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第1話 血弾の使い手

プロットって重要ですね

非現実的な人生はプロットなしで書き始めたのでいろいろ大変です。。

さて、こちらはそこまで長編にはならないと思いますが、見てくれる方は最後までお付き合いくださると嬉しいです。




「く、くそ……弾がもう無い」


 深く、森に覆われている荒廃した街の中、男は銃を片手に迫りくる敵の足音を頼りに位置を探っていた。

 周りは木々や苔、蔦などが多く、ジャングルのように入り組んだこの地形は、集団で動く敵にとって視界が悪く一人で行動している男など恰好の餌食であるのだが、その男はまだ諦めてはいなかった。

 荒廃した家が遠くに見え、一先ずあそこに逃げ込めば助かるかもしれないと周囲を警戒しながら足音を立てないようにゆっくりと行動する。

 しかし確実に迫りくる複数の鳴き声、喉の奥でグルルルと音をたてているのが森の中でこだまする。

 男はなるべく平静を保ち銃を構える。


 突如背後で音がした。

 勢いよく振り向くと犬歯を立派に成長させた狼のような小型モンスターがのそのそと現れた。しかし小型といえども体長は1m以上はある。

 そしてどのくらいの人たちを狩って来たのか、その犬歯は赤黒く染まっていた。

 両者共々動かず相手の出方を見る。男は身長に狙いを定めて弾丸を放つ、けれどもその弾は確かに敵の頭を捕えていたが、避けられた。完全に弾が頭を捕えていただろうと思っていた男の表情が焦りの表情へと変わる。

 すると再び背後から草をかき分ける音がした。

 二匹目だ。

 男の手は微かに震え始めていた。正面からでは弾が避けられてしまうと思っているからだろうか。

 逃げ道を確認し、二匹に素早く銃を向けながら後退していく

 しかしまたしても一匹現れた、逃げ道を塞がれたうえに三方向から歩み寄られる形になってしまった。

 ただただ時間を消費するだけではそのうち死ぬことがわかっている男は再び銃弾を放ち、先ほどの一匹を少しだけでも怯ませその横を駆けた。

 足場が悪いうえに運悪く蔦に足を引っ掛けたら食われてしまう。焦る男に木々から飛び出た枝が体のいたるところを傷つける。対して狼に似たモンスターは、自分のテリトリーかのように軽い身のこなしで駆ける。

 男は息切れしながらも必死に走る。

 目前には家が見えた。

 あそこまで行けば助かる!!

 けれども、その希望に満ちた目は陰りを見せる……

 正面から同じ小型モンスターが三匹現れたのだ。家が目と鼻の先にあるのに強行突破も出来ない状況になってしまった。


 何かを決意したのかグッと力を込め目の前の三匹の内の一匹に狙いを定めて指に力を入れる。

 瞬間、放たれた弾は敵の頭を貫き絶命させることが出来た。

 男は何かに気づいたかのようにもう一匹に狙いを定める。

 撃ってみれば一匹目と同じ結果が得られた。

 最初に攻撃したあいつはリーダーだったに違いないと後ろを確認する。敵も目前まで迫って来ていたが男には余裕の表情が出た。さらには建物内にグラビティマガジンを所持している奴を発見しひとまずホッとした表情をする。


