40話 面倒な呼び出し(ヴィクトル視点)
「さて、こんなところか?」
「ああ」
「こっちも新しい情報としては、こんなところだ」
「……」
「何だよ黙って? 他に何かあるのか?」
「……これだけのために呼んだのか?」
「は?」
「私の方からの報告はこれだけ、お前の方からの情報も、そこまで重要ではなく、手紙で済んだと思うが? これだけのために私をここへ呼んだのか?」
「呼んだのかってお前な。最後に会ってから、どれだけ経ってると思ってるんだよ。ルーパートが2歳になる少し前だぞ? いい加減1度はここへきてもらわないと、他から文句が出るんだよ」
「それは誰だ? いつもの者達だろう? あれらは放っておけば良い」
「いやいや、そうもいかないだろうが」
「ふん、直接何も言えない者達が、文句だけは言ってくる」
「それでも俺の国の奴らだからな、完璧にはきれん。お前も分かるだろう。グラントリーやハドスンからも、そろそろ本当にお前を呼べって言われたんだよ。さすがに、あまりにもお前がここに来ないのは、いろいろとまずいってな。何せお前の所はこの国の要だからな」
「国よりもルーパートだ」
「だからそのルーパートを守るためにも、俺とお前の関係をしっかりしとけってよ」
トントン。その時ドアがノックされ、今名前のでたグラントリーがやってきた。
「ようやく来たか」
「予定ではなかった」
私は今この国の中心、チェンジニアへ来ていた。この国の代表で私の幼馴染の、アルベリク・ヴァルト陛下に呼び出されたからだ。
「まったく、ルーパートが生まれてからのお前と言ったら、まったくといって良いほど、こちらかの呼び出しに答えず。ようやく来たと思えば、1日もせずに戻ってしまって」
「私は、ルーパートが1番になったと伝えておいたはずだが?」
「おいおい、俺が目の前にいるのに、それを言うか?」
「家族全員、同じ思いだ。それに仕事はしっかりとしている。問題はないはずだ」
「そういうことではない。余計なことを、余計な者達に探られぬよう、最低限の謁見は必要だと言っているのだ。確かに、お前達は力を持っている。今は誰も手出しできんだろう。だが、それでもお前達を陥れようとする者達はいる。それを忘れるな」
「……話しが終わったのなら私は帰るぞ」
「お前なぁ。あぁもう、分かった分かった。帰れ帰れ。お前はいつからそんな親バカになったんだよ。大体俺とお前達の仲なのに、俺はまだルーパートに会ったこともないんだぞ?」
「お前にお合わせるとルーパートは減る」
「あ? なんだそりゃ。別に俺に会ったって問題ないだろう」
「ダメだ。お前は余計な事をルーパートに教えかねない」
「俺はこの国の王だぞ?」
「何度も私に迷惑をかけた腐れ縁だ」
「赤ん坊の頃からの付きないんだから良いだろうよ」
「今、こうしている時も、ルーパートが何か新しい成長を見せたらどうしてくれる。それに何か新しいことに挑戦していたら。私はそれを見逃したのだぞ」
「はぁ、お前も相変わらずだな。……よし、俺もお前と共に行くぞ!!」
「は?」
「陛下!! それは!!」
「行くなら何もない今だろう。それに俺がお前の所へ行って、俺とお前の関係をしっかり見せれば、煩い連中も少しの間、また静かになるだろう。これは決定だ!! 勝手に帰るなよ。すぐに用意をしてくる」
「陛下!!」
バタバタと2人が部屋から出て行く。あいつが私の所へ来る? もしここで無理やり帰ってしまってもあの調子だ。必ずこちらへ来るはずだ。
ルーパートに悪影響が出ぬよう、気をつけなければ。そして早く帰って、ルーパート達を頭や肩に乗せよう。




