【第二章】「ピラミッドへの旅路——運命の三択」
「あっつ……」
額を伝う汗を拭いながら、私は砂漠を見上げた。
“ピラミッドの透壁”を目指すため、私たちはついに砂漠地帯に足を踏み入れたのだった。
「ラクダってすごいですね〜!私だったら、半刻で干からびちゃいますよ……」
レクアはラクダ初体験に少し浮かれていた。けれど、辺り一面、見渡す限りの砂。クロトが言っていたけれど、あの先に見えるのは蜃気楼らしい。
「ねえ、あの砂丘を滑ったら気持ちよさそうじゃない?」
「アリジゴクみたいに沈んで、砂に飲まれて埋まってもいいなら止めないけど?」
マーレアが冷たく突き放すと、レクアはぞっとしてクロトに視線を向けた。
「…な、なんだよ。……あーもう、わかったから! 助けるよ、助けるから!」
その言葉にレクアは安心したように笑った。クロトもまた、普段通りの軽口に戻っていて、少しだけ空気が和らいだ。
「——見えてきました!」
遠くに、巨大な三角形の影が現れた。ピラミッドだ。
近づくほどに、その威容に圧倒される。
「これが“透壁”……本当にあったんだな」
クロトの言葉に、私たちは背筋を伸ばす。
ここから、真の試練が始まるのだ。
中に入ると、湿った空気と腐臭が鼻を突く。
「このピラミッドにも、王の墓があるのか?」
「…さあ?海底都市では散骨が一般的だけど、こっちは昔戦争してたから王族の遺骸があるかもね」
マーレアの言葉を受けて、アレンが質問する。
「数年前、海底都市とデゼルト•ウェイにはそれぞれ王都国家があり、お互い紛争状態になっていると聞いたことがありますが……マーレア様は関わったのですか?」
だがそれを、月鈴が制した。
「王族の過去に深入りするのは、控えた方がよろしいかと」
四度目の死を経験したミローザ、紛争に関わっていたであろうマーレア、一族を虐殺されたと言われる
ウィンタリーズ皇帝。フォールジアについては、よく知らないが——
王族の過去とは、必ずしも煌びやかではないのであった。
やがて、私たちは三つの分かれ道に行き着いた。
それぞれの扉には、目・岩・本のマークが刻まれている。
「目、岩、本……三つのルートか」
「月鈴、目の扉へ行くわよ」
「ええっ!?マーレア様、これはどれか一つしか正解がなく、他は危険なパターンだと思うのですが——って、ちょっとお待ちくださいまし!!」
マーレアは迷いなく進み、月鈴は慌ててそのあとを追う。
「岩のマークはなんとなく、俺たちにあってない気がします。なので、本のマークがよろしいかと」
アレンがそ促し、ミローザと共に中央の扉へと消えていく。
「…レクア、大丈夫か?」
「うん、ちょっと狭いとこ苦手で……」
「安心しろ。……死んでも守る。それが俺の仕事だからな」
クロトはそう言って、微かに笑った。
その背中に励まされるようにして、私は岩のマークの扉へと足を踏み入れる。
——こうして私たちは、それぞれの運命へと、歩き出した。
第二章六話を読んでいただきありがとうございます!
次回からいよいよピラミッドの中に入り、本格的にストーリーが進んでいきます…!
ぜひ読んでください!