第1話 面倒ごとは突然に
何かを集めに行く話、または返しに行く話を急に書きたくなって書いてみました。
全体的にギャグっぽく、くだけた文章になってます。
宇宙人だかなんだか知らないけど、星の形をした髪飾りのようなものを、ある人に返してきて欲しいといわれた。よく見ると、7つある。なので、7人に返さないといけないのだろう。たぶん。
いやいや、面倒ですよ。嫌ですよと意思表示をしたら、なんだかぶん殴られそうになった。
「あっ、ちょっと待って……」
そこで目が覚めた。どうやら夢だったみたい。
しかし手元にはその髪飾りが8つあった。7つじゃないのかよ。って突っ込みはそこじゃない。なんで、夢で見たものがここにあるのよ。
まあ、なんかの偶然だろう。偶然、ここに転がり込んできたのであろう。夢の内容を拒否しようと必死に弁護?擁護?していたら、星の髪飾りが宙に浮きだした。そして、ぐるぐる回っている。なんかアニメのオープニングとかでありそう。って、そんなことを思っている場合ではないわ!
だが、朝ごはんは食べないといけない。なにしろ今日から高校生なのだから。星がぐるぐる回っていようと、そんなことは関係ない。
スタスタスタ……
私は椅子に座った。
卵かけごはんとみそ汁。そしてお茶。とても質素だが、この組み合わせが好きなのです。
関係ないけど、卵を『ぽっちょん』って感じで落とすので、幼いころは卵かけごはんの事を『ぽっちょんたまご』とよんでいた。
おっと、出かける時間になってしまった。急がねば……
靴を履いて、玄関を開けようとすると、私の背後から何かがやってきた。さっきの星の髪飾りが追いかけてきて、私の頭の周りをぐるっと3回ほど回って、髪に付着した。
一緒に付いてくるって感じなのかな。一つ一つは小さな星形だが、8つもあるとちょっと目立つね。まあ、派手な髪飾りってことにしておこう。
登校は自転車で行く。徒歩でも頑張ればなんとかなりそうだけど、自転車でもオッケーの高校なのに、わざわざ徒歩で行くこともないよね。
っというわけで、あっという間に着いた。
校門をくぐると、なにやら部活の勧誘の人たちがいっぱいいた。新入生に大きな声を出して、直に話す機会をうかがっているけど、私は自転車なので、スーッとスルーして駐輪場まで行き、自転車を降りて、その場を離れていった。
体育館で入学式がおこなわれた。しかし、春なので寒い。もともと運動をする場所なのに、体を動かさないでじっとしているなんて、拷問を受けているようだわ。よく考えたら、学校で映画を観るときなんかも体育館だね。映画鑑賞も拷問だったのかな。
それっぽい祝辞を述べている間、いつもとだいたい同じような言葉だね~と思いつつ、圧縮をかけると結構小さなファイルになるのでは……など無駄なことを考えていた。
なんかいろいろ終わって、みんな教室へ入っていった。私は1年2組だ。
担任となる猪原先生が、いろいろとなんか話しているけど、私は『圧縮』と言う言葉しか思い浮かばなかった。中には尖った話をする教師なんかもいるだろうが、そういう場合は圧縮もしづらそうだ。しかし、そんなことはどうでもよかった。
いよいよ自己紹介である。
席の順からすると、私は3番目だ。まず右側の席の一番前から始まる。そして始まった。
「宇月 美輝です。今年の目標は月の髪飾りを返すことです。以上」
みんな、一瞬何のことかわからなかったが、わりとどうでもよかったらしく、そのまま2番目の人の自己紹介が始まった。
しかし、私はちょっとびっくりした。その人の髪には8つの月の形の髪飾りがある。月は三日月型だ。2番目の人の自己紹介のことなど頭に入らないうちに、自分の番が回ってきた。
「遠星 霞です。北中出身です。文芸部にずっといました。これから1年、よろしくお願いします」
自分でいうのもなんだが、これも圧縮がしやすそうなテンプレ文章だね。人のことは言えない。私は本当に文芸部にいたのだろうか。自分の事ながら、疑問に思ってしまった。あと、担任は苗字を『えんせい』だと思っていたらしい。
そんなこんなで自己紹介が終わった。その後もいろいろあったが、あまり覚えていない。
そして、下校時刻になった。
「そこの人!」
後ろから誰かに呼ばれた。振り返ると、それは宇月 美輝だった。黒い長髪で月の髪飾りがとても目立つ。私も人のことは言えないけど。しかし、誰も髪飾りに言及する人はいなかったかな。まあいいけど。
「髪飾りを返すんでしょ。どっちが早く返すことができるかな?」
私は驚いた。なぜそれを知っているの。あの人も宇宙人に夢であったのかしら。っていうか、誰に返すのよ。
私は尋ねようと顔を上げたら、もうすでに宇月はいなかった。
私はぶつぶつ言いながら、自転車に乗り、標準的なスピードで運転していると、道の隅でショートカットの小さな女の子が泣いていた。
すると、私の星の髪飾りの一つがすっと離れ、女の子のほうへ向かっていった。その星の髪飾りは女の子の周りをくるくるッと3周ぐらいして、また私のもとに戻ってきた。
うーん。よくわからないけど、この女の子の相談に乗ればいいのかな。そう思い自転車を停めて、女の子に話しかけた。