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ヌェルティス、出会う

 防具屋を後にして、儂は心底人間という種に恐怖を覚えた。

 修羅だ。ここに修羅がおる……

 防具屋でも、赤城は遠慮という言葉を忘れたかのように値切り始めた。


 買ったのは兜、籠手、具足、に加え、鎧。ついでに装飾品が二つづつ。

 つまり六人が六種の防具を買った訳だ。

 当然ながら一つ一つが500ナグーを優に超える。


 そしてこれも当然ながら、値切られた商品は1ナグーとなる。

 結果、本来なら80000ナグーはくだらない買い物が、36ナグーで売買されてしまっていた。

 防具屋大損である。店畳まないか心配になる。


 青い顔を通り越して土気色になった店主への容赦ない値切り。

 赤城は鬼だ。いや修羅だ。いやいや闇医者だ。

 まさに法外な金要求しても平然としている冷血漢だった。

 こいつは、絶対に敵に回してはいけない奴だ。


 と、まぁ、こんな感じで儂らは装備を整えた。

 しかも当初身に付けるハズだった銅の剣と布の服というしけた装備ではない。

 折角なのでリストにしよう。


 赤城哲也        解説

  武器:アサシンダガー 攻撃補正+24・会心補正+20%・先制時即死+10%。

  兜:銀のサークレット 銀製の頭輪・中央にサファイア付き。防御補正+8。

  鎧:シルバープレート 銀製の胸当て。防御補正+18。

  籠手:銀の手袋    銀製の手袋。籠手と比べて指が自由に動かせる。防御補正+8。

  具足:銀糸の靴    銀を糸状にして作られた靴。防御補正+3・速度補正+3。

  装飾品:速度の腕輪  SPD補正+20。

  装飾品:水の指輪   風属性防御+20%・水属性の初期魔法入り/ミュ・ズ。


 ヌェルティス

  武器:シルバースピア 銀製の槍。攻撃補正+32・不死族に対する攻撃力増加。

  予備武器:鉄扇    鉄製の扇。攻撃補正+14。

  兜:ブルーリボン   青いリボン。防御補正+6。

  鎧:宵闇のローブ   闇属性のローブ。防御補正+14・光属性防御+5%。

  籠手:魔法の手袋   防御補正+4・魔法防御補正+10。

  具足:銀糸の靴    銀を糸状にして作られた靴。防御補正+3・速度補正+3。

  装飾品:知恵の腕輪  魔法攻撃補正+10・魔法防御補正+10。

  装飾品:闇の指輪   光属性防御+20%・闇属性の初期魔法入り/ディ・ム。


 日本毅

  武器:サーベル    衛拳付きの片手剣・攻撃補正+17。

  兜:気合いの鉢巻き  攻撃補正+5・防御補正+3・会心補正+5・やる気上昇。

  鎧:シルバープレート 銀製の胸当て。防御補正+18。

  籠手:ブラックレザー 黒い革手袋。防御補正+2。

