62話 あっちこっち、慌てて走り回る魔獣さんと妖精さん達
僕がこんにちはって言った途端、コンラッドやモック達を見ていた魔獣さんと妖精さん達が、バッ!! っと僕の方を見てきました。僕ちょっとだけビックリしちゃったよ。でもその後に、もっとビックリする事が起こったの。
今までずっと驚いた顔をして、ぜんぜん動かずに、鳴かなかった魔獣さん達。でもその中の柴犬みたいな魔獣さんが、
「ワオ~ンッ!?」
って鳴いたの。そうしたら、わんわん、キャンキャン、ニャーニャー、ギャウギャウ、ガーガー、ブーブーって、鳴き始めて。驚いた表情のまま、集まっていた魔獣さんの半分以上が、あっちにそっちに、行ったり来たり慌て始めたんだ。
コンラッドが剣の持つ所、グリップって言うって、お兄ちゃんに習いました。そのグリップを握って、剣を鞘から抜こうとしたよ。でもそれを、みんながいきなり慌て始めたのを見て、とっても驚いていたモック達が止めました。
「襲ってこようとしているのではないのか!?」
『チュウッ!!』
『キュイィィィ!!』
モック達がブンブン顔を振ります。
「じゃあ何で、こんないきなり動き始めたんだ!!」
『チュウチュウ!!』
『キュキュイ!!』
「一体何なんだ!?」
僕、今魔獣さんに変身してないから、モック達が何を言っているか分かりません。でもずっとコンラッドの手を押さえて、剣を抜かないようにしてるの。
う~ん、僕、変身した方が良いかな? そうしたら何で今、みんなが慌て始めたのか分かるし、どうしてみんなが集まっているのかも、お話しを聞けるでしょう?
なんて考えている間も、ずっと僕達の周りで、慌てて鳴きながら走り回る魔獣さんと妖精さん達。慌てなかった魔獣さんと妖精さん達は、慌てているみんなを止めようとしています。
と、その時でした。ぽんっ!!
「ありゃあ」
僕、勝手に変身しちゃったよ。この足とお腹、フローリットバードに変身かな?
「みんなぁ、ぼく、ふろりっとばーど?」
僕はモック達に聞いてみました。でも。
『『『『……』』』』
ん? どうしたのみんな? さっきの魔獣さんや妖精さん達みたいに驚いたお顔して。それに何見てるの?
そういえば、さっきまで鳴いていた魔獣さん達の鳴き声が、また聞こえなくなってるし、バタバタ走ってる音も聞こえなくなったような?
僕はモック達が見ている方を見ます。あらぁ、また魔獣さんと妖精さん達が、さっきまでみたいに、驚いた顔して固まっちゃってる。もう、みんなどうしたの?
あっ!! さっきのオオカミさんに似てる魔獣さん。さっきよりも口を開き過ぎてる。ダメだよそれ以上は、本当に口が壊れちゃうよ!
「あのまじゅさん、くちこわれそ。もいっかいごあいさつしたら、なおるかな? こんどはぼくのことば、ちゃんとわかるもんね」
『う、うんチュウ?』
『た、たぶんな?』
モック達がなんとも言えない顔をしているけど、まっ、いっか。
「えと、はじめまちて!! こんちゃ!! ぼく、るーぱーと・くりゃうぜるです!! よろしくおねがいします!!」
僕が挨拶し終わると、し~んとなりました。どう? こんどはちゃんと分かるでしょう?




