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紫電の剣士  作者: 鷹峰悠月&若臣シュウ
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プロローグ2

 状況が変化したのは、陽が西へ傾き、夕闇が足を忍ばせた頃合だった。

 今は使われていない小さな砦で、部隊は夜を明かすことに決定する。

 しかし。

 不意に違和感を感じ、ラグナは立ち上がった。

「……焦げ臭い……?まさか、」

 砦から飛び出すラグナ。クリスもそれに続いた。

「森が……」

 乾いた声で、そう漏らすクリスの頬を、朱の色彩がちらつく。

 夕暮れ時だというのに、東の空が――森が、朱い。その上を、暗雲にも似た煙がもうもうとたちこめている。

 燃えているのは東の森だけではない。周囲を森林で囲まれたこのクリエ砦は、既に四方から火の手が上がっていた。

「くっ……総員、砦を脱出!

 確か南東に川があったはず……森の中でも火の手が薄い場所を突破し、川を目指すんだ!」

「は、はい!隊長!」

 南東の方角を指差すラグナ。部下達が全員砦から出たのを確認すれば、一目散に、黒煙立ち込める森の中へと。

(こちらの動きが知られていたということか……?)

 風はない。自然な火災と考えるには、余りに不自然だ。だとすれば、何者かが火を放ったとしか考えられない。

「この燃え方……恐らく、魔法を使う者が敵の中にいるな」

 クリスがラグナに囁きかければ、彼もまた、ああと頷く。

 ――厄介だ、と。内心舌打ちをしたかも知れない。

 暑さに意識が眩みそうになりながら、部隊は一路、森の出口を目指した。

 そして。

 何とか森を抜けた頃には、皮膚のあちこちが火傷で腫れ上がっていた。

 視界が一気にひらける。そこには、

「――な、」

 ずらり。傭兵部隊と思しき一団が、彼等を待ち受けていた。

 引き返す道は、既に火の手で塞がれている。

「強行突破――しか、なさそうだな」

 ちいさく、青年の呟きが煙に溶けただろうか。

 傭兵部隊の指揮官と思しき人物は、にいっと粘着質な笑みを浮かべた。

「『漆黒の聖騎士』に『紫電の剣士』……

 その首を手土産とすれば、私の位も約束されようというもの」

 ラグナの盲目の瞳が、ふと鋭くなる。

「生憎、貴様にくれてやるような首は持ち合わせていないな」

「ほう?それだけの人数で、何をしようというのだ」

 しかし男の問いには答えず、彼はクリスに目配せひとつ。

 ――一気に突破するぞ。

 クリスはこくり頷くと、左手を剣の柄へと伸ばした。

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