表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紫電の剣士  作者: 鷹峰悠月&若臣シュウ
12/34

二、パニッシャー(8)

 そうして、セリオによる爆撃がひとしきり止んだのは、クリスの部屋に大穴が開いてから十数分後のこと。

「ふぅ……お茶が美味しい」

 その間クリスはといえば、目の前で繰り広げられる攻防を他所に、香茶を淹れて呑気に啜っていた。

 じと、と訝しげなセリオの視線を感じると、彼女は手にした杯を一瞥、相手に差し出す。

「君も飲むかい?」

「…………。お前、何処までがマジだ」

「何処って?」

 こきゅ、と首を傾げるクリス。質問の意図がつかみかねたようである。

 クリスのマイペースっぷりに音を上げたのか、セリオは両手で頭を抱えると、もういい、と短く告げた。

 物騒な割には、結構苦労症なのかも知れない。

「あー……こんなに壊してもうて。修繕費、幾らかかると思っとんねん」

 風に身を震わせ、がくりと肩を落とすラゼル。原因が自分にあるという認識があるかどうかは疑わしい。

「壁とかの修理なら、この間入った人が引き受けてくれるって。

 ええと、ラゼル兄ちゃんと同じ青い髪の人」

 いつからそこにいたのか、ディックが廊下を指し示す。

 エメラルドを流したような色の髪に、セリオと同じく紅い瞳の、小柄な少年。彼はクリスに向き直ると、ぺこりと頭を下げた。

「はじめまして。僕、ディックです」

 紅い瞳を持つ者は紅い月の夜に生を受けたとか、紅い月には邪悪なチカラがあり、その夜に生まれた子供は悪魔の化身であり災いを招くとか、そういった伝承が大陸各地に広まっている。

 クリスは元々迷信深い方ではなかった為、そういった言い伝えには懐疑的であったが。珍しいものが異端、邪悪であるとレッテルを貼られるのは人の世によくあることだ。クリス自身、珍しい銀髪でからかわれたことは幼少時代に幾度もあった。

「ディック……では、君が若頭か。

 僕はクリス。宜しく」

 ほかの面々もぐるりと見回し、簡単に自己紹介をする。

「得物は剣か……せや、丁度ええ。新入り、ちーと面貸せや」

 何かを思いついたように、ラゼルが外を眺め、にやりと笑う。

「ラゼル?何企んでやがる」

「人聞きの悪いこと言うなや。アイツの相手させたろ思っただけやがな」

 アイツ、という言葉に、なんとはなしに窓を見遣るクリス。その人物がそちらにでもいるのかと思ったのだろう。

「ほな行くで、新入り」

「『クリス』さんだよ!ラゼル兄ちゃんっ」

「あー、すまんすまん。悪いようにはせえへんから、ついてき。クリス」

 にっこりとクリスを手招きするラゼルに、セリオは舌を出し、苦い顔をする。

 クリスは青年に従い、ひとつ頷くと彼の案内で、中庭へと向かった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↓ランキング参加中 気に入ったらぽちっとお願いします
アルファポリス(週1回)
NEWVEL
長編小説検索Wandering Network

ブログもだらだら更新中!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