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始まりは突然に

 とある怪人が教室を襲ってから、一週間程が経った。

 クラスメイトはなんとか集まり、元の世界へと戻ってきたのだが、ただ一人、二度と帰って来なかった生徒がいた。


 私にとっては只の他人ではあるのだが、その少年を好きな奴がいた。

 その女は今もまだ悲痛な表情で暗い毎日を送っている。

 彼女の友人である大井手真希巴が元気づけているが、あまり意味をなしていないようだ。


 私、増渕菜七はいつものように、教科書とノートを机に用意する。

 とある怪人の出現時、先生が一人犠牲になったが、それは二日後にしめやかな葬儀が行われた。

 私達も無理矢理参加させられたものの、それで授業が全てなくなる訳ではなかった。

 教室には新しい教師が割り当てられ、明らかに新人臭の漂う田舎臭い女性がしどろもどろに授業を進行し始めたのだ。


 本日も、これから数学の授業である。

 なんとも面倒ではあるが、魔術理論を強化する意味ではこれはかなり有用な術式といえる。

 先のいざこざで山田八鹿が魔法使いと判明したが、あの魔法はなかなか凄かった。

 私のいた世界にはなかったものだが、この数学というものを組み合わせれば、少し劣るが似たような術式を構成することは可能だと思える。


 ふふ。まさかこの私が、人間どもに混じってお勉強とはな。

 前世の記憶があるだけになんとも不思議な気分だ。

 昔は一軍を率いて人間どもに戦争を吹っ掛けたものだが、こちらの世界のなんと平和な事か。

 化け物が襲ってきた次の日には学校が再開されるのだぞ。

 平和ボケもここまでくれば立派と言わざるをえん。


「みみみ、皆さん本日もよろしくお願いしますっ」


 今日も、カチコチに固まった先生がやってきて、いつものように数学の授業が開始される。

 そう、いつも通りの……


「し、しーちゃんっ!?」


 突然、悲鳴のような声が聞こえた。

 なんだ? と思考の海から顔を上げれば、なんと!?

 手塚至宝の身体が何故か光っていた。

 なんだ? あの光、あの構成……懐かしい?


 戸惑い浮かべる手塚を包み込むように光り始めた光は、徐々に大きくなっていく。

 なンだよこれっ? と手塚が叫ぶが、光は大きくなるだけだ。

 誰も彼女の疑問には答えられない。


「しーちゃんっ!!」


 マズいと思ったのだろう。大井手が席を立つと手塚に向って走り出す。

 もう少しで触れる。その瞬間だった。

 手塚を包む光が急激に眩しく輝き、周囲の目を潰そうとする。

 咄嗟に目を瞑った次の瞬間には、もう、光が収まっていた。


 そして、手塚は、周辺のクラスメイト、そして大井手を巻き込み……消え去った。

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