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お掃除スタッフの内緒話  作者: すみっこのラスカル
第4話 経理部の裏側
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 経理部の清掃は、終業後が決まりだった。日中は人の出入りが途切れず、電話も鳴り続ける。また、数字を扱う部署は、どうしてもデスクの上が散らかりやすい。だから一日の終わり、誰もいなくなった時間にまとめて入る。

 その日も、あたしは廊下の照明を半分だけ点けて、経理部に入った。コピー機の前には、まだ温かさの残る紙が置かれている。誰かが、ついさっきまで使っていたのだろう。紙を揃えてゴミ袋に入れようとして、英文の書面が目に入った。並んだ数字の横に、見慣れないアルファベットが並んでいる。金額だけがやけに大きく、一桁間違えたのかと思ったぐらいだ。あたしはその書面を裏返して、他の用紙と一緒にゴミ袋に入れた。読む必要はないし、読めたところで意味は分からない。

 この会社には社員貯金という制度がある。毎月、希望した人の給料から一定額を天引きして、会社がまとめて預金し管理してくれるらしい。いくらかのまとまった金額になると、自動的に定期預金にしてくれるそうだ。銀行に行く手間が省けるから、長く勤めている人ほど利用しているようだ。

 最近、その経理部で取引銀行の担当者の顔をよく見かける。きちんとしたスーツ姿で、靴の先にも曇りがない。夕方、終業前の遅い時間、受付を通らずにまっすぐ経理部に入っていく。総務の人が一緒のときもあったが、いないときのほうが多かった気がする。

 あたしが経理部の清掃に入ると、柳田課長の席の周りだけ、明かりが点いていた。あたしは愛想笑いを浮かべて声を掛けた。

「今日も残業ですか?いつもたいへんですね」

柳田は一瞬驚いたようにふり向きながら、開いていたエクセル画面の上からインターネットの検索画面を被せて隠した。

「あっ、ああ、青木さんか、ご苦労様です。青木さんこそ、終業後の時間はたいへんだね」

「いえいえ、毎日じゃないですから。それに夜間手当も出ますしね」

あたしは愛想笑いをさらに強めたが、検索画面で隠されたエクセル画面上に並んだ数字へカーソルが動くたび、その色が変わっていたのを見逃さなかった。

 ある日の夜、シュレッダーの屑がいつもより多かった。紙は細かく裁断されていて、元の形は分からない。ただ、その中に、厚手の紙が混じっているのに気付いた。銀行名が印字されていた。あたしはそれも一緒にまとめて捨てた。

 そのころから、柳田の様子が少し変わってきたように思える。昼休みに席を外すことが増え、スマホを持って屋外に出て、誰かと笑顔で話していたりするし、終業時に左手の指輪を外して、上着のポケットにしまってから、退出する日も何度か見ている。


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