伏兵出現
絶望的状況が続く。
これ以上兵力は裂けないのに東と西から魔物の軍勢が襲ってきているらしい。
改造人間である俺の能力では一人で無双してどちらかの軍勢を受け持つこともできないし、むしろ南の軍勢の一部を受け持つだけで手いっぱいだったりする。
アグニがヌェルのおかげで自由になったみたいだけど、今から彼が頑張ったとしても西と東から敵が雪崩れ込んで来れば俺たちの敗戦だ。
かといって手をこまねいていても敵は構わずやってくる。
打つ手はないように思えた。
「クソ。まさかこれを発動させることになるとはな……」
チィと舌打ちした増渕が再び八重閃光弾を唱えた。
が、今度は敵に向う事はなく、八つの光の球が円状に隊列を組み、回りながら上空へと飛び上がる。
そのままくるくる回って収束し、一瞬後、爆発的に飛び散った。
それはまるで願いを叶えたドラゴン○ールが上空で飛び散るさまを見ているようだった。
「ちょ、マスター、一匹抜けた!」
俺が増渕が出した魔法の球に見入っていた時だった。
アルケニーが近くまで来ていて、慌てたような声を出す。
どういう意味かとそちらを見てみれば、今、まさに国内へと侵入しようとするゴブリンソルジャーが一体。
魔法部隊を迂回して、奇襲するように今、門を潜ろうとしていた。
アレは不味い。真っ先に止めないと町に被害が……
と、慌てた俺の視線の先で、それは現れた。
門を閉ざしていた観音開きの扉がわずかに開き、突如ぬっと突き出される緑色の太い腕。
勝利目前と顔を綻ばせやってきたゴブリンソルジャーの頭蓋をむんずと掴み、持ち上げる。
アイアンクローを喰らったゴブリンソルジャーは何が起こったのか理解できずにじたばたともがく。
しかし、アイアンクローが解除されることはなかった。
そのまま体力を削られたゴブリンソルジャーは抵抗空しく、四肢をだらんと投げだし、ピクリとも動かなくなった。
何やらダイアログが出現したようだが、緑の腕はそれでもまだ握力に力を入れ続ける。
やがて、1分が経過し、ゴブリンソルジャーが消え去った。
「アレは……」
「なんとか、間に合ったか」
ケツァルコアトルの殆どがヌェルに殺到しだしたおかげで余裕の生まれた増渕が俺の近くへ降りてくる。そして降りるなりに今の台詞を吐いた。
意味がわからない。
「間に合ったって、何がだよ?」
「援軍……いや、伏兵というべきか」
伏兵? と首を傾げた俺の視線の先で、扉から姿を現す緑の女。
そいつを見た瞬間、俺は全てを悟り戦慄を覚えた。
ああ、なぜだ? なぜ俺はあの地獄を思い出してしまったんだ!?
ゴブリンで巨乳マッチョ厳つい顔のエスメラルダ・エルミット・エーデルワイス。
またの名を雌ゴリラ。
雌ゴリラ……じゃなかった。エスメラルダは増渕の顔を見つけるなり、嬉しそうに手を振ってふかぶかと礼を行った。
「手塚と相談してな。もしものことを考えてフルテガント王国の至る所に我が城から魔物の軍を徴兵して割り振っている。よほど危機的状況にならない限り、この伏兵は使わないだろうと思っていたのだが……転ばぬ先の杖か。なかなかいい言葉じゃないか」
ちなみに、移動に関してはムーブを覚えた手塚が数十往復を繰り返したのだった。
一人だけしか移動魔法が使えないので、効率が悪かったのだが、手塚が不平を洩らしながらも全てやってくれたのである。
結果、増渕の威光に従う魔族や魔物全てが伏兵としてフルテガント王国国内を闊歩していたのである。
フルテガント王国内は既に退避するようメッセージが流布されていたので、街中に人が殆どいなかったのは幸いだろう。
もしも魔獣を目撃していたらおおごとになっていたはずだ。
で、今さっきの八重閃光弾が伏兵への合図になっていたようで、確認のためにエスメラルダが増渕の元へやってきたのだろう。
発動する時はかなり危険な状況なわけだし、本当に集合が掛かるとはエスメラルダも思っていなかったはずだ。
「東と西は我が伏兵部隊に任せる。あとはここを早めにかたずけ部隊を二つに割って東西の助っ人に向う」
増渕が手短に作戦を伝えていくと、エスメラルダはコクリと頷き門の内側へと消えて行った。
少しして、国内をおびただしい数の魔物が徘徊し始める。
今までどこに隠れていたのかと思うほどの大きなヤツも幾つか見受けられた。
基本は魔王城に出ていたオルトロスやらミノタウロスやらの打撃武器属性が多い部隊割だが、あの実力の魔物なら2万の大軍でも互角に戦えるんじゃなかろうか?
