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第10話 本当の願いは

(私は、フィスクのことを全然知らないんだ)



 初めて見た姿に動揺した。あの後、フィスクはいつも通りシャイラを部屋から送り出した。


 自分の部屋に帰って、赤いアネモネを眺めながら物思いに耽る。


 フィスクはどうして驚いていたのだろう。風の精霊である彼ならば、風を自在に起こすことなど簡単なはずなのに。


 自分の意思ではなかったのだろうか。驚いていたし、どこか弱っているようにも見えた。そんな姿を人に見せるのを良しとしないことは、彼と付き合いが短くても察することはできた。


 取り繕うこともできないほど余裕を失くして、彼は何を考えていたのだろう。


 夢で見た、あの記憶と違うことが多すぎて。


 頭を抱えて、シャイラはふと気が付いた。


 前と違うのならば、それで良いのではないか。このまま、フィスクが死んでしまう未来が無くなるほどに、全部変わってしまえば。



「フィスクを、助けられる……?」



 脳裏にこびりついて離れないのは、あの幻想的な光景だ。抱えた体が、光の粒となって消えていった、あの。


 シャイラが変えたいと思ったのは、フィスクが死ぬ運命そのものだったはずだ。


 出会いを避けることはできなかったけれど。これからのことなら変えられるのではないか。


 そうすれば、過去に戻ってきた意義を果たせる。


 目の前が開けたような思いだった。


 彼が生きているなら、それでいい。それでいいのだ。



「その、ためには。まず」



 今のシャイラには情報が無さすぎる。もっとフィスクのことや、精霊についても知る必要がある。


 例えば、フィスクがシャイラを世話係に選んだ理由。


 よく考えれば、そこからおかしかったのだ。フィスクにはアロシアがついている。あの敬虔な巫女ならば、フィスクが望むものは何としても用意するだろう。脅迫までして、シャイラを従わせたように。


 シャイラでなければいけない理由があるのだ。信者であるアロシアではなく、精霊の血を引くコーニでもなく。


 その理由が分かれば、彼の死の真相に近付けるのではないだろうか。


 フィスクは何故、あの時、あの場所で、あの言葉を残して死ぬのか。


 そしてそれは、フィスクが今この街に、シーレシアの教会にいることと無関係ではないはずだ。恐らく、今日の不可解な言動とも。


 そのために戻って来たのだと、アネモネの花が言っているようだった。

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