四面楚歌
スケルトンナイトの頭を蹴り飛ばし、俺は思わずソレを見上げた。
小出が巨大な狐に変身して驚いたものだが、そんな小出の眼前に、百体以上の巨人がぞろぞろと現れる。
その中には一つ目兄貴が数体見受けられた。
それだけじゃない。
パンツ一枚のガチムチスキンヘッド巨人、ギガスが大量に出現していてなんか暑苦しい。
身体にオイルでも塗っているのか常にテカっているのがまた……怖い。
あれと戦うとか、マジ勘弁。といっても、フィエステリアである俺が巨人など相手に出来るわけがないのだが。
いや、でも、俺の毒ならなんとかなるのだろうか?
いやいや、あんな巨大な生物が死の踊りなんて踊ったらどれ程の被害が出るか……
うん、俺にはアレ、どうにもなんねーわ。
アグニたちに任せよう。
そのアグニたちはケツァルコアトルの群れに囲まれて身動きできないようだ。
身体を噛みつかれてうっとおしそうにしているが、あまりダメージは無さそうなのが救いか。
でも、あれじゃ闘うのは無理そうだ。
「黒死之指先」
小出を救った増渕は、反撃とばかりに新たな呪文を紡ぐ。
あれは、確か闇魔法の即死攻撃だったっけ。
指差した相手に死の宣告を与える魔法。
相手の魔力抵抗によってはキャンセルされるうえに、元々の成功率が低いのだとか。
ギガスの一体に向けられた増渕の指先から黒い靄のようなものが高速で放たれる。
ギガスに纏わり付くように靄が変化し、あの巨体を完全に包みこんでしまった。
そして、その状態で安定してしまう。
なるほど、アレは盲目効果もついてくるのか。
見るからに脳筋なギガスは面白いくらいに黒死之指先により、盲目のバッドステータス+死の宣告を受け、また一つ目兄貴もこれを喰らい自慢の眼を封じられていた。
一体ごとにしか使えないが、目が見えなくなるだけで小出にとっては十分すぎるフォローらしく、狐火を使って一体ずつ確実に潰していく。
それでもさすがに数が多い。
「ジロムン、悪いけど巨人を任せる。股潜りでなんとかできないか?」
俺に言われたジロムンが即座に巨人の元へと走り去っていく。
言ってから思ったのだが、あの歩幅、簡単そうに見えるけど、逆に危険かもしれない。
何せ一度でも踏まれれば即死の可能性がある上に面積が広いので逃げ切るのも大変だ。
「ダーリン、儂の魔法使おうか? 消耗が激しいがかなり削れるぞ?」
「いや、下手すりゃ仲間が巻き添えになる。乱戦状態になりだしたしな」
援軍が期待できない以上、今巨人と敵対できるのは小出と増渕以外ではやはり竜種であるアグニと黒竜しかいないだろう。
二人を参戦させるには纏わり付いている蛇どもをなんとかしなければならない。
「ヌェル、あの蛇たちをなんとかできないか?」
「儂にか? さすがに無茶としか言えんぞダーリン。いや、でも、アレならできるか?」
なにやら考え出したヌェルは、おもむろに輸血パックをアイテムボックスから取りだし飲み始める。
アイテムボックスといっても無限ボックスではなく、王国から支給されたウエストポーチである。
見た目に似合わず大容量。箪笥すらも仕舞える高性能だったりする。
輸血を終えたヌェルは行ってくると一言俺に告げて言った。
「使い魔召喚! 蝙蝠化!」
ヌェルの身体が一瞬にして無数の蝙蝠へと変化する。
少し遅れて召喚された蝙蝠たちが出現、編隊を組んで飛び上がったヌェルの身体? 蝙蝠を追い掛けるように召喚された蝙蝠が飛んで行く。
その数は真祖状態だからか数百体もの大軍勢となる。
まるで黒い川のように蛇行しながら空を飛んで行く。
進行方向に存在したケツァルコアトルを飲み込み、蝙蝠の大移動が始まった。
黒い大軍に取り込まれたケツァルコアトルはその体を無数の蝙蝠に噛みつかれ、干からびるように死んでいった。
体力を失ったケツァルコアトルは、まるで邪魔だというように、黒き群れから排出されて落下する。
さらに数匹のケツァルコアトルが巻き込まれては命を落としていく。
蝙蝠の大軍はアグニの元へと辿り着くと、なんとアグニを丸ごと包みこんだ。
何してんだヌェル!? と思ったが、どうやらアグニに噛みつくことはなかったようだ。
アグニを取り巻くケツァルコアトルを吸血し、さらにアグニを護るように蝙蝠たちが犇めく。
そのためケツァルコアトルたちが新たに寄ってくる事が出来なかった。
よし、これならなんとかアグニたちを参戦させられそうだ。
思わず拳を握ってよしっ。と呟いた時だった。
『緊急連絡っ。東と西から新たな敵影発生! 迎撃よろ! 誰か来てぇ!』
桃栗の焦った声が戦場に響いた。
というか、どうすんだよ!?