「建物の中にさえ逃げ込めれば……」


 最後の一匹に銃を向けて引き金を引いた。


 カチッ


 ところが、いつものように銃声は聞こえない。弾切れだった。手持ちの弾は既に使い切っていた。

 せめてもの救いを求めるように建物の方向に向かって声を荒げ両手を振るが返事は無い。希望を断たれてあきらめたのか膝を崩し地面に倒れ込む。

 徐々に近寄ってくる敵……

 その男は涙を流しながらウルフ型の餌食になった。




「ここでは弾切れに細心の注意を払わなければならないっていうのに」


 俺は窓から男の動きを見ていた。

 このダウンフォールの中で弾切れとは運が悪いのか馬鹿なのか……

 救いを求めていたがあの様子じゃ間に合わなかった、と思う。

 荒廃した建物の中で弾薬を回収する。弾薬の種類は普通弾であるフルメタルジャケット弾十発。そしてスラッグ弾が二発、高威力のスラッグ弾を発見したのは少し嬉しかった。

 建物から出ると男には四匹のデビルハウンドが群がっていた。

 むしゃむしゃと腹部を抉って食事を楽しんでいるが酷い匂いだ……こんなところで死なれては俺が困る。

 俺の気配に気づいたのか一匹を残して三匹がこちらへ寄ってくる。

 ははあ、リーダーはあいつか。

 銃を構える俺の体の周りを銃弾が舞う。

 マガジンに本来込める弾の数には限りがあるが、このグラビティマガジンと呼ばれる装置にはマガジンの入れ替えという動作が無く、城のエリートしか所有できない優れものだ。

 一斉に走ってくる敵に対して俺は一匹ずつ的確に殺していく……ぬるいな。

 三匹倒し終わったところでリーダーのご登場か……

 試しに一発撃つがサラリとかわされた。やはり通常弾は役に立たないか、特注は使いたくないんだがしょうがない。


「お前がこの弾に見合うレアアイテムをドロップしてくれることを願う」


 赤く染まっている弾に切り替える。思考を巡らせるだけで銃の弾は自動的に通常弾から血弾へ切り替わった。血弾は二十発程度。ただ、その弾は普通の人の血では意味をなさない。

 俺は二十歳になったとき城で定期検診を受け、血を採取された際に血液型はAでもBでもOでもABでもないといわれ、しまいには医者からは不明と言われた。最初に医者が不明などと言ったときはさすがに驚いた。不明ってなんだよ、と。でも、そのことが理由で城内ランクもなぜか跳ね上がった。今となっては調べようにも無理だが……

 それから自分自身の血が弾として使えると気づくのはかなり後になってからだ。


 俺が打った血弾は通常弾のスピードのおよそ三倍、デビルハウンドのリーダーは少しも反応できずに息絶えた。残り十九発。リーダーの腸を抉ったがドロップレアアイテムなし。くそっ。

 なるべく近寄りたくは無かったが血だらけの男に接近、弾が無くても他に何かないかを探る。


「……オーブも持って無いのか、弾薬が無ければオーブも無い」


 ある程度良い服着てるから色つきのオーブを持っていても良いはずだったんだが、とんだ無駄弾を撃ってしまった。

 俺は溜息をついてその場から離れる。

 

「あ、あのぉ~」


 突如かけられた声に俺は思わず声をあげてしまう。

 ったく消え入るような声で話すな。

 しかし振り向くと、意外に可愛らしい女の子がそこには立っていた。

 外見は金髪ふんわりロングヘアーの白色人種で俺の肩くらいの身長だ。とにかく低い……百六十センチ前後くらいだろう。

 それでいて体つきが良い、歳は十七くらいだろうか。


「何のようだ」


 なるべく怖がらせないように喋ったつもりだが青い瞳に涙を滲ませてしまった。

 俺はそんなに怖いのか……


「あ、あの。さっき、戦ってたのを見て、あの、もし良かったら……」


 仲間になってくれ、とでも言うつもりか……

 誰かと協力するのは勘弁してほしいところだが


「何か目的があるのか」


「あ、えっと……グランドエリアまで……案内を、して、ほしいんです」


 消え入る声で話すなって、聞こえづらいぞ……

 それにしてもグランドエリアまでの案内って一体どういうことだ。

 ダウンフォールで生活しているならそれなりに強いだろうし、もともとグランドエリアで住んでいるなら道が分からないなどまずありえない。そもそも女の子一人でこんな危険な場所に来るか普通……

 

「どこ住みだ」


「ダウンフォールの西区です」


西区っていうとダウンフォールで言うところの比較的安全な場所だな。


「銃は」


「持っていません」


 馬鹿かこいつは……丸腰でダウンフォールを歩いてきたのか。

 こんな綺麗な子が護衛なしで来るような場所では無いし、なにしろ西区から俺がいる中央区はゴブリンの存在も確認されている。俺にとっては雑魚も同然だが、知能の高いゴブリンとかにこの子が出会わなくて本当に良かったなと言いたい。

 遭遇したら彼女の貞操は呆気なく無くなっていたであろう。巣に運ばれて永遠に……いや、それ以上考えるのはよそう。


「なら案内してやる。ついて来い」


「あ、ありがとうございます!」


 こんな子が汚されている所なんて見たくないからな。それに協力じゃないから大丈夫だ。

 それからというものの、さてどうしたものか……先ほどから笑顔で話しかけられる。

 気に入られたのか?