  具足:銀糸の靴    銀を糸状にして作られた靴。防御補正+3・速度補正+3。

  装飾品:力の腕輪   攻撃補正+10・防御補正+10。

  装飾品:火の指輪   木属性防御+20%・火属性の初期魔法入り/ラ・ギ。


 手塚至宝

  武器:エクセルカリバー 聖剣カリバーンの模造品。攻撃補正+150・身体能力+10%。

  兜:銀のサークレット  銀製の頭輪・中央にルビー付き。防御補正+8。

  鎧:竜鱗の服      竜の鱗で作られた服。竜属性攻撃半減・防御補正+120。

  籠手:白銀の籠手    白銀製の籠手。防御補正+45・魔法攻撃半減。

  具足:銀糸の靴     銀を糸状にして作られた靴。防御補正+3・速度補正+3。

  装飾品:経験の腕輪   経験値2倍。

  装飾品:風の指輪    火属性防御+20%・風属性の初期魔法入り/シェ・ズ。


 大井手真希巴

  武器:暁の杖      火属性攻撃補正+10%・魔法攻撃補正+12。

  兜:ブルーリボン    青いリボン。防御補正+6。

  鎧:光珠のローブ    光属性のローブ。防御補正+17・闇属性防御+5%。

  籠手:魔法の手袋    防御補正+4・魔法防御補正+10。

  具足:銀糸の靴     銀を糸状にして作られた靴。防御補正+3・速度補正+3。

  装飾品:知恵の腕輪   魔法攻撃補正+10・魔法防御補正+10。

  装飾品:土の指輪    雷属性防御+20%・土属性の初期魔法入り/グレ・ゴ。


 八神百乃

  武器:シルバーソード  銀製の片手剣。攻撃補正+35・不死族に対する攻撃力増加。

  兜:銀のサークレット  銀製の頭輪・中央にエメラルド付き。防御補正+8。

  鎧:シルバーメイル   銀製の軽鎧。防御補正+21・速度補正-3。

  籠手:魔法の籠手    防御補正+6・魔法防御補正+8。

  具足:銀糸の靴     銀を糸状にして作られた靴。防御補正+3・速度補正+3。

  装飾品:力の腕輪    攻撃補正+10・防御補正+10

  装飾品:光の指輪    闇属性防御+20%・光属性の初期魔法入り/ビ・ハ。


 と、まあこんな感じだ。

 この店では銀製品が一番高額なものだったので銀系統の防具が多い。

 儂の着ているローブよりも光珠のローブとやらが強力だったが、やはり儂といえば闇だろう。ということでこちらを選ばせて貰った。

 光珠のローブより少し防御力が弱い程度なので問題はあるまい。


 くっくっく。闇のローブを身に纏いし吸血鬼。なんと、なんと似合っておるのだ。

 さらには初期の闇魔法が使えるらしい闇の腕輪まで手に入ってますます宵闇の覇者たる風格が出来てきたのではないか?

 我がことながらこれは余りに完成され過ぎだ。

 