すでに俺らは手いっぱいだ。
北から戦力を引っぱってくるぐらいしか方法はないと思う。
しかし、これで四方向からの襲撃でこの国が囲まれたことになる。
この国を助けに来る酔狂な国はない。つまり完全な四面楚歌。
もはや、詰んだといってもいい状況だった……
人物紹介(仮)
武藤薬藻
改造人間・フィエステリア・ピシシーダ
ヌェルティス・フォン・フォルクスワーエン ≪田中ナナシ≫
吸血鬼・真祖
増渕 菜七≪ナルテア・ナルティウス・ナーフェンデ≫
転生者・元魔王
部隊構成(仮)
魔王軍
第一部隊 機動部隊(魔獣のみの構成)約2万 壊滅
第二部隊 騎馬部隊(魔獣に騎乗した魔族)約2万 壊滅
第三部隊 歩兵部隊(魔族のみの構成)約4万 残り約6千
第六部隊 巨人部隊 約84体
第八部隊 南方奇襲部隊 約7千
第九部隊 西方奇襲部隊 約2万5千
第十部隊 東方奇襲部隊 約2万5千
第四部隊 重歩兵部隊(高ランク魔族のみ)約1万 残り約99体
第五部隊 巨大獣部隊(攻城用・魔獣魔族混合) 約2千6百体
第七部隊 精鋭兵・魔王 約百名
フルテガント王国軍
第一部隊(王国軍冒険者人猫族混合) 約5千名
第二部隊(勇者王国近衛兵暗部精鋭兵等)約9百名
魔法部隊(王国軍冒険者エルフ族混合) 約7百名
負傷者 約2千名
死者 約2千名
完全死 546名
医療部隊(王国軍冒険者妖精族混合) 約5百名
南方防衛部隊(魔法・医療部隊混合) 約5百名
遊撃部隊25名
竜部隊(赤龍王と黒竜は含まず)13名
魔王軍戦経過報告(仮)
・大井手真希巴、ヌェルティス、増渕菜七による広範囲魔法での先制攻撃。
・三人の退却後、魔王軍機動部隊(獣部隊)を罠に嵌める。
・魔法部隊による追い打ち。
・機動部隊壊滅。
・龍華出陣。敵軍中央(重歩兵部隊)にて無双開始。
・機動部隊の後詰、騎馬部隊と第一部隊が激突。
・騎馬とさらに後詰の歩兵部隊が合流。
・綾嶺の自業自得な危機で超幸運効果発動により大井手が助っ人に入る。
・重圧魔法が無くなり騎馬部隊が本格的な行動を開始。
・大井手が持ち場に戻り魔法再開。
・騎馬部隊と歩兵部隊の一部が左右の森へと侵入。遊撃部隊が迎撃。
・巨人部隊最前線に出現。
・巨人部隊一つ目兄貴たちによる一斉射。
・増渕により一斉射の防衛成功。体力が尽き増渕死亡(仮死)。
・巨人族対巨大宇宙人&竜族
・南方防衛戦
↑いまココ
・西東より新たな奇襲部隊出現
・○○出現
・西方防衛戦
・東方防衛戦




