“レリルール守護者”
「「ある……かむ⁇」」
「“アルカヌム”じゃ、ちぃと難しいかのぉ」
「「ある…なむ⁇」」
やはり難しい様で、2人とも顔を傾げている。
「わしらが暮らしとる『レリルール王国』にはの、それぞれの分野に長けた魔法使いと魔女に与えられる“称号”があるんじゃ」
「しょ…ご?」
「そうじゃのぉ、分かりやすく言うとな“すごい人”じゃ」
ルシオラの質問に祖母は子供でも分かりやすく答えた。
「この“称号”は4つあるんじゃ。
まずは『空を飛ぶ事に長けた“カエルム”』わしも使っておる『魔法に長けた“マギーア”』それからこれじゃ『“魔法道具”作りに長けた“オピフェクス”』」
そう言って【コンロ】を指差した。
「最後はわし『薬に長けた“アルカヌム”』ルクル•アニムスじゃ!」
「「おおー!」」
ルクルは自慢する様に言うと、2人は感動してパチパチと拍手しているが、まだ理解はしていないだろう。
「そんな4人をまとめて“レリルール守護者”と呼んでおる」
「しゅ…ご…しゃ⁇」
「守る人じゃ」
アウラの質問にルクルはそう答えると、ルシオラは手を挙げて。
「おばあさまは、なにをまもってるの?」
「わしか?わしはのぉ、お前達を守っとるぞ」
「きゃ〜」
「わ〜」
ルクルは思い切り2人を抱き締めた。
“レリルール守護者”は名前だけ立派で、それぞれの得意分野で魔法に没頭する変わり者の集まりだ。
(まともなのは“マギーア”だけしのぉ)
実際にレリルール王国を守っているのは、王族と貴族、兵士達の役目だ。
ただ“レリルール守護者”は膨大な知識と魔力を持っており、他国に知識と魔力が渡らない様に作られた“称号”で、レリルール王国から許可がない以上、出国することは出来ないが、その分研究に適した環境が提供される。
(わしにとって貴重な薬草が豊富な『ヘルバの森』みたいにな)
そして第五王妃様が王女をここに預けた最大の理由“レリルール守護者”とレリルール王国は国王陛下の力を持っても『干渉出来ない』法律があり、王宮の何処かにいる犯人から王女を隠す盾になると信じたからだ。
(この森はあの日から、人間はわしら4人しか入れへん結界もはっておる)
ガラッと戸口が開く音が響く。
「ただいま」
「「おかあさま、くろろ、おかえりなさいー」」
「カァー」
街に薬売りに行っていたカエルラが、バサバサッと飛んでいるクロロと共に帰宅し、アウラとルシオラが駆け寄り抱きつく。
「おかえり、どうじゃった?」
「お母様の薬は、とても人気ですから完売ですよ。
珍しく牛肉がとても安くて買って来ました」
「そおか」
ルクルは何事もなく安心する。
(わしも歳やし、次期の“アルカヌム”を決める準備をせんとな。
わしの娘だから継承出来る訳ではないが、わしの全てを教え込んだし問題なかろう)
“レリルール守護者”は難しい試験に合格した人だけ継承出来る“称号”で、歴代の合格者は“レリルール守護者”の知識を直接授かる事が出来る血縁者や弟子が多い。
(んでカエルラの次は…継承出来るもんが1人だけと決まりはないし、ルシオラとアウラが2人で継承すれば、アウラのもうひとつの王家の特徴も隠し通せるだろうし、問題なかろう)
「ごほっ」
「カエルラどうした?風邪か?」
「街で風邪が流行っているので、そうかもしれません。ごほ、ごほっ」
「それは大変じゃ、わしがやっておくからもう休め」
夕食の準備をしていたカエルラからエプロンを奪い取り、風邪薬を渡し休む様に促した。
「ごほ、そう…ですね。子供達にうつせないし、もう休みます。ごほっ」
庭で楽しそうにクロロと遊ぶアウラとルシオラを見ながら、カエルラはそう言うと母に家事を頼んで自室に戻って行った。
面白かったらすっごく嬉しいし、創作の励みになりますのでブクマと評価をよろしくお願いします。