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生まれ変わったけど期限付き!?〜家族との再起をかけた奮戦記〜  作者: 石田あやね
第2章 友達をつくれ!
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27話 お願い事

 俺の勝利が決まり、周りの園児が集まり始める。


「こんど、ぼくともクイズ大会してよ!」

「奇怪レンジャーごっこ、いまからやらない?」


 名前の知らない別のクラスの子たちまで声を掛けてきた。


(なんだか一気に人気者になってしまったな……)


 すると、大河が俺の肩をぽんっと叩いてきた。


「どうしたの?」


「いや、はじめにいっただろ? まけたらなんでもお願いきくって」


 勝負に勝った満足感でそんな約束すっかり忘れてしまっていた俺は、少し悩みつつも口を開く。


「そうだな……なら、お願いを言うよ」


 何を言われるのか少しハラハラした顔をする大河に俺は笑顔を向けた。


「これからは誰にでも優しくしてくれ……誰が偉いとか偉くないとか関係なく、相手を思いやれる人になってほしい」


「え? それが颯太のお願いなのか?」


 大河にしたら、これは子供らしくないお願いだろう。友達になってほしいとか、大河を子分にするとか、颯太を優位な立場にするお願いはいくらでもあるが、それは勝ち取るものではない。友達を選ぶのも、子分にするのも、お互いが認めあってなくては意味がないのだ。

 俺はそっと大河に顔を近付け、誰にも聞かれないような小声で伝える。


「誰にでも優しい人になれば、未来ちゃんとももっと仲良くなれると思うよ」


 大河はどう見ても未来に好意を抱いている。大河からしてみれば、それが恋か愛かまでは分からないのだろうが、仲良くなりたいというのは俺の目で見ても分かった。案の定、俺の言葉を聞いた瞬間に大河の顔は真っ赤に染まる。子供は単純で分かりやすいので助かった。


「な、なんでそんなことお前が知ってるんだよ!!」


 大河が周りに届くような大賀声を上げる。


「た、大河くん……すこし外で話そうか」


 人目を気にして、俺は大河を園庭へと連れ出した。そして、誰も遊んでいない木の影で俺は改めて大河と向き合う。


「いいか、大河くん……人に対して“お前”なんて使うのは失礼だ。相手は見下されていると思って嫌な気持ちになる……相手を思いやる人になれば自然と友達も増えて、未来ちゃんだって大河くんとたくさん遊びたいと思うはずだ」


「ほ、ほんと?」


 大河の心が揺れ動いたのか俺の言葉に耳を傾け始めた。


「そうだ。人を思いやれる男になれば、大人になったとき大河くんはもっと幸せになれる……けど、今俺の言ったお願いを聞かなければ大人になったときに大変な目に遭うんだ」


「大変な目ってなんだよ」


「知りたいか?」


 俺の問い掛けにゆっくりと大河が頷く。


「大人になって、今のままの大河くんでも結婚まではできるだろう。だが、結婚生活は大河くんが原因で即離婚か……それともあとで捨てられる熟年離婚が待っている。最後は必ず孤独……ひちりぼっち、それが大河の辿る末路だ」


 ついつい浩之として語ってしまい、言葉が難しくなってしまった。しかしながら、今の子供は情報が豊富なのか“離婚”という単語をすぐに理解したようだ。なにやら衝撃を受けたように無言になってしまう。


「大河くんにしてみたら今の自分の振る舞いは男らしくかっこいいと感じるのかもしれない。だが、人を思いやれない男はかっこよくもないし、偉そうにするのは強さじゃない。好きな女の子がいるなら、その子に優しくしろ! 困らせるんじゃない! 強さを見せるのはその子がピンチの時だ!!」


 俺の言った言葉がどれだけ大河に伝わったのかは分からない。それでも、何かしら感じてくれたのだろう。さっきまでの大河とは顔つきが違った。


「俺のお願いは以上だ。大河くんが俺をどう思おうが別に構う気はないよ……ただ同じ園のクラスの仲間としてこれからよろしく頼むな」


 良いタイミングで自由時間が終わったことを先生たちが知らせる。


「よし、戻ろうか」


 俺が歩き出すと、大河も足を動かす。クイズ大会が始まったまではあんなに元気だった大河が今は嘘のように大人しくなってしまった。少しやり過ぎたかとも思ったが、颯太を思うとなかなか歯止めが利かなくなる。


(俺は案外、孫に甘いおじいちゃんなんだろうな)


 クラスに戻る寸前、教室の窓に俺の姿が映し出される。それは浩之ではなく、孫の颯太の姿。


「わたしも颯太にじいじと呼ばれたかった」


 本音が漏れる。

 もし、事故になど遭わなければ俺は颯太を可愛がっていただろう。かわいい初孫を浩之の身体で抱き上げ、痛い腰に鞭を打ちながら一生懸命遊んであげたに違いない。

 直子とふたりたまに遊びにくる孫をこれでもかと甘やかし、自由気ままに旅行へ行ったり、趣味に勤しんだりしながら年老いていく自分を想像した。


「これが俺の幸せだったのに」


 この結末を生んだのは俺のせいだ。

 亭主関白で思いやりの欠片もない俺が受けた罰なのだ。


(颯太の身体に入ったのは俺の愚かさに気付かせるための、仏様のちょっとした情けなのかもしれないな……)


 ならば、もう俺は成仏するのだろうか。

 愚かな自分を知った今の時点であの世からお呼びが掛かるかもしれない。俺は少し構えた。


「颯太くん、教室入ろうね」


 だが、なつ先生に腕を引かれながら俺は現実の中へと戻っていく。


(まだ成仏しないのは……俺が知らない愚かな行為が他にもあるというのか? 仏様、それに気付けと言っているのか)


「そろそろ帰りの時間だから、みんなで帰りの会をしまーす!」


 俺は改めて自分の回りを見回した。そして小さく微笑む。


(ならもう少しだけ……颯太、身体を借りて申し訳ない)


 孫の身体を奪うのは心苦しいのは変わらない。けれど、あの世に行く前に自分の愚かな行いを全て見付けて反省し、直子と恵美に出来る限りの償いをして後悔を無くしたかった。

 後悔が消えれば俺もなんの悔いもなくあの世へと逝ける。


「よし、頑張れ俺」


 誰にも聞こえない声で自分にエールを贈った。

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