元魔王と比べてみよう・自称勇者のステータス
この世界の近況を教えて貰おうと、俺たちはアルテインたちを会議に出席させる。
嫌がるアルテインだったが、元魔王に手も足もだせない上、帰りには魔物が再徘徊し始めているので、確実に遭遇すると増渕に言われて青くなっていた。
そもそも、大した実力も無いのになぜこんな場所にやってきたのかが分からない。
ついでになぜこんな無謀な冒険に綺麗な女性たちが付いて来たのか分からない。
俺も伊藤と二人で悔しがったほどだ。
途中でネリウが俺の婚約者だという誤解を思い出した伊藤にお前も敵だとか言われてしまったが。
で、俺と聖の間に入ったアルテイン一行は、俺側から、おどおど魔法使い。赤い髪のお姉さん。アルテイン、ダークエルフの少女といった順で座っていた。
できればダークエルフが隣に座ってほしかった。話を振って答えてもらうことで親密度を上げたかったのに。
結果は両手に魔法使いだ。華ではあるが一方が棘だらけなのでちょっと切ない。
いや、その、ネリウさん? そんなイラッとした目で見ないでくれないかな。
なんで悪口思い浮かべたのわかったんだ?
居心地の悪そうなアルテイン一行に、さて。と増渕が語りかける。
「それでは、まずは名前を窺おうか?」と現役時代に培った冷徹な声で言うと、気の弱い魔法使いの少女が「ひゃいっ」と一センチくらい飛び上がって声を出した。
「あ、その、えっと……わ、私は、その、あの、えっと。い、イチゴショートケーキです。イチゴショートケーキ・フロンティア」
しどろもどろに応えるイチゴショー……うん、まぁ、イチゴちゃんでいいか。だったが、自分の名前の所だけは詰まることなく一気に言った。
言い終えると気が抜けたのか、そのまま座席に尻から落下するイチゴ。はぅ。と口から声が漏れていた。ちょっと可愛らしい。
逆隣りから微かにロリコンとか聞こえた気がしたが空耳だと思う。
イチゴの自己紹介が終わると、赤い髪のお姉さんがため息交じりに声を出す。
どうやら自分たちの実力でこの場から逃げ出す事は不可能と完全に見切りをつけたようで、観念した顔をしていた。
「あたしはカスティラ・エーデルハントだ。御覧の通り冒険者をやってる。こいつらの保護者役だよ」
抗って殺されるくらいなら、できるだけ話し合いで済ませてみようという魂胆かもしれない。
この人が見た眼的には一番年上なので、パーティーの実質的なリーダーなのだろう。
彼女が、保護者役だ。と話すと、アルテインも仕方なくといった顔で自分の話を始めた。
「アルテイン・プロテインだ。勇者……を目指してる」
……俺はついついネリウに視線を送る。なんかさ、イチゴショートケーキやらカスティラやらプロテインやら、変な名前ついてるよな。なんでだろ?
しかし、俺の疑問にネリウが気付いていないようで、俺の視線の意図に気付けず首を傾げていた。
「最後は私か? トルーア・トルクスタ・トゥルフーカスだ。それで、私達をどうするつもりだ?」
最後のトルーアだけはまともな名前だった。良かった。本当にただただ変な名前を付けられた三人が集まっただけだったんだな。人の名前を悪く言うのも問題だし、この事については触れないでおこう。
「そうだな。まずは、なぜこの城に来ることになったかを聞かせて貰おう」
それは、実に単純明快な回答だった。
アルテインは村でも有名なやんちゃ坊主だった。
そんなアルテインに困った父親が言ったのだ。そんなに自分が強いと思うのなら魔王でも倒してきたらどうだ? と。
当然、父親は本気で戦いに行くなんて思うはずもなく、ただアルテインの行動を自粛させたいという思いで言っただけだったのだ。しかしである、この言葉がアルテインに火を付けた。
確かに父親の思惑通りにアルテインは体力作りを始める為に大人しくはなったが、数ヵ月後、幼馴染のイチゴを無理矢理説き伏せ、冒険者ギルドに登録。
いきなり新人にはキツい討伐依頼を受けた彼らを見ていられず、たまたまその状況を見ていたカスティアが行動を共にした。
さらに討伐依頼の魔物に苦戦しているところを森をパトロール中だったダークエルフのトルーアが助け、そのまま行動を共にしたようだ。
カスティラとトルーアはどうにも無謀な冒険をするアルテインが見ていられず母性本能を刺激されてしまったようだ。
保護者感覚で同行して貰っているうちに、自分の強さを勘違いしたアルテインはついに魔王城へと向かった。
ただ、カスティラとトルーアが情報操作をしたらしく、現魔王のいる魔王城ではなく、数百年間放置されたままの元魔王城である増渕の城へとアルテインを誘導したのである。
道中の魔物に負けて帰ればいい程度に考えていたカスティラたちだったが、幸いというか不幸というか行き道に魔物と遭遇する事はなく、簡単に魔王城に辿りつき、魔王城でも罠は全て解除されており、魔物の影すら見当たらず、自分たちはどこまでもいけると勘違いしたまま、低レベルでここまでやって来たらしい。
ということは、こいつらは負ける事を予想していたとするべきか。
まぁ、相手は只の魔物なので逃げ出せる程度の考えだったんだろう。まさか俺たちがいるなどと考えにも及ばなかったに違いない。
