27話 可愛いルーパートを守るために私ができる事(その日の夜のレインハルト視点)2
「よし、分かった、このことは父上に報告しておく」
「まぁ、父さんの方も、調査は終わってると思うけどな。俺達以上に早くから動いていたからな」
「動いていなかったのはお前だけだ。私は父上に付いて、何かあればすぐに調査をしてきたからな」
「それは兄さんが、俺よりも先に生まれて、俺よりも先に学生生活を終わらせて、父さんの仕事の手伝いを始めたからだろう? それを威張られてもな」
「フンッ、ならばお前も私と同じようにすれば良かったのだ。まぁ、お前の学力では無理な話しか」
「っんだと?」
「私はルーパートのために努力をし、2年早く、学校を卒業しただけだ。そのおかげでルーパートのために、時間をかける事ができる。お前はそれをしなかっただけのこと。だがお前も今年卒業したのだ。今後は私を見習って、ルーパートをしっかり守るんだな」
「けっ、剣ではルーパートを守れるほど、強くないくせに」
「何か言ったか?」
「別に! じゃあ俺は戻るぞ。……って、本当邪魔だなぁ。ルーパートが兄さんのぬいぐるみを喜んでるから仕方ないけど、少しは片付けろよ」
「報告が終わったんだから、早く出ていけ。私は続きをやらなければ」
「……これ、あんまり聞きたくないんだけど、何の人形作ってるんだ?」
「私の等身大ぬいぐるみと、半分サイズのぬいぐるみだ」
「げっ、やっぱりそうなのかよ!? んなもん作ってどうすんだよ。気持ち悪いな」
「何を言う、これはルーパートから頼まれたのだ。私が側にいると安心すると言ってな。父上と母上のぬいぐるみも作る予定だ。まぁ、大きさは私は2つ。父上達は1つだが」
「何だよそれ、じゃあ俺のも頼むよ」
「誰がお前のなど。おい、もう話は終わったんだ。さっさと出ていけ。私のぬいぐるみ作製の邪魔をするな」
「良いじゃんか、別に減るもんじゃないし」
「時間が減る」
「くそっ、よし、俺はおもちゃ屋に頼むか」
ブツブツ言いながら、エリオットが部屋から出て行った。私はすぐにぬいぐるみ作製を再開する。
エリオットには2つと言ったが、今私はある実験をしている。それは見守りようぬいぐるみの実験だ。
ルーパートに何かあった時、そう、今日のような事があった時に。誰かが緊急事態を知らせるよりも先に、ルーパート自身が危険な状態を知らせられれば、とそう思い。何か方法はないかと実験中だ。
ルーパートでも、しっかり持つ事ができるサイズにし。それに雷魔法を仕掛け、ぬいぐるみを強く握ると魔法が発動し、危険を知らせる。などという物を作り、実験している。
小さくて持たせやすいのならば、毎回持たせて行動させられるし。私のぬいぐるみにすれば、私はいつもルーパートと一緒にいる、ということになるはずだ。
コンコンッ!
「レオンハルト様、昨日の件で報告が。どうやら動き出したようです」
「分かった、すぐに向かう」
どうやら、先程のエリオットの報告ではないが、またよからぬ者が動き出したようだ。まったく私のぬいぐるみの作製を邪魔するなど。
これからルーパートは、今よりももっと可愛く成長し。そして魔法に関しても、他よりも素晴らしい魔法を極めていくことだろう。
そんなルーパートを、必ず守らなければ。私が認めた者でなければ、絶対に近づけさせはしない。
そのためにも私が、ルーパートの邪魔になる物、者は全て排除する。それが魔獣であってもだ。今日の魔獣達も、しっかりと調査しなければ。
私は立ち上がると準備を始める。うむ、今から向かい、害虫をササッと片付ければ。この時間ならばまだ、あの店が開いているはずだ。帰りに材料を買ってこよう。
今日友人になった、モコレットがかなり好きなようだ。ぬいぐるみを作ってやれば、もっと私のことを好きになってくれるだろう。
「レオンハルト様のお考えは、おおよそ察しがつきますが、まずはこのお部屋を片付けてからにしてください。それまでは新しい物のご購入はお控えくださいませ」
「そんな大量には買わないが?」
「それでもです。まずは片付けを。そして今作っている物を、作り終えてからにしてください」
私付きのグレイソンにそう言われてしまい。私は今回の買い物を断念することに。グレイソンから母上に報告が入れば、ぬいぐるの材料を買うどころか、作製まで禁止にされてしまう可能性がある。それは避けなければ。
私はこのイライラを、これから向かう相手に向けることにした。




