8話 元に戻ったけど、パパ達喧嘩?
「おにいちゃ、しゃいごだけ、おりる」
「大丈夫か? 俺がちゃんと下まで連れて行ってやるぞ?」
「しゃいごやる!」
「そうか……」
「フッ、残念だったな。お前の運び方が悪かったんじゃないか?」
「は? 何だって?」
「おにいちゃ、おろちて!!」
もう、お兄ちゃん達お話ししてないで、ちゃんと僕を降ろしてよ。最後だけでも練習。これも飛ぶ練習になると思うんだ。
エリオットお兄ちゃんが、なんだか少し残念そうな顔をしながら、僕を1階の階段の一番下の段で、そっと下ろしてくれたよ。うん、体が重いけど、思いっきり飛んでみよう!!
「ちゃあぁぁぁ!!」
僕は思い切り叫びながら、階段から飛ぶようにジャンプしました。……うん、ジャンプしたの。でも……。ちょっとだけ前にジャンプしただけで。そのあとは地面に落ちて、コロコロ転がっちゃったよ。
それで転がって止まった時に、ポンッ!! 僕は人の姿に戻りました。
「いちゃちゃ……、ありゃあ、ママ!! もどっちゃ!!」
「ルー!? 大丈夫か!?」
「すぐに治癒師を!?」
「お前達落ち着きなさい。アレックス洋服を」
「はっ、こちらに」
「マリアベル、ルーパートはどうだ?」
ママが僕が洋服を着る前に、怪我をしていないか、とっても痛いところがないか、調べてくれて。そのあとササッと、ヒールをしてくれました。ヒールは回復魔法の中で1番簡単な魔法で、ちょっとの怪我や、痛いところは、ヒールですぐに治っちゃうんだよ。
ママはヒールは使えるから、いつもすぐに僕のことを治してくれるんだ。難しい回復魔法は、治癒師っていうお医者さんみたいな人達がいて、その治癒師さん達が使えます。
「もう痛いところはない?」
「うん!! ない!!」
「そう。あなた大丈夫よ」
「そうか」
「母上、本当に大丈夫ですか?」
「もう1度、ヒールした方が良いんじゃないか?」
「はぁ、大丈夫よ。さぁ、ルーパート、こんな姿で着替えながらになるけれど、お父様達に行ってらっしゃいをして」
「うん!! パパ、おにいちゃ!! いってらっちゃい!!」
「いや、私がきちんとルーパートに洋服を着せてから行くので、父上は先に現場へ」
「いやいや、俺が着せる。俺が階段に降ろしたのが原因だからな。最後まで俺が」
「エリオットは信用できません。なので私が」
「何だよ兄さん! 俺がやるって!」
「いいえ、私が……」
「ならば私がやろう」
パパが僕の洋服を持ちます。でも。
「あなた! レオンハルトも今日は忙しいのでしょう? もう出かけないと、それこそ早く帰って来られずに、ルーパートと遊べなくなりますよ! それにエリオット、あなたも今日は朝から騎士団での訓練でしょう。もう行かなければ遅刻するわ! ルーパートのことは私に任せて、さっさと出かけなさい!」
「むっ、そうか」
「……分かりました」
「ちぇっ、いつも母さんばかりずるいよな。俺もルーパートの世話したいのに」
僕はパンツを履きながら、パパとお兄ちゃん達に手を振ります。パパもお兄ちゃんも、ちゃんとお仕事行かないとダメだよ。
「いってらっちゃい!!」
「うむ、行ってくる、早く帰ってくるからな」
「お土産を買ってこよう。うん、そうしよう」
「早く訓練終わらせて帰ってこようっと。で、一緒にお茶をしよう」
「お茶……、先に帰らねば」
「いや、俺の方が先だね」
「良い加減にしなさい!!」