「ということはお前たちは低レベルで私に立ち向かったのか。どれ程のレベルで無茶をやらかしたのかは興味深いな。見せてみろ」
高圧的な態度の増渕に、彼らは周囲を見回し、しぶしぶといった表情でステータスを展開表示させた。
NAME:イチゴショートケーキ・フロンティア【♀】
RACE:ヒューマン 【12】
CLASS:見習い魔法使い 【Lv4】
DEGREE:無謀な挑戦者 【Lv1】
HP 1200/1200
MP 820/820
TP 900/900
AT 122
DF 63
MA 210
MD 182
SPD 230
LC 660
特技:
エナジーショット:5
手加減:0
魔法:
シェ・ズ:10
ヒール:10
キュアポイズン:50
PASSIVE:
魔力系成長・小
MP回復・微
硬直短縮・微
情報:
イシナキ村に住む少女。
幼馴染に誘われ冒険に出る。
師から魔法を教わり魔法使いを目指す。
始まりの魔王城にて元魔王に戦いを挑み敗北した。
ステータスが弱すぎる。これがこの世界の一般人、いや、少女の能力値と見てよさそうだ。
DEGREEの欄は多分増渕に戦いを挑んで手に入れた称号だろう。
説明欄に敗北したとか出るのはちょっと悲しいな。
彼女のステータスでイシナキ村という村があることがわかった。
NAME:カスティラ・エーデルハント【♀】
RACE:ヒューマン 【19】
CLASS:冒険者 【Lv21】
DEGREE:無謀な挑戦者 【Lv1】
HP 4100/4100
MP 1130/1130
TP 3700/3700
AT 357
DF 245
MA 115
MD 101
SPD 280
LC 440
特技:
応急手当:50
スラッシュ:20
唐竹割り:30
袈裟掛け:40
十字斬り:50
魔法:
パワーブースト:30
クリティカルブースト:50
MP変換・TP:100
ラ・ギ:10
PASSIVE:
筋力系成長・小
指揮【Lv2】
情報:
イシナキ村に住む女性。
幼馴染に誘われ冒険者となる。
トローチに処女を捧げる。
アルトナイア砦にて魔王軍の侵攻を防止、愛しい者と死に別れる。
イシナキ村でアルテイン、イチゴショートケーキとパーティーを組む。
始まりの魔王城にて元魔王に戦いを挑み敗北した。
……カスティラさん、苦労人だな。しかも誰に処女捧げたとか情報が載るとかどうなの?
トローチってのが多分幼馴染のことだろう。愛しい者というのも同じと考えるべきか。
アルトナイアで侵攻防止と書いてあるが敗北とは書いていない所を見るに、防衛には成功したようだ。
そこだけは、よかったといえるかもしれない。
俺達の誰もが、カスティラへの好感度を上げた。とだけ言っておく。
NAME:アルテイン・プロテイン【♂】
RACE:ヒューマン 【12】
CLASS:村人 【Lv21】
DEGREE:無謀な挑戦者 【Lv1】
HP 1900/1900
MP 640/640
TP 1500/1500
AT 187
DF 140
MA 140
MD 75
SPD 250
LC 777
特技:
スラッシュ:20
唐竹割り:30
魔法:なし
PASSIVE:
筋力系成長・微
猪突猛進
勇猛果敢
マダム・キラー
情報:
イシナキ村に住む少年。
幼馴染を誘い冒険に出る。
勇者を自称する。
始まりの魔王城にて元魔王に戦いを挑み敗北した。
村人かよっ!? しかもマダム・キラーとか。俺が欲しいよ。
こいつらのパーティーで一番弱いんじゃないかアルテイン。
NAME:トルーア・トルクスタ・トゥルフーカス【♀】
RACE:ダークエルフ 【174】
CLASS:警備員 【Lv30】
DEGREE:無謀な挑戦者 【Lv1】
HP 5800/5800
MP 2250/2250
TP 3300/3300
AT 412
DF 301
MA 224
MD 198
SPD 310
LC 580
特技:
簡易手当:100
ダウンアロー:10
スタンアロー:20
ショックアロー:30
スナイプアロー:40
クリティカルアロー:50
エアロアロー:100
ドリルアロー:150
三連の矢:200
アローレイン:300
魔法:
スピードブースト:30
スピードアシスト:30
ヒール:10
ヒールオール:70
ヒールラ:80
リフレッシュ:200
リザレ:130
ラ・ギライア:200
バム・ドラ:100
PASSIVE:
指揮【Lv6】
樹木耐性
寄生耐性
木精霊の加護
索敵
危険回避
薬学知識
罠解除
情報:
カトナの森に住むダークエルフ。
100歳にて成人の儀を終え森の警備に付く。
アルテイン、イチゴショートケーキ、カスティラとパーティーを組む。
始まりの魔王城にて元魔王に戦いを挑み敗北した。
よしっ。
俺は思わず心の中でガッツボーズを決めた。
なぜかって? 誰かに捧げたって情報が載ってないからさ。
これは、まだチャンスがあるはずだ!
警備員とか現代っぽい役職だが、これは俺の脳内変換のせいだろう。森の守護者みたいな役割らしい。
また、バム・ドラってなんだ? と思って聞いてみると、どうやら炎系魔法の広範囲攻撃らしい。
バム・ド、バム・ドラ・バム・ドライアの三段階だそうだ。