 

「あのあの、その体中をクルクル回ってるのってなんでしょうか」


「ああ、周っているこれは銃弾だ。それから浮遊してるこのシステムはグラビティマガジンと呼ばれるもので、本来銃にはマガジンと呼ばれる弾倉をここに取り付けなければならない。しかしこのグラビティマガジンは……略称はGMな? マガジンを取り付ける必要が無く、体の回りを周りながら銃本体に自動装鎮される」


「邪魔にならないんですか」


 確かに相手に銃を構えると腕から銃弾の収納ケースが取り付けて腿のところまで螺旋状に回って入るが邪魔ではない。


「その心配はない。どんなに激しい動きをしても体から均等に離れているうえに触れることは一切ない。何もかもグリーンエトワールのおかげだな」


「あの……グリーンエトワールってなんですか」


 あまりに無知すぎる。ダウンフォール暮らしでグリーンフォールを知らないだと!?

 箱入り娘なのかどうなのか知らないが笑われるぞ……


「ほら、空気中に緑色の球体が浮かんでるだろ、それに触れて見ろ」


 空気中のいたるところに浮かんでいるのに疑問に思わなかったのか、こいつは……


「はい……あれ? んっと……さわれないです」


「そう。それがグリーンエトワール。肉眼で見えるが触れることが出来ない。瓶などを使って採取するしか方法は無い。ちなみにお前が今から行こうとしているグランドエリアの地表はこのグリーンエトワールが元になってできている。いまから百年前から作り続け五十年ほど前に完成した」


「勉強になります」


「お前は何でそこまで無知なんだ?」


「鞭?」


 こらこら蔦に指をさして首を傾げるんじゃない。

 話の内容からわかるだろ……


「違う。あまりに知らなさすぎる。ダウンフォール暮らしだったらさすがにグリーンエトワールの知識はあっても良いはずだ」


「そう……なんですね」


「そうだ。常識だぞ」


「常識……すいません。私、あまりそういうの知らないんです。両親もいないので聞くことも出来ずに……あ、いえ聞くことは出来たのかもしれませんが、一人に話しかけるだけでも酷い緊張がありまして」


 それであの時あんなにもおどおどしていたのか。

 それにしても…………両親がいない、か。


「それは悪かったな。ちなみに俺も両親はとうに他界している。……そういえばお前の名前は?」


 重い話はあまりしたくないから聞き忘れていた名前を聞くことにした。


「あ! 申し遅れました。私の名前はタンドレス・シャルールです」


 頭をこれでもかと下げる。前屈と見間違える挨拶だな。

 とにかく腰の低い奴だ。


「良い名前だな。俺の名前はリオン・シュタルクだ。リーシュと呼んでくれるとありがたい」


 ついついこの子には本名を教えてしまったが、なぜか嘘をつく気にはならなかった。まあ名前と性格から警戒する必要性は無くなっていたが。


「リーシュさんですね。私は……シャルールとお呼びください」


「わかった。シャルールな、ちなみにどうしてグランドエリアに行くことになったか話せるか」


 もちろんですと言うと嬉しそうに話し始めた。


「このたびはですね。お引越しすることになったのでグランドエリアというところに行くことになりました」


「引っ越し……ということはここにはもう戻ってこないのか」


「そうなりますね。長い間お世話になったんですけど」


 それからしばらく森の中を歩いた。ダウンフォールは全体的に荒廃した街は木々や苔に覆われ『緑一色の街』とでもいうようなところだ。数十年前はちゃんとしてた街だったのだろうが、幻想的というかなんというか……日の光は地上の光から直接届いている。のかどうかはわからないがある程度明るい。

 とはいっても暗いところはとことん暗い。危険区域には闇の森とも呼ばれる場所がある。

 荒廃した街、いや森に近いか、いくつかの家を大木が突き破って"街の中に木"ではなく"森の中に街"って感じだし。そんな場所を歩いているのは俺とシャルールだけ、ここは人通りが少ない場所でもあり敵もあまり出現しない。

 シャルールの事を思っての道の選択だ。グランドエリアへの道は近道を通っていけば十分程度で着くが、その間に通る洞窟にはクマ型のキングシュティーアがいる。俺一人ならなんなく通れるがシャルールと一緒だと小型モンスターに襲われかねない。