 一方、手塚はもはや凄いことになっていた。

 さすがは勇者といえる装備を赤城に与えられ、身の丈に合わない装備に戸惑っている。

 なにせ竜鱗の服は滅多に出回る事の無い竜の鱗で作られたモノで、防具屋の店主が店の飾りとしてカウンターの奥に飾っていたものである。


 売る予定の無かったこれを値切り交渉中に引っぱり出させ、1ナグーで買いおった赤城には心底怖気が走ったわ。

 籠手も籠手で龍鱗の服の横に飾ってあったものだ。

 本来なら双方20000ナグーはする代物だそうだ。

 ついでに、経験の腕輪も貴重品だ。経験値が倍増する腕輪らしい。


 装備を整えた儂らは、一度武器防具を赤城に触らせ道具図鑑に載せると、そのままの足で近くの森へと向かった。

 魔術師曰く、折角なので弱い魔物しか出現しないこの森で自分たちの力の確認と連携を練習してくれだと。

 本当に時間がないらしく、すぐにでも即戦力になってほしいとのことである。


 森に入る手前の平原に向い、どういう連携を取るか相談する。

 クラスメイトとはいえ、儂らは他人のようなものだ。

 阿吽の呼吸で攻撃に次ぐ攻撃を行える訳ではない。

 下手をすれば同士討ちも起こりうるし、そうでなくても攻撃を阻害する可能性もある。

 この森に出没する魔物を相手に自分の攻撃方法とクラスメイト達の行動が合うようにしておけとのことだ。


「さて。目の前に見えるのが件の森のわけだが……」


 赤城の言葉に儂らは森を見る。

 日本に居た頃は都会なせいで滅多に見る事はなかったが、鬱蒼と生い茂った深い森が目の前にある。

 殆どが木々で覆われているのだが、一部獣道など開けた場所がある。

 まぁ、開けているといっても草が覆い隠して奥まで見通せるわけではないのだが。


「初期の森といってもどんな魔物とやらが出現するか分からない。まずは様子見を兼ねてゆっくりと行くべきだと思うのだが」


「そ、そうだね。しーちゃんの能力が低いみたいだし、ちょっと用心した方がいいよ」


「それはいいが、手塚。死に戻り用に記録は取ったのか?」


「つーか、記録の取り方わかンねーし。今回はちょっとした訓練みたいなもンだろ」


 手塚は乗り気ではないらしい。

 まぁそれはそうか。自分の能力値が低いのでほぼ護られるだけになるだろう。

 ん? 護られるのはいいが、経験値とかはちゃんと手塚に入るのか?


「そういえば魔術師よ。魔物を倒すのはいいが、経験値は全員に入るのか?」


 気になったので聞いてみた。

 すると、魔術師は「あっ」と、そういえばといった顔をした後、取り繕うように言った。


「それでは勇者様、パーティー編成と唱えてください」


「あ、ああ。パーティー編成」


 言われた手塚が口にすると、手塚の手前に現れるボックス。

 そこには手塚の名前だけが書かれていた。


「それでは皆さん、勇者様とパーティーを組むという意識を持ってパーティー参加と答えてください」


「えー、なんかめんどそう」


 八神からブーイングが飛んだ。自分が何かするということを本当に嫌がる奴だな。

 学校では暑苦しいくらい人に話しかけているというのに、この世界に来てからは殆ど話をしていない。というより干渉する気がないらしい。


 とはいえ、ぶつくさ言いながら八神が一番にパーティーに加わっていた。

 やり方は簡単だったので儂らも手塚のパーティーに参加する。

 魔術師曰く、六人が小規模パーティーの最大人数らしい。


 これを超えると三十人規模の中規模パーティーとなるらしいが、関係ないので説明を聞かない事にした。

 これも赤城が聞いてくれているので問題はなかろう。


 魔術師の話を聞いているメンバーから離れ、儂は一人森に近づく。

 まぁ、どんなに危険だとしてもゲームで初期の森といえばスライムやらゴブリン程度の雑魚が屯っているのが常道だ。

 宵闇の覇者にして吸血鬼の真祖たる儂が相対するにはちと物足りない程度の奴らだろう。

 恐るるに足らずということだ。


 むしろ、そんな森に儂と対等な実力を持つ者が居るのならさっさと出てくるがよいわ。

 闇の指輪にあったディ・ムという魔法の試し打ちをしてくれようぞ。

 くっくっく。はーっはっはっは。は……?


 茂みに近づいた儂の目の前で、叢が揺れた。

 スライムか何かか? と指輪を構えて攻撃態勢に入る。

 さぁ来い雑魚め。儂の幾千万の闇魔法で幾千億の地獄へと叩き落としてくれようぞ。

 さぁ、さ……ぁ……あれ?


 叢掻き分け現れたそいつは、儂を見るなり立ち上がる。

 儂はその姿を思わず見上げ、呆気にとられたままもう一度視線を下に。

 唖然としたままもう一度確認のために上を見上げる。


 素敵な茶色の毛皮。丸太のようにごつい腕。首元には三日月の白い毛がある。

 腕には鋭そうな爪があり、大きな肉体はまさに岩の様。

 右目には剣で切りつけられたような刀傷。とても厳つい……熊だった。


 お、おやおやくまさんや、なぜ両手を上に?

 万歳するの? あれ? 違うの?

 ああ、それ振り下ろすのか。


 お、おいおいくまさんや。それでは腕が儂に当ってしまうではないか。

 っていうかこれ、前にも似たようなことなかったか?

 これがデジャヴという奴か。

 なんて、本当に前にあったではないかヌェルティスさんや。あっはっは……

 だ、誰か助けて――――ッ!!

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