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生まれ変わったけど期限付き!?〜家族との再起をかけた奮戦記〜  作者: 石田あやね
第4章 記憶を取り戻せ!
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71話 乾杯

 クリスマスイヴ当日。本日は待ちに待った原田と恵美に記念すべき日となる。

 保育園へ迎えに来た恵美と大慌てで出掛ける準備を整え、待ち合わせのレストランへと向かった。


「お待たせしました」


 先にお店の前で待っていた原田に恵美は焦るように声を掛ける。


「すみません、急いで来たんですけど……待たせちゃいましたか?」


「いえ! 俺もさっき到着したばかりですから……それに待ち合わせ時間10分前です。それよりも」


 そこで原田は言葉を切ると、顔をほんのり赤く染めて、照れたように頭を掻く。


「め、恵美さん……今日は一段と素敵です」


 クリスマスイヴにレストランで異性と食事ということもあって、今日の恵美は普段と違う装いだ。薄いベージュ色に花の刺繍が入ったワンピースドレス、白のファーがが付いたアイボリー色のガウンコート、いつもは履かないヒールの高い靴、それに合うアクセサリーにヘアスタイルと化粧。俺から見ても、今日の恵美は周りの誰よりも綺麗に映った。


「あ、ありがとう……少し気合を入れ過ぎたかと不安だったんだけど、変じゃないなら良かった」


「変なんて有り得ないですよ!! 恵美さんはすっごく綺麗です!!」


 原田はいつになく恥じらいもない発言を繰り返す。きっと緊張と周りの雰囲気で我を忘れているのかもしれない。


「颯太も今日はおめかししたんだよ」


 照れ臭さに限界を覚えたのか、恵美は話題を俺に摺り替えた。

 保育園や近場に遊びへ行く時のような動きやすさメインの服装ではなく、襟付きのワイシャツに赤色の蝶ネクタイ、黒の毛糸生地のベスト、カーキ色のダッフルコートと特別なよそ行きコーデだ。少しだけスーツを着て会社へ行っていた時のことを思い出し、懐かしさから笑みが溢れてしまう。


「本当だ。今日の颯太くんめっちゃかっこいいじゃん!!」


 原田は歯を見せ、ニカっと笑った。


「それじゃ、外で話すのはここまでにして中へ行きましょうか!」


 原田の誘導でレストランの中へと入り、ウェイターの案内で窓際の席へと着いた。


「こちらがメニューになります……お決まりになりましたら声をお掛けください」


 丁寧な物腰のウェイターが去り、俺は目の前に置かれたメニューを開く。こういう高級志向のレストランならメニューに書かれているのは難しい横文字ばかりなのだろうと勝手に思っていた。だが、子供用のメニューも用意していたようで、中身はカラフルな文字と絵で子供にも分かりやすいように料理名が書かれていた。


「わあ、すごいね。颯太にも分かるようになってるんだ!」


「ここは子供向けのメニューも充実してるので家族連れに大人気のレストランらしいです。時期が時期なので予約できないかと思ったんですが、運良くキャンセルが入ったみたいで……こうして3人で食事できて嬉しいです」


 周りを見ると確かにカップルよりも家族で来ている率が高いようだ。

 俺たちも周りから見れば家族に映っているのだろう。そんな考えが過り、俺は改めて決意する。


(今日はなんとしてでも原田のプロポーズを成功させ、本物の家族になるんだ!!)


 心の中で気合を入れたのだが、どうもそんな雰囲気にはなりそうもなかった。

 レストランの中央には立派なグランドピアノが置かれ、ピアニストが次々にクリスマスソングを奏でる。ただ、子供が楽しめる選曲が多く、ロマンティックとは少し違った。周りも子供の声が響き、レストランにしてはとても賑やかで、とてもじゃないがプロポーズが出来るようには思えなかった。


「明日は保育園でもクリスマスパーティがあって、サンタさんがプレゼントをくれるらしいの」


「えっ!? それ最高ですね!! 颯太くん、明日は本物のサンタさんから2回もプレゼントもらえるんだ!!」


 話題もさっきから颯太のことばかり。俺は呆れから小さな溜息をつく。


「そういえば、颯太くんはサンタさんにどんなプレゼントを頼んだの?」


 俺の気持ちなどお構いなしに原田は楽しげに聞いてきた。


「怪奇レンジャーの変身ベルト」


「そっかー!! 今度見せてもらおうっ」


「それなら明日のクリスマスパーティ、歩さんも来る? うちのお母さん、すっごく喜ぶから」


「いいんですか!?」


 もちろん、と笑う恵美の表情はとても嬉しそうで、とても幸せそうで、俺は焦ることをやめた。


(俺が先走っても仕方ない……原田に任せよう)


 空腹が限界を迎えそうな頃、注文したものが次々と運ばれてきてテーブルの上が料理で埋め尽くされていく。俺の前には無難と思ったお子様セットとオレンジジュースが置かれた。ただファミレスのようなお子様ランチとは違ってオシャレ感が半端なかった。量が少ないだけで、大人の料理と変わりない。けど、盛り付け方やお皿にドレッシングで描かれたキャラクターの絵が子供心を擽るのだろうと察することができた。

 ただ、贅沢を言うならば大人の食べる料理を少し食べたかったし、ふたりにだけが飲めるシャンパンに喉が鳴った。


(シャンパンは飲んだことがなかったからな……一度くらいは直子を連れてレスランで食事なんてことをしておけば良かったな)


 少しばかり後悔が過ったが、原田と恵美の持ったグラスが俺の方へ向けられ、慌ててオレンジジュースの入ったグラスを持ち上げた。


「素敵なクリスマスイヴに」


「3人で過ごす素敵な時間に」


 それを合図にグラスが綺麗な音を鳴らす。


「「「乾杯っ!!」」」


 何はともあれ、最高の日になるのは間違いなかった。

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