↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
生まれ変わったけど期限付き!?〜家族との再起をかけた奮戦記〜  作者: 石田あやね
最終章 後悔をなくせ!!
PR
94/101

94話 身辺整理

 あの日から数ヶ月が過ぎ、冬を感じさせる季節へと移り変わろうとしていた。

 俺はまだ颯太の身体にはいるが、月日を追う毎に記憶の途切れは頻繁さを増している。最初の頃は月に一度記憶が途切れ、3日ほどで俺(・)に(・)戻(・)る(・)のが流れだった。3日程度なら途切れても生活に支障はなかったし、何か特別な出来事があれば大抵のことはカレンダーを見れば分かるようになっていた。カレンダーには事細かにイベントや保育園の行事、友達との約束が記入されていた。それは全て原田の仕業だ。俺には徹底して颯太の父親として振る舞ってはいるものの、こういうところで俺を気遣ってくれている。それに俺は密かに感謝した。

 それから3ヶ月ほど経った頃、記憶が途切れる回数と日数が増え始め、今では月3回は俺の意識がなくなる。日数も5日から7日と長くなった。だから、俺戻った時は現状把握に苦労するが仕方のないことだ。

 消える準備をそろそろ始めなくてはならない。柴倉に御守りを返したことをきっかけに、原田から借りていたスマホも返した。だから、玩具箱の奥には中身のない空の缶ケースだけしまってある。しかし、そのケースはいつの間にか姿を消していた。颯太に戻っている間に、颯太自身がもう必要ないと思って処分したのかもしれない。


(徐々に俺のいた痕跡がなくなっていくのは寂しいが……颯太には余計なものなんだから残しても仕方がない)


 他に俺の痕跡があれば今のうちに処分してしまおうと辺りを探ることにしてみる。

 オモチャは当然除外だ。しかし、最初の頃は電車や乗り物のオモチャばかりが溢れていたが、今は奇怪レンジャーのグッズがおもちゃの半分を占めるほど増えている。遊んだ形跡があるから、原田がきっと颯太と一緒に遊んでいるのだろう。想像するだけで微笑ましいことだ。

 すると、画用紙が何冊か出てきた。手前の一冊を捲ると、俺が不在の時に描いたであろう絵が目に入る。奇怪レンジャーの絵がほとんどだったが、数枚捲ると家族を描いたであろう絵があった。母親の恵美、颯太自身、そしてもう一人。それは笑顔で颯太と手を繋ぐ原田だった。横には慣れないカタカナでパパと書いてある。それを見て、これまで自分がしてきたことが報われた気がした。


「仕事って言って家族を蔑ろにしてきたけど……そんな俺でも家族を守ることができたんだな」


 そして残りの画用紙を捲るとクレヨンでデカデカと“モラハラ”と書かれた文字が目に止まった。見た瞬間、懐かしさよりも可笑しさが込み上げてきてひとりで笑ってしまう。

 智貴のことでいろいろ試行錯誤して苦労した頃が昨日のことのように思い出される。


「俺にはいい思い出だが……これは処分しなきゃだな。恵美に見られたら大変だ」


 画用紙を切り取り、細かく破ってゴミ箱へと捨てた。不意に智貴の事が頭に過ぎる。


「あいつは今どうしてるんだろうか」


 離婚した後は実家へ戻ったらしいという話を恵美と直子がしていたが、それ以降の話題は俺の耳には入ってこなかった。きっと恵美が俺の前では話を控えていたためだろう。


「あんな奴だが一応は颯太の父親なわけだからな。少しは真っ当な人生を送ってくれればいいんだが」


 すると、下の階で恵美の呼ぶ声がした。

 俺は子供部屋を見回しチェックをしてからリビングへと向かった。


「ママ、どうしたの? まだご飯の時間じゃないよ?」


 今は夕方の6時。保育園から恵美と帰り、いつも通りの流れなら7時ぐらいに帰宅する原田に合わせて夕飯の準備をする恵美がこのタイミングで俺を呼ぶのは珍しい。


「その……颯太、前のパパのこと覚えてるかな?」


 なんというタイミングだろうか。さっき智貴のことを思い出したばかりだったから俺は思わず返事をするのを忘れてしまった。


「颯太……もう忘れちゃったかな?」


 再びの問い掛けで我に返り、俺は大袈裟に頷く。


「お、覚えてるよ! 僕の本当のパパでしょ? それがどうかしたの?」


「それがね……パパが一度だけでいいから颯太に会いたいって言ってるんだ」


 ーー離婚して一年経って、今更?

 そんな疑問が浮かび、俺は答えに迷った。


「もしも颯太が会いたくないって言うなら構わないよ。ママも歩パパも、颯太が決めたことに賛成するつもりだから……颯太はどうしたいかな?」


 この話し方だと原田には相談済みなようだ。だが、恵美の元夫に颯太を会わせるのは恵美は不安だろうし、原田にとっても面白い話ではないだろう。あんな離婚の仕方だったわけだから、正直言えば俺も気が進まない。


「僕……会ってみる」


 それでも颯太の父親には変わりない。智貴なりに何か思った事があったから颯太に会おうと思ったのだろうから、その気持ちに答えてやるべきだと思い直した。


「無理とか……しなくていいからね」


「大丈夫」


 俺は恵美を安心させるように笑顔で答える。


「分かった。会う日が決まったら教えるからね」


「うん」


 智貴に会うことに対してはそこまでの不安はない。それよりも、智貴と会う日に颯太と交代していないかだけが心配だった。


(あの頃の颯太は幼かったが……あんな状態だった智貴をずっと見てきたんだから、もしかしたら嫌っている可能性がある。もしもの時のために、ここは断るのが正解だっただろうか?)


 智貴が颯太に会いたいという理由も気にはなるが、孫を傷付ける状況になるのは避けたい。


(原田に相談したいところだが……俺が言い出しっぺだからな)


 俺をいないと思ってほしいなんて言わなければ良かったと、あの日の俺を恨む。

 しかし、ここは俺が乗り越えるべき課題だ。


(颯太、頼む! 今は少し交代はしないでくれ!)


 俺は神頼みをするように、颯太に念じた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。