 この道は三十分コースとでも言おうか、お散歩に丁度いい。

 はずだったのだが……


「あそこにだれかいますよ。女の人でしょうか?」


 シャルールは体つきからそう判断したが相手は仮面をつけていて俺はわからない。隣のシャルールは手を振っているが反応は無い。

 外見からは露出した肌が黄色人種と思わせる。そして黒髪ストレートの彼女の髪がサラサラと風に乱れている。

 彼女の事を観察しているといきなり敵意剥き出しに襲ってきた。


「え? 私、なにか変な事してしまいましたか? というよりあの人、リーシュさんと同じようにGMでしたっけ、持ってますよ」


 確かにあれはGMだ。日の光で煌めく銃弾が体の回りを周っている。

 収納ケースが足首辺りについているために長い螺旋が見える。


「あれは城の最高ランクの者にしか与えられないはずなんだが」


「それなら知り合いさんですか」


「どうだか、少なくとも俺が居た時にはあいつみたいな奴はいなかった」


「居た時? 今は違うんですか」


「そうだ。濡れ衣を着せられ城から追放された。というか危ないから引っ込んでろ!」


 短い悲鳴とともに俺に突き飛ばされたシャルールは知らない家の中に転がり込んだ。ひとまずシャルールには危害を加えないようしなければ、こいつの目的がなんなのかが気になる。


「お前、何者だ」


 返事は銃弾で返ってきた。

 その攻撃を重力操作でかわし弾を打ち返した。

 その瞬間、シャルールに「い、今のなんですか!」と言われたがとりあえず無視する。

 俺もとりあえず撃ち返すが同じように避けられた。

 血弾を使っても良いが……もし女の子だったら傷つけるのは、いや避けられたら勿体無いからだ。

 俺がいろいろ考えていると相手は攻撃を止め何かを喋った。


「ルシアン国の者か?」


 確かにそう言った。俺は短く「ああ」とだけ返答すると敵から戦意が消えた。

 相手のGMはすでに機能していなかった。

 というか中心区から直径五十キロはルシアン国の領土なんだが……


「お前は何者なんだ」

 

 俺は再び聞いてみる。今度は返事が返ってきた。


「我か、我はサンジュ国の者だ」


 直後、再びシャルールから「もう大丈夫ですか」と言われる。

 もし違うならその瓦礫からひょっこり出ている頭が吹っ飛ぶところだ。

 それにしてもサンジュ国の奴だなんて珍しい、ダウンフォールに領土もなにも無いがこうして対面するのは初だった。


「あの、女の人ですか?」


 そしてシャルールの一言目がそれ。声で分かるだろ! 失礼極まりない。


「そうだ。我は女だ。お前……こいつの連れか?」


 小指を立てながら俺の方を見てくる。恋人かどうか聞くに言葉を発しない辺り、初心なのかどうか……案外仮面の下で赤面とかしていたら面白いんだがな。


「グランドエリアまで案内をしている。それだけだ」


「なるほど護衛か、いきなり攻撃して悪かった」


「全くだ。それでサンジュ国のやつがどうしてこんな場所にいる」


「我はサンジュ国の兵に追われていてな。こうして逃げている。理由は聞かないでくれ、とりあえず邪魔をした。また会えたらその時は……いや何でも無い」


 何を言いかけたのか気になるが、それだけ言うと彼女は去って行ってしまった。木を壁ジャンプのように器用に登って行き、家を越えてしまった。なんと身体能力の高い奴か、あ。GM持ってるならそういうことも出来なくもないか。

 その様子をシャルールも見ていたのかあの時の事を訊いてきた。


「あの、シュンッて感じなんだったんですか?」


 シュンッて、まあ例えるならそんな感じか。


「重力操作だ。俺が行こうとしているところを下に、俺が今いる所を上と過程し行動するとあのようになる」


 クエスチョンマークがたくさん出ているようにみえる。


「まあ落下するようなものだ。そこに少し力を加えてスピードを増す。そうするとあのような動きになる。慣れないうちは地面に突っ伏せながら凄いスピードで引きずられるが、慣れれば空中で存分にアクロバティックな動きが可能だ」


 王に見込まれた俺は、Sランクに昇格した時にグラビティシステムを体に直接取り込んだ。

 グリーンエトワールの固形物を取り付けるような作業だったらしいが違和感は全く感じない。

 今思えば恐ろしい事をされていたもんだ。


「へぇー。とにかく凄いんですね。流石です! リーシュさん」


 こりゃあシステムについてはまるでわかってないな。

 それにしてもこんなところで銃声鳴らしたからモンスターが寄って来てしまった。

 面倒だ。弾の無駄だし今日は出費が高くつきそうだ。

 

