第4話 また宇宙人が
また、宇宙人が出てきた。
「そんなに急いで星の髪飾りを返さなくても良いですよ」
いや。そんなこと言ったって、星の髪飾りがふわっと浮き上がって、ぐるぐる回るんだもん。どうするのよ。ぶつぶつ…… なんて、言っている間に夢から覚めた。
やっぱり夢だったか。現実空間で出てきなさいよ。っと一瞬思ったが、実際に出てきたら驚いて言葉も出ないだろうね。まあ、よくわかないけど、いつもよりは気軽にしていいって事よね。
なので、足取りは軽く、スイスイーっと自転車で学校まで行った。
学校へ着くと、西園と藤林から話しかけられた。以前喧嘩していたが、仲直りをした二人組だ。
「今度の日曜日。春祭り行かない?」
地元で春に毎年行われている祭りの事だ。もちろん屋台もある。
「よっしゃー。行くよ~」と私は即答した。
日曜日。待ち合わせ場所に行くと、すでに西園と藤林がいた。今度は遅れたりして、喧嘩になってないね。良かった良かった。
おっと、私が1分ほど遅れていた。相手はあまり気にしてなさそうだからオッケー。ホントは気にしているのかもしれないけど。
二人は浴衣を着ていた。それっぽい模様の浴衣を着ていて、後ろから屋台などの灯りを受けて、普段より綺麗に見える。いや、普段も綺麗だけどね。しかし、語彙力ないなぁ。
っで、私は普通の洋服なんだよね。しくじった。
なんて、思っているうちに、射的の屋台の前にいた。
「これやろう!」
西園と藤林が同時に言葉を発した。
いやいや。これって、ずれて弾が飛ぶんでしょ。やらなくていいよ……なんて思っていても、空気を読めない女だと思われそうなので、私も参加してみた。
パンッ
パンッ
パンッ
ほーら、当たらないでしょって思って、二人を見たら、すでに景品を持っていた。おいおい。どういうことなんですよ。
しかし、その景品を見ると、ウサギとニワトリの置物なのだけど、どうも置物の目つきが悪いな。後世残すことはないだろう。もって1週間だね。っとなんか負け惜しみっぽいことを思っていると、すでに二人は私の遥か前を歩いていた。
二人を見ていると、どうやら金魚すくいに挑戦するらしい。
金魚なんて、100匹、1000円の餌金で良いじゃん。いや、今はもっと高いかもしれないけどさ。まあ、出目金とかいないし、寿命も短いけど、たまにすごい長寿なのがいるよ。餌金っていうのは、大きな魚の餌になる金魚だよ。熱帯魚さんとかで売っている。
なんて思っていると、二人とも楽しそうに金魚すくいをやっている。
めっちゃ狭い水槽に大量の金魚がひしめきあっているけど、なかなかうまくすくえないんだよね。水槽本体の周りにはわらわらと子供たちが集まり、さらにすくうための難易度が高くなっている。あと水面が屋台の灯りを反射して、すごく綺麗なんだけど、これも難易度上昇の原因だよね。
「おりゃ! あら紙が破れちゃった」
「こっちはそ~っと、やってみたら、1匹取れたよ」
くぅぅぅ~~~。楽しそうにやってるじゃん。やってるじゃん。っというわけで私も屋台のおじさんにお金を渡して、ポイをもらった。
しかし、餌金は飼ったことあるが、金魚すくいの金魚は飼った記憶がないな。そんなことはどうでもいい、まずは金魚をすくわないと話にならなわね。
隣にひょいひょいと金魚をすくう上手い人がいるな。ショートカットで白いカチューシャをしている女の人だ。見た感じ、私と同じぐらいの歳っぽい。この人も浴衣を着ている。なんか、私だけ私服で浮いているな。
正面を向きつつ、目だけぎょろっと横に向けて、そのうまい人を見ていると、ポイを斜めに水に入れているね。ポイを金魚の腹の辺で下からすくっているね。
と言うわけで、真似てみたら、一匹だけすくえた。っで、結局その一匹だけだった。まあ何も取れないよりはいいかな。
金魚の数は西園は0匹。藤林は3匹。私は1匹。
西園は何も取れなかったんだけど、屋台のおじさんにおまけで1匹貰えたらしい。
しかし、泳いでいる金魚を持っていると、その姿は絵にはなるが、ちょっと行動がしづらい。もっと後にすべきだったのではなかろうか。
なんて思っていると、なんとなく醤油がちょっと焦げたっぽい匂いがしてきた。匂いの方向に視線をやると、イカ焼きの屋台だった。
「あれ、食べよう!」
私は思わず声に出た。
「いいね」
「うん」
と言うわけで、イカ焼きを食べることに決定した。
イカ焼きの屋台を見ていると、おじさんがイカにタレをつけて、じゅうじゅうと焼いている。
「3つ、おねがい!」
「あいよ~」
私たちはイカ焼き食べながら、次のターゲット?を探し始めた。まあ、屋台の事なんだけど。
「おいしいね~」
「そうね~」
「だね~」
なんて、会話をしていると、私の髪がふわっと浮いて、星の髪飾りがどこかへ飛んで行った。髪自体がふわっとするのは初めてだ。
え~~。今日は活動はお休みじゃなかったの? 聞いてないよ、宇宙人さん!
「ちょっと、用事が……」
私はいったん、グループから離れた。