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【第二章】「死にたくなきゃ、走れ!!」

「……ここが、岩の試練…?」

レクアが、あたりを見回した。

上には丸い吹き抜けがあり、柔らかな光を降り注いでいる。そして、左側には大きな砂時計が設置されていた。奥には、大きな長廊下があり、暗がりで向こうの方までよく見えなかった。一体、どこに繋がっているんだろうか。

「…ここに地図があるぞ」

クロトが、右側に貼られている石板を指差した。

砂時計が描かれた部屋に、長廊下。その先には——

「…これは、本のマーク?ミローザ様たちがいるところかな?」

けれども、長廊下と本の部屋には細い壁が描かれている。

「ってことは、この先は行き止まりということか?でもそれなら、なんでわざわざ廊下なんて——」

レクアは、天井を見上げる。

「この砂時計、なんで中央に置かなかったのかな?吹き抜けの下にある方が、光に照らされてよく見えると思うんだけど——」

吹き抜けの位置と、砂時計の位置は微妙にずれていた。

クロトは、違和感を感じた。

なんとなく、この部屋は長居するのは良くない気がする。どこか気分が悪いというか、平衡感覚が狂ってしまいそうだった。

「…っ、この砂時計、砂が傾いて落ちてないか…?」

普通の砂時計で、砂が斜めに落ちることなどあり得ないはずだ。なぜなら、それでは正確な時間が計れなくなってしまう。

もしかして平衡感覚が狂ってしまいそうなのは、地面が傾いている…?

(そもそも、なんで砂時計があるんだ…?)

このタイムリミットが終わると、なにが起きるのだろうか。砂の量が元々少ないので、後5分もしないうちに落ち切ってしまいそうだ。

吹き抜けとずれた砂時計、傾いた床、どこにも繋がっていない長廊下、本のマークの部屋と岩のマークの部屋とを隔てる、極端に薄い壁——。

そもそも、なぜ岩のマークなのだろうか。

クロトは、嫌な予感がした。

——ゴゴゴゴゴゴ…。

「なっ、なんだ…?」

今の音は——本のマークの部屋から聞こえた。

大丈夫だろうか。

「ねえクロトくん!さっきの地揺れのせいで、砂が落ちるスピードが速くなってる…!この調子だと、後1分も持たないかも…!」

まだ、頭の整理がつかないが——なんとなく、ここにいるのは危険な気がする。

「とりあえず、長廊下の方に逃げよう!」

「えっ、でも行き止まりなんじゃ——」

その瞬間。

——ゴォ…ゴゴゴゴゴゴ…!

大きな音を立てて、上から——大きな石の塊が落ちてきた。

「っ、危ない!!」

クロトはレクアを抱きかかえると、全力疾走で長廊下を走る。

頭の中で——最悪のシナリオが完成した。

さっきの砂時計は、岩が落ちるまでの時間を刻んでいたのだ。そして、地面が傾いているのは、大きな石の塊——石球を転がりやすくするためだ。そして長廊下は、行き止まりになっている。

——最初から、この岩のルートは詰みだったのだ。

『これはどれか一つしか正解がなく、他は危険なパターンだと思うのですが——。』

そんなことを月鈴が言っていたことを思い出した時には、もう手遅れだった。

(でも——あの壁は薄かった。もしかしたら…いや、こうなったら一か八かだ…..!!)

クロトは懐から手榴弾を取り出し、安全ピンを抜く。

「はあああ!!」

クロトの全ての力を腕に託し、手榴弾を思いっきり投げた。

——普通、手榴弾を投げた方向へ走るのは、自殺行為である。けれども、クロトたちはそうするしかなかった。

(あの手榴弾はそこまで威力は高くないが、爆発するまでの間が早い——もしかしたら、あの壁を突き破って本の部屋に逃げ込めるかもしれない)

——ピッピッ、ピピピピ——

「目を閉じろ!耳を塞げ!口を開けろ———っ!!」

爆発音と共に、クロトは壁の穴から、書斎へと飛び込んだ。


「お兄ちゃんっ、だめぇええええええ!!」

ニアの叫びが空間を裂いた、直後。

——ドォン!!

轟音とともに、書斎の側壁が爆発するように吹き飛び、土煙の中からクロトとレクアが転がり込んできた。

「っ、間に合ったか……!」

クロトがレクアを下ろし、息を切らす。

「えっ……!?」「今の……なに……?」

唖然とするミローザとアレン、そしてニア。

しかし、クロトたちがきたところで迫り来る壁を止めることはできない。

そう覚悟して、ニアは全身に力を込め、目を瞑る。

——潰されて、このまま死ぬんだ。

そう悟った。けれど——

その苦痛の瞬間は、いつまで経っても来なかった。

「ニア。もう、大丈夫…なようです」

ミローザが、そっとニアの肩を叩く。

「え……?」

迫り来る壁には、巨大な石球が挟まっていた。


「っ、あんたたち、無事だったのね…!」

そう言って、マーレアがこっちに走って来る。

「急いで試練を終わらせたので皆の無事を確認しにきたのです。急に大きな地揺れの音がした時は血の気が引きましたが——“岩”のマークにあった石球を、”本”のマークの迫り来る壁に挟んで食い止めるなんて、お見事ですわ」

ニアは、ポカンとしていた。

「地図を見た時、長廊下の先に書斎が描かれていたんだ。薄い壁に仕切られていたが、どうやら書斎の応急処置として、石球が作られていたみたいだな」

クロトが、みんなの疑問を紐解くように説明する。

どうやら、この出来事は偶然ではなく必然だったらしい。それにしても、あまりにも物騒な仕掛けだと思ったが——

「……”ナイトメア”に比べれば、まだこの防衛組織の方がマシだったようですね」

ニアは、ほっとため息をついた。

——私たちは、”ピラミッドの透壁”の攻略に成功したのであった。

第二章十話を読んでいただきありがとうございます!

ついにピラミッドの攻略に成功したレクアたち。

この先には、どんな世界が待ち受けているのでしょうか——!?

ぜひ次回話もお楽しみに!

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