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集まるクラスメイト

 ローブの男に連れられて、俺たちは魔法陣のある部屋へと辿りつく。

 一体何が……!?

 3D映像の地図を見て、何が起こったのかはすぐに理解できた。


 赤い点が減っている。

 いや、そればかりじゃない。

 青い点が、赤い点と一緒に点滅している場所がある。


「こ、これは……」


 それだけじゃなかった。

 他の赤い点や青い点が、その交わっている光点向けて移動を始めているのだ。


「な、何コレ?」


「お母様、これは何が?」


「分からないわ。ただ、この光点が集まっている場所、パラステア王国の王都よ」


 王都に集まっている?


「まさか、俺たち以外にクラスメイトを集めているヤツがいる?」


「そんなっ、一体誰が!?」


「ちょ、待てよ。だったら何で戦闘員まで集めてンだよッ」


 手塚の言葉に、俺もネリウもはっとした。

 決まっていた。

 俺たちを集めるだけでなく、戦闘員まで集める奴は一人しかいない。

 パラステア王国、王都。そこに……蛇男がいる。


「ヤツら、俺たちと同じで国の兵士使ってクラスメイトを集めてるんだ」


「マズいわ。ここは城だけだから兵士の数も少ないけど、王都の兵士は数倍の数、向こうの方が早く集められる」


「それって、かなりヤバい状況じゃないのか!?」


「ったりめーだろ河上。向こうに向った奴らが全員人質だぞ! しかも最初の一人が捕まった時点で人質に取られて皆無抵抗で集められるっ」


 俺はもう一度地図を見る。

 すでに赤い点は十もない。

 大井手らしい光点を追うように移動している一点とこちらに向っている山根と伊吹の二点は問題ないが、他の点だ。

 六つの点がパラステア目指し移動を開始していた。


「殆どの生徒が向こうに向ってる……」


 情報がないから仕方ないといえば仕方ないが、自ら捕まりに行くなんて……

 ヤツの狙いは俺だ。

 俺がアンデッドスネイクに入った時点でクラスメイトの命は無くなる。

 それまでは、多分だけど何もされずに生きているはずだ。


 俺が探している怪人だと気付かれないうちに忍び込んで逃がすのが、一番の手ではあるのだが……

 やはりダメだ。脱出するにも変身する必要がある。皆に見られるのは避けたい。向こうに戻ってからの生活に響く。

 それならば相手がこっちに出てきた所で蛇男だけを叩いてしまった方が早い。


 いや、冷静に考えろ。

 昔を思い出せ。

 暗殺を行っていた俺にとって、蛇男の居場所さえ分かれば対策は簡単なんだ。

 クラスメイトの開放を考えるのは後で良い。


 とにかく、今は焦りは禁物。

 情報を仕入れて潜入作戦を考えないと。


「蛇男が皆を集めてるのはわかった。あっちも探索魔法を使ってるんだろ? だったら遅かれ早かれぶつかることになる」


「へ。ってことは、ようやく俺の出番ってわけか」


「おいおい戦闘員逃がすヤツがどの口で言ってンだよ」


 再び格好付けるように言う河上に、手塚が呆れた声を掛ける。

 河上の役立たなさはすでに証明されたようなものなので、彼への信頼感が地面すれすれなのだ。

 実力はあるみたいなのに救われない奴だ。可哀想に。


「戦闘員? 俺が戦ったのは怪人だぞ?」


 ……あれ? 話が変な方向に。

 見ればネリウが含み笑いを浮かべている。


「怪人!? 蛇男以外にもいたのかよ」


「ああ。なんか思い出すのも気持ち悪い怪人が堀の中に飛び込んでよ。俺泳げねぇし、堀の外から探したんだけど見つからなかったんだ。まだ近くにいるかも」


「ふふ、それはないんじゃない?」


 ニヤついた笑みでネリウが地図を指す。

 指された場所は現在地。俺たちがいるクラリシア城である。


「ほら、私たちのいるここに、青い点はある?」


 当然ながら、戦闘員は駆逐してあるので、そこにあるのは赤い点のみ。


「ねェな?」


「そんなバカな!? だって俺は……」


「おそらく、この点のヤツじゃない?」


 城より少し北に離れた場所に存在する青い点。なるほど、確かに逃げて逃げられない距離じゃない。

 その点もパラステア目掛け北上を続けている。


「クソッ、取り逃がしてたか」


 河上が納得するのを見て、ネリウが俺にウインクして見せた。

 ああ、ちくしょう。感謝してますよネリウ様ッ。


「もうそろそろ大井手さんが合流するわね。詳しい話はその後にしましょ」


 高速で動く赤い点を見ながらネリウが話を区切る。

 手塚も河上も異論はないようで、険しい表情で部屋から出て行ってしまった。


「薬藻」


 手塚たちに続いて部屋を出ようとしていた俺を、ネリウが呼び止める。


「なんだ?」


「一つ、言い忘れてた事があるの」


「なんだよ勿体ぶって?」


 ネリウは無言で自らの薬指に嵌ったレインボータートルをこちらに向ける。

 刹那、ネリウの顔が地獄に引きづり込むような笑みに変わる。


「この宝石を取りに行く行為。私の国でね、婚約の儀だったりするの」


「……はぁ?」


「しかもその宝石を兵士たち部外者に見えるように薬指に填めた。婚約成立ね。すでに国中に広めたわ」


「ちょ、え?」


「これで、私とパラステアの王子にあった許婚は事実上消滅。あなたが私を掻っ攫ったおかげよ薬藻。いえ、マ・イ・ダ・ァ・リン」


 クスクスと笑うネリウが悪魔に見えた瞬間だった。

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