「あの牙に噛まれたらいたそーです」


 痛いで済んだら良い方だ。とにかく噛まれたら高確率でさっきの男のような姿になるだろうな。デビルハウンドは一度噛みついたらなかなか離そうとしないから。

 どうやらリーダー格のような奴もいないおかげで通常弾だけの消費で済んだ。残りは百発ほどか、あとで五百ほど補充しておこう。

 それから俺が獣の腸を掻っ切っているとまたしてもシャルールに聞かれた。


「その小っちゃくて丸い玉の様な物ってなんなんですか」


 これも知らないのか、まあこれのほとんどはグランドエリアで使う物だし、しょうがないな。


「これはオーブだ。グランドエリアで買い物をするときに使う。モンスターから採れる原理としては空気中に浮遊する。グリーンエトワールと呼ばれる……さっき話した奴な? それを取り込んだ草や肉、虫などを食べて精製されたと考えられる。ちなみにこれはホワイトオーブと呼ばれるもので大きさは一センチ程で価値は最低だ。だがある程度集めれば食に困ることは無くなる。お前にはとりあえず五十個ほど渡しておく」


「え、いいんですか……いえ、悪いですよ。道案内をしてもらったうえにこんな物まで」


「いいんだ。持って行ってくれ。俺はいつでも稼げるし、人の親切心は受け取っておくものだ」


 そもそもそのまま行ったら生活できないだろうに……


「……えっと、ありがとうございます。それにしても結構軽いんですね。五十個も入っているのに」


「まあそういうもんだ。オーブは軽くても価値は重いから大事に使えよ。あとはグランドエリアに行くにはパープルオーブが必要だ。これも持って行け」


 シャルールは再び前屈挨拶をするとグランドエリア行きのエレベータに乗り込んだ。すると上昇しながら何か思いついたように、あ! というと大体予想できていたことを口にした。


「あの、グランドエリアってどんなところなんですか」


 正直笑ってしまった。いろいろ知らないことが多いのはわかるが、それ最初に聞くべきことだろ。


「シャルールにとっては住みやすくて良い所だろうな。んじゃ元気で」


「元気で、だなんて……あの、また会えますよね?」

 

 なぜそんなに寂しそうな顔をするんだか……顔を見ながら俺は返事を返すことが出来なかった。もう会う事は無いだろう。俺はグランドエリアには行けないのだから。それにしても少々サービスし過ぎたか、ホワイトオーブの他に一ランク上のイエローオーブまで渡してしまった。

 

 ……まあ、俺の生活はなんとかなるだろ。


「さて、基地に帰るか」


 ポストの中には相変わらずあの人からの手紙が入っていた。


 【私はあなたの事を疑ったりはしません。いつかまた会えることを心から願っています】


 いつまで送ってくるつもりなんだか……俺はもうあの城には戻れないというのに。城内生活で一年間働いて貯めたオーブを全部使い果たして買った22口径の愛銃ベレアをテーブルの上に置きソファーに寝転がる。銃は軍用銃と呼ばれるものなら一日敵を倒せば買えるが、性能の良い銃はバカ高い。性能で比べると軍用銃だと攻撃力アタックがB吹き飛ばしブローオフD連射速度ファイリングスピードがC集弾性能


◆ベレア◆

攻撃力

アタック

吹き飛ばし力

ブローオフ

連射速度

ファイリングスピード

集弾性能


装弾数



 ……暇だ。


 でも今日は弾を使いすぎたし疲れたから寝よう。


 

 次の朝の事、朝からポストにめずらしく手紙が入っていた。その手紙の内容はグランドエリアに嫌でも行かなくてはいけない理由が書かれていた。


 【王が呼んでいる。直ちにエステレア城に来い】


 赤い紙に短い文面、でも絶対王政であるルシアン国ではこの手紙を無視できない。無視した先に待つのは死だろう。

 しっかし、まさかまたあの城に行くことになるとは予想していなかった。これでは前日の手紙の主の願いがもう叶ってしまったではないか。シャルールにもあんな態度とっちゃったし……なんか気乗りしないな。

 でもまあ早かれ遅かれ、俺はいつかあの王と、俺に関わった数人の兵を殺さなくてはならない。いや、殺すだけでは済まさない。

 俺がこんな場所で行動しているのも全て復讐のためなのだから。

 



次回投稿日は来年の一月中になります。

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