正義の味方の弱点
森から前門へとやってくると、城門の壁に背もたれ座っている二人の少女がいた。
どうやらこちらの敵は二人で撃退できたようだ。
むしろ早く倒し過ぎて暇を持て余していらっしゃる。
若干手塚が不機嫌だ。
「なんだよ、休戦か?」
「武藤? なんでそっちから来てンだよ?」
「ああ、遠回りして周囲を見回っておいたんだ」
堀の側面へと回り込んだ俺は、人がいない事を確認して堀から飛び出した。
森の中へと身を隠し、変身を解いて森を迂回。
そして城門前の森から姿を表したのである。
「こっちはなんとか倒したわ。そっちは?」
「あー……ジャスティスセイバーが出て来てたから任せた」
つじつま合わせが大変だ。
変な事にならなければいいけど。
まぁ、ネリウに丸投げしてしまおう。
「それ、逃がすンじゃねーの?」
「大丈夫だろ」
一応、ネリウにアイコンタクトしておく。
伝わったかどうかは分からないけど、落ち着いた様子なので大丈夫だろうと思う。
「それじゃ、戻りましょうか」
ネリウが立ちあがり、門兵に話しかける。
門が開いた時だった。
堀の側面をこちらへと走る赤い男。ジャスティスセイバーのお通りだ。
「おい、お前ら。こっちに気持ち悪い顔の怪人来なかったか?」
「は?」
「逃がしたの? ヘタレね」
「誰がヘタレ……だぁっ!?」
側面の堀の先から怒鳴るジャスティスセイバー。
思わず身を乗り出し、そのまま堀へと姿を消した。
少しして水に何かが落ちる音がする。
「そう言えば、薬藻、あなたどうして濡れてるの?」
「あ、そういやずぶ濡れじゃねーかよ」
「えっとー、それは……も、森の中に水溜りがあってな。運悪くそこでこけたんだ」
自分でも苦しい言い訳だと思いながらも説明していると、何やら門兵が騒がしい。
手塚が何気なく声のした方に目を向け、目を見開いた。
「ちょ、あいつ溺れてるッ」
「はぁ!?」
手塚の慌てた声にネリウともども堀を見る。
赤いスーツが沈んでいくところだった。
泳げないのかよアイツ……意外な弱点発見だな。
今行くぞッ。と兵士の一人が甲冑のまま飛び込んでいく。
物凄い筋肉質の男は、堀へと飛び込むと、随分と上手い泳ぎでジャスティスセイバーが消えた付近へ到着。
すぐに水中へと身を沈ませた。
少しして、河上を抱き寄せながら水面に姿を現す兵士。
歓声が起こった瞬間だった。
つか河上のヤツ。気絶とかしたら変身解けるみたいだな。
これも弱点の一つか。今度闘う時になったら参考にしよう。
「酷い目に遭ったぜ……」
作戦会議室と化した小部屋に戻ってきた俺達。
一命を取り留めた河上は部屋に着くなり床にへばり付いてしまった。
彼は知らないようだが、門兵のゴツイお兄様に唇を奪われたのは黙っておいた方がいいだろう。
人工呼吸とはいえ、初めてのキスがそれなんて、可哀想だから。
「にしても、正義の味方が水苦手って、どうなンだ?」
「仕方ないだろ。風呂位はなんとかなるけど足着かないんだぜ? 人間の身体は浮くようにできてないんだ」
なるほど、泳げないから堀の中までは追ってこなかったのか。
「トラウマか何かか?」
「覚えてねェよ。ただ昔から足のつかない水中は確実に溺れたな」
ごろんと体を仰向けた河上は椅子の足を掴み取り、力なく立ち上がる。
それを見ながら俺達も座席に座った。
「そろそろ見つかった人たちもここに来るはずよ。それと」
全員が座席に座ったのを確認し、ネリウが話しだす。
「大井手さんと思われる光点がこちらに向って移動を開始したわ。その近くにあった青い点は消滅。そこの赤い点達も遅いながらここに移動を始めたわ」
ということは、大井手は無事戦闘員を倒して戻ってくるということか。
まぁ、赤い点が大井手であればの話だが。
その辺りは祈っておくしかないだろう。
「後は……もう近づいてくる光点はないくらいね。一段落したからここに向っている二人が来たら私たちから捜索に行くべきかもしれないわね」
自分たちから迎えに行くのか。
魔物も出るし、蛇男もまだいるし、団体行動は危険なんだが……
「た、大変ですっ」
急に、ドアが開いた。
駆け込んで来たのはローブを着こんだ若い男。確か探索魔法が展開されている部屋にいた男だ。
「どうかしたの?」
「く、口で言うより実際に見ていただいた方が……魔法陣室へっ」
一秒でも惜しいというように、駆け戻っていく男。
唖然としていた俺たちは、戸惑いながらも着いていくのだった。
何が、起ったんだ?




