② AI時代に必要な2大能力/全ての職業がAIの影響を受ける時代に
筆者:主にこのAI時代になっていく上で、人間として必要な能力は大きく2つに大別されると僕は思っています。
一つは①でも申し上げましたが、ChatGPTなどのAIを上手く乗りこなして力を引き出させその上で改良する能力。
もう一つは“AIではあまりできない領域“をこなす能力。
この2パターンだと思っています。勿論両方とも持っていることがよりAI時代で生きやすくなることでしょう。
質問者:1つ目の能力で“改良する”と言うことが加えられていますがどうしてでしょうか?
筆者:対話型AIの代表格でありますChatGPTを例にとりますと、既に、世界中の大学がChatGPTを活用することに対する禁止措置や制限措置などを打ち出しています。
このようにAIにあまりにも依存し過ぎてしまうと実力を測ることができないのではないか? と世界中で懸念しているわけです。
そんな中、AIを“参考程度”と考え検索エンジンと複合的に活用することによって“オリジナルの考察”に昇華していくことが重要になります。
まぁ、勿論本当は論文などを読んでいって考察してレポートや論文を書いた方がいいに決まっていますが――そんなにガチの研究者希望者でも無ければ真面目にではやらないでしょう?(笑)
質問者:私が大学生の時にもいましたね……検索エンジンで検索した内容をそのままレポートで出して落第した友達が……。
その友達の令和バージョンと言う感じでしょうか?
筆者:そうですね。検索エンジンの場合は誰も似たような用語を使うことで同じような検索結果に辿り着くことができます。
しかし、対話型AIでは①でも申し上げたようにランダム性のあるアルゴリズムですので、複数回数色々な方法で調べていく必要がありますね。
質問者:そうなると、思ったよりも対話型AIを“乗りこなす“と言うのは難しいのかもしれないんですね……。
筆者:そうですね。
大学側としても対策をするのが難しくなると思うのです。しかし、今は無くてもChatGPTが出した答えをそのままコピーしてしまえば必ず分かってしまうようなツールが出来てしまうのは時間の問題だと思うんですよね。
“乗りこなす“上でも2つ目の”AIにできない領域をやる“と言うことと被るのでそちらに議論を移させてもらいますね。
質問者:どういうことがAIにできないのですか? やっぱり芸術家さんみたいに独創的な仕事しか無いのでしょうか……。
筆者:いえ、ところが今やAIは芸術の領域にも進出してきています。
今回はそれについて見ていこうと思います。
AIがイラストの領域にまで進出してきたのが、2022年8月になります。
米コロラド州に住むゲームメーカーCEOのジェイソン・アレンさんが9月、同州の美術コンテストにおいて、新人アーティスト部門の「デジタルアート・デジタル加工写真」分野で優勝しました。
作品は、ルネサンス絵画とSF風の絵画を組み合わせたようなものでした。
しかし、その作品がAIによる画像生成ツールを使って制作されたということが物議を醸しました。
アレンさんが使った「ミッドジャーニー」と呼ばれるそのツールは、例えば「お菓子の森を歩くリンゴ」といったフレーズを入力することで、AIがその指示に従った絵を自動的に、数秒で作成します。誰でも利用できる上に、使い方によってはかなり高レベルの幻想的な絵が描けるといったことから、昨今、話題になっていたところでした。
アレンさんは、現在は描画ソフトもかなり発達しており、その延長線として、あくまで補助的なツールとしてAIを使ったに過ぎないとの反論をしています。
アレンさんの主張によりますと、絵の作成には膨大な時間を費やしたとのこと。「ビクトリア朝の衣装と宇宙のテーマを融合させる」といった意図と指示によってAIに人物を描写させ、無数の微調整を加えながら完成させたとのことでした。
質問者:絵にまでAIが進出しているのはかなり意外です……しかもコンテストに優勝してしまう程の絵が描けるとは……。
筆者:アレンさんにおいても微調整を無数に繰り返したようです。やはり“使い手の実力に依存”という点においては対話型AIと変わらないと言えます。
次に音楽の作曲においてもAIが進出しつつあるようです。
2019年の紅白歌合戦においては「AI美空ひばり」が新曲を披露したことで話題になりました。これは過去の歌い方をデータに落とし込んで再現したようです。
また、ソニーコンピュータサイエンス研究所(SONY CSL)が開発したAIソフト「Flow Machines」がビートルズの楽曲を学習して作曲し、「ビートルズの雰囲気と似ている」と話題を呼びました。
質問者:本人の方々が亡くなっているにもかかわらず歌われたり作曲が出来てしまっているというのは信じられません……。
これにはどういう技術が使われているのでしょうか?
筆者:音楽は人間の感情を表現する、または感情を励起するという意味において非常に創造的でAIにはまだできない分野ではあります。
しかしながら、その作曲という活動はセオリーに基づいて実行されているのです。
また、対象とする感情とコードや、メロディーの対応については過去のデータが多くあります。
心理学の研究と連携し、人間が目標とする感情の動きを明確にし、それらを入力すればこういった感情のセオリーの部分についてもAIによって実行可能になりつつあるのです。
この感情の動きについても脳波を直接計測し推定することも可能になっています。
ごく近い将来、AIを利用することで専門家以外でも短時間に作曲できるようになることで、音楽業界は大きく進歩することが予想されています。
質問者:ひえぇー、音楽でもAIを上手いこと使えないと太刀打ちできないじゃないですか……。
筆者:そういうことになります。
「ユーロポール(欧州刑事警察機構)」が公開した報告書によれば、こうした芸術にAIが進出している状況は想像以上の速さでまさに現実を塗り替えているようだとし、
2026年までに「ネット上のコンテンツの90%がAI(人工知能)によって生成されたもの」になる可能性があるとしています。
合成コンテンツの多くは、ゲームやサービスを改善するためのもので、私たちの生活を豊かにしてくれる一方で、それによるフェイク情報や著作権に関する問題も増えるだろうと懸念されています。
質問者:確かに過去のデータを利用して分析しているとなると“ヒットする傾向”などと言うことも分かってきますよね……。
芸術すらもダメならじゃぁ、もう人間はAIに全く太刀打ちできないじゃないですか…:…。
筆者:このように現実を突きつけられるとそう思ってしまっても仕方のない事です。しかしながら、僕はそう思っていません。
まだまだ“人間にしかできない領域”と言うのは存在します。
質問者:えっ!? 一体どんな職業なんですか?
筆者:正直なところ、具体的に“この職業”と指定することは出来ないのでそこは難しいんです。
というのも、全ての職業がAIの影響を受けますが、人間にしかできないことと言うのは存在するという表現が適切ですかね。
次の項目から具体的にどんなことが“人間にしかできない領域”なのかを見ていきましょう。