まぁいい。これで防衛戦の目途はたった。後はただただ耐えて敵を倒すのみ。
俺は部隊を壊滅に追い込むべく、目の前の敵兵を一体ずつ確実に息の根をとめるのだった。
あっちのことはあいつらに任せればいい。きっと何とかするはずだ。
人物紹介(仮)
武藤薬藻
改造人間・フィエステリア・ピシシーダ
増渕 菜七≪ナルテア・ナルティウス・ナーフェンデ≫
転生者・元魔王
エスメラルダ・エルミット・エーデルワイス
ゴブリンメイド
部隊構成(仮)
魔王軍
第一部隊 機動部隊(魔獣のみの構成)約2万 壊滅
第二部隊 騎馬部隊(魔獣に騎乗した魔族)約2万 壊滅
第三部隊 歩兵部隊(魔族のみの構成)約4万 残り約6千
第六部隊 巨人部隊 約84体
第八部隊 南方奇襲部隊 約6千
第九部隊 西方奇襲部隊 約2万5千
第十部隊 東方奇襲部隊 約2万5千
第四部隊 重歩兵部隊(高ランク魔族のみ)約1万 残り約98体
第五部隊 巨大獣部隊(攻城用・魔獣魔族混合) 約2千6百体
第七部隊 精鋭兵・魔王 約百名
フルテガント王国軍
第一部隊(王国軍冒険者人猫族混合) 約5千名
第二部隊(勇者王国近衛兵暗部精鋭兵等)約9百名
魔法部隊(王国軍冒険者エルフ族混合) 約7百名
負傷者 約2千名
死者 約2千名
完全死 549名
医療部隊(王国軍冒険者妖精族混合) 約5百名
南方防衛部隊(魔法・医療部隊混合) 約5百名
遊撃部隊25名
竜部隊(赤龍王と黒竜は含まず)13名
伏兵部隊 2001名
魔王軍戦経過報告(仮)
・大井手真希巴、ヌェルティス、増渕菜七による広範囲魔法での先制攻撃。
・三人の退却後、魔王軍機動部隊(獣部隊)を罠に嵌める。
・魔法部隊による追い打ち。
・機動部隊壊滅。
・龍華出陣。敵軍中央(重歩兵部隊)にて無双開始。
・機動部隊の後詰、騎馬部隊と第一部隊が激突。
・騎馬とさらに後詰の歩兵部隊が合流。
・綾嶺の自業自得な危機で超幸運効果発動により大井手が助っ人に入る。
・重圧魔法が無くなり騎馬部隊が本格的な行動を開始。
・大井手が持ち場に戻り魔法再開。
・騎馬部隊と歩兵部隊の一部が左右の森へと侵入。遊撃部隊が迎撃。
・巨人部隊最前線に出現。
・巨人部隊一つ目兄貴たちによる一斉射。
・増渕により一斉射の防衛成功。体力が尽き増渕死亡(仮死)。
・巨人族対巨大宇宙人&竜族
・南方防衛戦
・西東より新たな奇襲部隊出現
・伏兵出現
↑いまココ
・西方防衛戦
・東方防衛戦




