64話 やっと魔獣さんとお話しできました
「いいか、絶対に私よりも前に出ないように。ルーパート様は私の洋服の中へ」
「あい!!」
僕はすぐに、コンラッドの洋服の、ポケットの中に入ったよ。これからみんなで、慌てていなくて、みんなを止めようとしている魔獣さん達の所へ行きます。
『みんな、話しは僕がするからね。モックは途中で違う話しをしようとしない事。シエラとウルーはくだらない事で喧嘩しない事』
『分かったっチュ』
『私からは別に喧嘩なんかしないわよ。いつも喧嘩を売られるから買うだけよ』
『……俺は黙ってる』
『……うん、ウルーはそれが良いね。何か言って、また絡まれたら大変だもん』
『何か言った?』
『何から話すかな? って言っただけ。じゃあ行くよ!!』
ペッチャがコンラッドの足先を叩いて。前へ進めー!! って手でやりました。歩き出すコンラッド。ポケットから下を見たら、ペッチャ達が後ろからゆっくり歩いてきます。
そしてすぐに魔獣達の近くへ着いた僕達。止めている魔獣は後ろを向いていて、僕達が近づいた事に気づいていないみたいでした。
「この魔獣が、気配も匂いも気づかないはずがないのですが」
『みんなを止めるのに気が入いってて、気づいてないんじゃない?』
『たぶんそうっチュ』
僕はすぐにコンラッドに、みんなが言った事を伝えたよ。ペッチャは魔獣さん達とお話しする係。僕はみんなのお話しを、コンラッドに教える係。
『よし、それじゃあ声をかけるよ!』
「おはなしする!」
「分かりました」
『お~い、こんにちは。あの、話しがしたいんだけど? ねぇ、聞こえてる?』
『お前達、落ち着かないか!! 人間の子供が、『こんにちは』と言っただけだろう。確かに魔獣に変身して、一瞬俺も驚いたが。それに、しっかりと考えてみろ。お前達なら変身する人間について知っているはずだ! 驚く事ではない!!』
『あの~!』
『こんな慌てている場合ではないだろう。向こうと話しをしなければいけないし、もしかしたら、というかおそらく、こちらが謝らないといけないんだぞ!』
『ちょっと! 僕の声、聞こえないの!?』
『それに、まだまだやる事も、調べる事も山程あるんだ。こんな事でパニックになっていてどうする。大体フルール、連れてきた張本人が一緒に慌ててどうするんだ。ほら止まれ!』
魔獣さんが妖精さんをパクッ! と咥えて止めたよ。ちょうどその時、ペッチャが大きな声で話しました。
『だ~か~ら~、僕の声、聞こえないの!? 話しがしたいんだけど!!』
バッ!! っと妖精さんを咥えたまま、後ろを見た魔獣さん。僕達が真後ろにいたから驚いたみたい。おおっ!? って言いながら少しだけ後ろに下がったよ。でも他の魔獣さんみたいに、慌てて走りまわりません。そして初めて、僕達とお話ししました。
『お、おう。あー、何だ?』
『何だ? じゃないよ。僕さっきから呼んでたんだけど? 話しがしたいってさ。僕達が何でここに居るか? というかあの感じだと、そっちが僕達に何かしたんでしょう? それならどうして僕達をここに連れてきたのか、しっかり話しをして欲しいんだけど!!』
『あ、ああ。もちろんだ。すまない、ちょっといろいろあって、そのせいでパニックになってしまったようだ。いつもはこんな慌てないんだが。俺も最初は驚いてしまったからな。今すぐ皆を止めるから、待っててくれ』
ふぃ、やっと魔獣さんとお話しできたよ。
待っててくれって言った魔獣さんが、咥えていた妖精さんを、ペッてして下に下ろしました。それから大きな声で。
『ワオ~ンッ!!』
って鳴いたんだ。
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