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生まれ変わったけど期限付き!?〜家族との再起をかけた奮戦記〜  作者: 石田あやね
第4章 記憶を取り戻せ!
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75話 ショートメール

 結婚の挨拶も無事に終わり、次にするべきことは結婚式の準備だ。その話し合いのため、今日は朝から結婚式のパンフレットを持って原田が家へと来ている。結婚の挨拶をした際、原田の両親も結婚式が待ち遠しいというようなニュアンスの会話をしていた。原田家の長男ということもあって、結婚式に対しての思い入れが強いのは親としては当然だろう。

 だが、恵美は乗り気ではないようだった。

 パンフレットを見始めてもあまり楽しそうではないし、どこか思い悩んでいる。恵美の異変を察していた原田がそれを指摘すると、ようやく重い口を開いた。


「わたし……一度結婚式してるし、友達とかにまた結婚式するの? とか、思われたりしないかな? ごめんね……歩さんは初めての結婚だから式を挙げたい気持ちは分かってるし、わたしも結婚式自体が嫌な訳じゃないの」


 4年前に智貴と結婚式を挙げたから、2度目の結婚式をすることに恵美は躊躇を覚えている。せっかく幸せを誓い合い、みんなから祝福してもらったのにと罪悪感のようなものが芽生えてしまったのだろう。

 そんな恵美に対し、原田は屈託のない笑顔で返事を返す。


「恵美さんがどうしてもやりたくないなら俺は無理強いはしません。けど、俺は恵美さんのウェディングドレス姿が見たいです……俺の両親や親戚に恵美さんを自慢したいんです。俺はこんな素敵な女性と出会うことができたんだって……天国にいるお義父さんにももっと幸せになる恵美さんの姿を見せてあげたいんです!」


「歩さん」


「ああっ……けど、誤解しないでください。これはあくまで俺のわがままと言いますか……願望と言いますか。結婚式が嫌ならフォトウェディングっていうのも有りですから」


 原田の言葉に恵美の顔に笑顔が戻る。


「俺はどんな形でも良いので……ウェディングドレスを着た恵美さんを見せほしいです!!」


「歩さんがそこまで望むなら……結婚式挙げちゃおうかな?」


「良いんですか? 無理とかは無しですよ? 俺の気持ちは二の次で構いませんからね!」


 焦るように言う原田を見て、恵美は小さく微笑んだ。


「無理はしてません。ただ大きな式にして、友達とかをまた呼ぶのには抵抗があるので……両親とか親戚だけを呼ぶような小さな式でも良いですか?」


「もちろんです! というか、お恥ずかしい話……俺もそこまで貯金があるわけではないので、そこまで豪華な結婚式は考えてませんでした。なので、恵美さんの提案は俺には願ったり叶ったりです」


「そうですね。これから颯太にもお金が掛かるし……できるだけ予算は抑えた式にしたいのは確かかな」


「そうと決まったら、結婚式場探し開始ですね!! 低予算でも出来るところに絞り込んで、後日話を聞いてきましょう」


 原田は嬉しそうにパンフレットをテーブルの上に広げた。


「すごい量ですね……すみませんでした。わたしが用意するべきものを歩さんに頼んでしまって」


「いえいえ。営業回りに出た時に通りがかった結婚式場へちょっと寄り道して貰ってきただけですから……そもそも、俺が恵美さんと結婚したいから好きでやってることなので気にしないでください!」


「ありがとう」


 恵美は柔らかな笑顔を原田に向ける。以前見た智貴と暮らしていた恵美の顔とはまるで違う。


(いい雰囲気なのに邪魔をしたらいかんな)


 楽しそうにパンフレットを見始めたふたりに背を向け、ひとり子供部屋へと向かった。


(結婚式の話は俺には関係ないからな……さて、ふたりが話し合っている間は何をしてようか)


 考えもなく目についた玩具箱の中を探る。


(さすがの俺もひとりでおもちゃで遊ぶのは勘弁だな)


 ふっと、自分が使っていたガラゲーが奥から出てきた。原田に充電してもらって一度見たきりずっと放置していた。また見たところで怪しいものなど出てこないだろうが、俺は改めて見落としがないか確認するために電源を入れる。

 あの日から充電はしていなかったため、もう20%ぐらいしか残量がない。


(通話履歴とメールは見たからな……写真もSNSもやってなかったから、他に見るものなんてもうないか)


 だが視界にあるものが飛び込む。原田と一緒に見た時は、通話とメールばかりに気を取られて他のものには目がいかなかった。それは電話番号でメッセージを送るショートメール。そこに通知ありのマークが表示されていた。

 少し期待で胸が跳ねるも、すぐに冷静になる。


「だいたいは詐欺まがいのしょうもないやつだよな」


 ともあれ、万が一の可能性があるのも確かだ。

 俺は意を決してショートメールを開く。一覧の先頭に表示された番号は見覚えのない携帯番号だった。会社の人間や取引先、ある程度の電話番号は頭に入っている。だが、この携帯番号には全く覚えがない。

 内容を確認するべくメールを開く。そこに書かれた文章に俺は驚愕した。


 ーー先日はありがとうございました。何度か電話をかけたのですが繋がらずメールで失礼いたします。あの時のお礼をしたいのですが、どこかでお会いできないでしょうか? 柴倉(しばくら)


 日付は俺が死んで一週間後だ。

 慌てて通話履歴を開き、俺が死んだ後に掛かってきた番号に目を走らせる。電話番号を登録していない人もそれなりに居て、そこに紛れて2回だけ柴倉と名乗る人物と同じ番号からの着信があった。

 ただ、柴倉という名字は聞き覚えがない。仕事関係にもそんな苗字の人はいなかった。仕事関係でも知人でもない人間がどうして電話番号を知っているのか些か疑問にも思ったが、これは重要な手掛かりになるかもしれない。


(原田に伝えないと!!)


 俺の死の痕跡を見付けられるかもしれないと思った途端、身体中に湧き上がってきた衝動を止めることはできなかった。


「原田っ!!」


 恵美がいるのも忘れ、俺は叫んでいた。

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