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生まれ変わったけど期限付き!?〜家族との再起をかけた奮戦記〜  作者: 石田あやね
第2章 友達をつくれ!
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22話 子供の遊び

 俺は頑張った。だが、予想よりも遥かに苦戦を強いられている。

 出だしは悪くはなかった。


「さあ、みんなでお散歩にいきましょう!」


「今からお歌にのせてダンスするよ~」


 なつ先生の言ったことをこなし、適度な会話を交わす。


「颯太くん、ダンスじょうずだね」


 とある女の子と隣同士になったのがきっかけで話すようにはなった。


「そんなことないよ!」


 子供のダンスなので動きは単純。俺でもなんなく踊れるものだった。


「はじめてなのにおぼえるの早いねー!」


 園児相手に褒められて、友達をつくるなんて楽勝だとも思っていた。

 だが、自由時間になりみんなで園庭で遊ぶ時間。そこから世代のズレが友達づくりに支障をきたす。


「颯太くん、一緒にプリティー戦士ごっこしよう」


 仲良くなった女の子から誘われる。だが、俺は女の子向けのアニメなどなんの知識も持ち合わせていない。いや、子供向け番組を意識して見ていなかったので、男の子向けのアニメすら見ていなかった。


「ごめんね。ぼくわからない」


「ええーー、颯太くん見てないの?」


「なら、どのアニメが好き?」


 違う女の子からの問い掛けに俺は返答に詰まる。

 まさか、ニュース番組とクイズ番組が好き、とは言えない。最近は恵美も仕事で忙しく、俺がテレビで何を見ていても気にしなくなっていた。前までは恵美の目を気にして嫌々子供番組を見ていたが、それがなくなった今は自分が見たい番組ばかり見ている。それが間違いだった。


「あんまりアニメとか見てなくて」


 あれだけ俺に好感を抱いていた女の子の表情が一気に変化する。今はつまらなさそうに、他の女の子と目を合わせて何やらコソコソ話を始めてしまった。


(しまった……保育園へ行く前に子供向け番組を予習するべきだった)


 これは痛恨のミス。


「なんだよ、お前。家にテレビないの?」


 後ろから生意気そうな言葉が飛んできた。振り替えると、いかにもクラスのリーダーらしき男の子がニヤニヤしながら近付いてくる。


「テレビはあるけどアニメはあまり見ないんだ」


「なんだよそれ、だったら奇怪レンジャーも知らないのかよ」


(なんだそれ……)


「ぼくのいえはいつでも好きなアニメがみれるんだぜ! サブスクってやつをパパが入れてくれたんだ」


 俺の時代ではテレビも高価なもので、家にあってもチャンネル権は父親にあった。故に俺の時代の子供たちは夕暮れ時まで外で遊ぶことが当たり前。恵美が子供の頃は多少アニメは見ていたが、休みの日などは友達と公園で遊んでくると活発だった。

 だが、今はどうやら違うらしい。サブスクというやつは知らないが、それがあればアニメを好きな時に好きなだけ見れるものなのだろう。


「それはすごいね。けど、ぼくはアニメよりも外で遊んだりするのが好きなんだ」


「外でなにするのが好きなの?」


 突如、女の子が会話に入ってきた。


「えっと、鬼ごっことかかくれんぼとか……缶けりとか、あとチャンバラ?」


「カン? チャン?」


 後半の単語は今の世代には通じなかったようで、女の子は首を傾げる。


「ど、どれも楽しいんだよ! ぼくのおじいちゃんが教えてくれたんだ!」


 咄嗟に俺はそう言って誤魔化す。


「それ、わたしもできる? やってみたい!」


 意外にも女の子の興味を引いたらしい。だが、それに対してリーダーが黙っていなかった。


「そんなのつまらないに決まってるじゃん!! こんなやつと遊ぶよりもぼくたちと遊んだほうが楽しいよ!!」


「そうだそうだ! チャンバラなんてあぶなそうじゃん! 怪我したらどうするんだよ!」


 そう言われて、女の子は自分が身に付けている洋服を確認する。


「これ昨日ママに買ってもらったばかりなんだ。チャンバラってよごれたりする?」


「たぶん」


 俺は曖昧な返事をした。というか、子供なんだから汚れて当たり前だろう。そう心で叫ぶ。


「ごめんね、颯太くん。やっぱりわたしたち」


 女の子たちは別の場所へと行ってしまった。


「俺たちもあっちで遊ぼうぜ」


 リーダーはどこか満足したように俺から離れていく。


(なんなんだよ、あいつ……ていうか、今時の子供は外遊びの楽しみ方を知らないのか!?)


 辺りを見渡す。木陰で砂遊びをする子、何やらダンスをしている女の子たち、変身ポーズで盛り上がる男の子。そして少人数、部屋の中で絵本を読んだり、絵を描く子供がいた。


(昔はもっと体を動かして、怪我をしても駆け回っていたのに……)


 あの頃はただ、友達と広場を走り回っているだけで楽しかった。それが今はどうも違うようだ。

 友達づくりに挫折した落胆よりも、時代に取り残されてしまったような孤独感に襲われる。

 初日は、クラスの子供たちの名前すら覚えられないまま終わってしまった。


「颯太、保育園どうだった?」


 迎えにきた恵美の第一声に俺は顔をひきつらせる。だが、僅かな間で気持ちを切り替えた。


(ここで俺が諦めてしまったら颯太に友達を作られずに終わってしまう!! それだけは回避しなければ……遊び方でモヤモヤしているなんて情けない!!)


 俺は恵美に真剣な眼差しを向ける。


「ぼく、がんばってお友だちたくさんつくる!!」


「そんなに張り切るぐらい楽しかったんだね。颯太ならお友だちたくさんできるよ」


「だから、ママ! サブスクをぼくに教えて!!」


「さ、サブスク!?」


 帰宅後、俺は恵美にサブスクの見方を教えてもらった。どうやら、今のテレビにはインターネットで繋がっているものがほとんどだと知って驚いた。


(なるほど、月額を払うといろんな番組が好きな時に見れるのか)


 俺の時代は見逃したら二度とその番組は見れなかった。そこからビデオテープが生まれ、好きな番組を記録できるようになった。DVDが出てきた辺りで俺の最先端はストップしてしまっている。


(まだまだ学ぶことがたくさんあるんだな)


「勉強になるな」


 そこから一週間、俺はアニメ番組をただひたすら見続ける日々を過ごした。

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