【第二章】「祝福の円陣、前進の誓い」
「——よし。これで、”ピラミッドの透壁”の解除ができたわ」
ピラミッドの最上層にて、マーレアは術式を解除する。
その瞬間、高い高音が鳴り響き——
「わあ…!なんか透明の膜みたいなのが剥がれました!おもしろ〜い!」
ニアが初めて見る光景に、ジタバタしている。
最上部はガラス張りになっており、砂漠全体を見渡せる絶景になっていた。
「…なんか、解除は思ったよりあっさりだったね。もう少し謎かけとかあるのかと思ってた。まあ、石球が転がってきた時はもうどうなるかと思ったけど——」
レクアがぽつりとつぶやく。
「……まだ、これは始まりに過ぎないわ。最初に言ったでしょう?——“デゼルト•ウェイの連続殺人事件”のことを」
刹那、空気が張り詰めた。
「……ニア、やはりこの先は危険です。いや、この前もかなり危険でしたけれど——。ですので、ニアは帰りなさい。…兄の願い、聞いていただけますか?」
「やだ!だってお兄ちゃん、ミローザ様になにするかわかんないだもんっ!」
そう言ってニアは、ぷいっとそっぽを向く。
「良いですか?あなたは12才なんです。この中で一番年下なのですよ?そんな危険な状況で、行かせられませ——」
「……レクアちゃんっ!助けて!お兄ちゃんがお兄ちゃんが〜!」
ニアはレクアの後ろに隠れて、アレンに向かってべーっと舌を出す。
困ってクロトを見る。
「いや、なんで俺のほうを見るんだよ……。俺は保育士じゃないぞ」
「でもほら、妹ちゃんニアと同い年なんでしょ?もしかしたら何かできないかな〜なんて…」
「じゃあ…しょうがないな!ニアを妹のシロナに合わせる事にしよう!あいつ友達がもっといっぱい欲しいって言ってたし、ニアとは気が合いそうだし——」
「…っ、それは逆効果だよクロトくん…!今、ニアちゃんをどうやって帰すかって話だったんだよ!?」
「俺の国では基本的人権の中に個人の意見を尊重するっていうのがあるんだ。だから、俺は法の元に動いたまでだ」
そう言ってクロトは笑うが、そんな法律が理由なのではなく、単にニアを説得するのがめんどくさくなっただけだろう。
「でも、普通に考えてこのパーティで危険な目になるわけなくないか?王女が二人もいて、元海軍に警察に護衛執事だぞ?…まあ、お前はちょっと例外だが——」
「なっ、私だって戦えるから!!」
私は頬を赤く膨らました。
「ニアだって戦えるもんっ!!」
ニアも続けて頬を赤く膨らます。
「ふふっ。まるで姉妹ですね」
ミローザがそう、優しく笑う頃には——
もう張り詰めた空気はなく、いつも通りの和気藹々とした空気に戻っていた。
——この先には、きっと今よりも過酷で厳しい未来が待っている。でもその分だけ、今の幸せが大きくなる。
私は、みんなの笑顔を見れるだけで十分だった。
「…では、行きましょう」
マーレアが意思表明をする。
「あっ、円陣組みましょーよ!こういう時には円陣を組むのが一番いいって、友達がいってたんだっ!」
「え…円陣?」
「あ…今、みんな怪我してるんでしたっけ…なら——」
ニアは、手を前に出した。
レクアもそれに続いて手を出すと、クロトたちも手を出して、上に重ねる。
「——みんな〜っ!私たちはなにがあっても、希望を望み、前進しよ〜!!」
「「「「「「おー!!」」」」」」
全員が、声を合わせて手を上に上げた。
——私たちの物語は、まだ始まったばかりなのだ。
第二章最終話を読んでいただきありがとうございます!
祝!第二章完結!
本当にここまで読んでくれてありがとう…嬉しすぎます!!
これからも全力を尽くして頑張っていきますので、応援よろしくお願いします!