めた。ブルースライムの動きはゆっくりで、危なげなくミミの攻撃が何度も入っていった。しばらくしたらブルースライムは水風船が割れるように弾けた。


「勝利!」


ミミは満面の笑みで木の棒を高らかに持ち上げて見せた。


「ハハハ、ミミお疲れ様。この森にはブルースライムしかでないのかい?」


ミミの勝利に笑顔で返した。


「たまにレッドスライムが出るけど、その時は逃げるの」


「レッドスライムは危険なのかい?」


「レッドスライムは速いし、顔ぐらいまで飛んでくるから危ないの」


さすが赤はどこの世界でも速いのか。と、とある専用機を思い出したが実際に命が掛かっている現状で笑ってはいられない。周囲を見回し手頃な棒を拾い上げて


「ミミ、次のブルースライムは僕が戦ってもいいかな?」


「大丈夫?お兄ちゃん結構弱そうだよ」


ミミは不安そうな顔を隠しもせずに大輝に言った。


ほとんど運動もしていない僕の体は、確かに不安になるのも分かる。でも子供にズバリ言われると流石にショックだった。


「大丈夫。僕はこれでも魔法も使えるからね」


「でも危なかったら、私が助けてあげるから頑張ってね!」


悪気もなくはっきり言われ苦笑しか返せない。ここまで弱そうに見えると流石に少しは体を鍛えないといけないな、と心に誓ったのであった大輝であった…。



「あ!ブルースライムがいるよ」


少し離れた所に青い塊がいた。


「じゃあ頑張って!無理はしないでね」


ミミは背中を叩いて、応援してくれた。


「ああ。行ってくるよ」


僕は木を構えブルースライムに近づき攻撃を始めた。プルースライムの動きはやはり遅く、棒で数回叩いて一歩下がれはまず接触はされない。森で寝ていないかぎりは、やられることはないだろう。そうして8回攻撃したのちブルースライムが弾けた。


「ふー、やっと倒せたか…」


「……もしかして初めて?」


おそらく最弱のモンスター相手に緊張して戦っているのが分かったのか、ミミは意外そうな顔で問いかけてきた。


「うん、今までモンスターと出会った事がなかったからね」


「へー、そうなんだ。おめでとう!それで次はどうする?」


ミミは素直に祝ってくれた。


「もう少し戦ってみたいな。色々試してみたい事もあるし」


「わかった。じゃあ次行ってみよう!」


しばらくして次のブルースライムが見えた。


「今度は風の魔法で<かまいたち>」


約3メートル離れた位置で、風を刃の様にして飛ばすイメージで放った。しかし風の刃はブルースライムの表面を少し切っただけだった。


「おお!風の魔法!」


ミミは大輝の魔法を見て、興奮した様子で驚いていた。


「もう少し近づいて<かまいたち>」


次は1メートルくらいまで近づき魔法を放つ。ブルースライムは真っ二つに裂けそのまま弾けた。


「レベルが低いと近づかないと攻撃力がないか…魔法なのに離れて使っても意味がないとか…」


「すごい!ブルースライムが真っ二つだよ!見直したよ!」


現状の魔法の使い難さに項垂れていたが、ミミの素直な笑顔に気分が晴れた。


「ミミありがとう。さあ次にいこう!」


魔法はイメージ、次は風の刃を少し小さくして放つか。それにレベルアップも体験してみたい。そう目標を定め次のモンスターを探し始めた。


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