世界樹の図書館(ユグドラシル・ビブリオテーカ)の “ 管理人 ” マリアベル
お待たせしました。
「…………」
「答えて下さる。 何故ニゲル宮からサラマンダーの気配を感じるのかしら? 気配からして恐らく未契約で生まれたばかりだと思うけど、アネモスが我が主に不思議なことを言っていたわ。 次代のサラマンダーが行方不明だと。 まさか、次代の火の精霊王サラマンダーではないでしょうね」
ネロはフレイムを静かに見定めるように睨むが、フレイムは臆することなく、はじめて聞く名前に誰だ? と思い。
「……アネモス?」
「天空のアレース城に住んでいる風の精霊王シルフの名よ。 それで私の質問に答えて下さる? 精霊と契約者はどんなに離れていてもお互いがどう過ごしているか、おおよそ分かるものなの。 下手な誤魔化しはきかないわ」
「……答えられないでは、諦めてくれなさそうだな。 遅かれ早かれ知られるならば言ってしまうか。 ここではさすがに言えないからマリアベルのところへ。 森の妖精」
「はいは~い!」
「なにかなー??」
フレイムは諦めてくれなさそうなネロに観念し、森の妖精を2匹呼び耳元で何かを囁く。
「マリアベルさまのところだね。りょうかーい!」
「『世界樹の根』 最下層へ。 マリアベルさまのところへお願いね」
森の妖精が小声で囁くと、巨大な根っ子がフレイムとネロを包み下へ世界樹の図書館の最下層へ連れて行き、ドシーーン!! と衝撃がフレイムとネロを襲い砂煙が立ち上る。
「もう少し優しくしてくれないか。 マリアベル」
「……ここは逢い引きする場ではないけど。 それにネロ。 あとでお伽噺を元の本棚に戻しておいて」
「承知いたしました」
巨大な根っ子が張り巡らされて本棚になっている部屋に、ゆらゆらと揺りかごのように揺れるロッキングチェアに座る、光加減で白や薄紫に輝く白銀の綺麗な髪の毛が、不思議な絵柄が描かれた布がくしゃくしゃに縮んだ輪っかの髪飾りで、左耳下辺りで束ねられ胸元から踵まで長く、20歳ほどの女性の後ろ姿がフレイムとネロの視線にうつる。 微かに尖っている耳が特徴的だ。
「フレイム。 ヴァンデルン国王陛下は話されるのを許可されて?」
「ああ。 “ マギーア ” と “ カエルム ” には説明して協力を仰ぐと」
「そう。 それならば反対はしない」
マリアベルと呼ばれた女性がフレイムに確認したあとに、パチンッと指を鳴らすと根っ子の床から根っ子が生えテーブルと3脚のイスに変化する。
「自然を操ることに長けていらっしゃる。 さすがは人間とエルフの混血かしら」
「……ネロ。 からかわないで」
「あら、本当のことでしょう。 現在は純血の高位エルフと純血の下位エルフと共に異空間に存在する世界樹の子株から造られた、この世界樹の図書館の “ 管理人 ” であるマリアベル様」
マリアベルはロッキングチェアからゆっくり立ち上がりフレイムとネロの方へ振り向く。 王家の血を引く人間と同じ淡い紫苑色が特徴的で、光が宿っていない瞳がフレイムとネロを見つめるが、焦点はあっていない。
「やめてちょうだい。 咎人故にハーフエルフの妹弟子と共に追放された身。 この世界樹の子株を与えられたのも、ハイエルフの師匠が命と引き換えにハーフエルフを救って下さった情けに過ぎない」
首元や袖口、裾に色とりどりの刺繍糸で植物の葉を連想させる刺繍が施された、真っ白なコヒスタンジュンロ風な民族衣装を身に纏ったマリアベルが、覚束ない足取りで、先ほど出現させた根っ子のテーブルとイスへ向かおうとして、
「マリアベル。 手を」
「いい。 ケヤキ。 クスノキ」
盲目のマリアベルを支えようと差し出されたフレイムの手は拒否られ、
「「……はい。 マリアベルさま」」
「お願い」
115~120㎝程の森の妖精が2匹、控えめにポンッポンッと現れて、マリアベルの手を取りテーブルとイスまで誘う。 マリアベルが指をパチンッと鳴らすと透き通った赤茶色の液体が入った透明で丸み帯びたポットと、ポットとお揃いになる透明な丸み帯びたカップが現れた。
マリアベルがもう一度パチンッと指を鳴らすと、ポットがふわふわと浮き上がり、カップに透き通った赤茶色の液体を注いでいく、
「ふたりとも座ったら」
「ああ」
「そうですわね。 失礼いたします」
フレイムとネロはマリアベルの言葉に従うように、残り2脚のイスへゆっくり座り、イスの引く音でフレイムとネロがどの辺に座ったか察したらマリアベルが指をパチンッと鳴らして、カップがふわふわとフレイムとネロの前まで運ばれていく。
「これはルイボスティーかしら。 よくルクル様とルシオラ様、アウラ様が手作りなさっておりました」
「ええ。 ルイボスティーやカモミールティー、ラベンダーティー、ミントティーは薬草茶とし有名だから」
フレイムはネロとマリアベルのやり取りを聞きながら、ルイボスティーを一口飲み込んで、口の中に広がった癖が強い味に思わず、
「ぐっ」
「フレイム様。 そのままだと癖が強いので蜂蜜を混ぜた方が」
「今度こそいけると思ったんだが」
「好みはそう簡単には変わりません」
「……そう……だな……。 マリアベル。 蜂蜜を貰えるか」
「……はぁ。 仕方ありません……ね」
マリアベルは指をパチンッと鳴らし、透明なミルクポットに入った蜂蜜と、透明なスプーンを出して、フレイムのルイボスティーのカップの中に蜂蜜を注ぎスプーンでかき混ぜる。
「このぐらいで丁度よいかと」
「あ、ああ。 助かる」
「…………まるで、昔からお互いを知っているような、やり取りをなさいますのね」
「「………………気のせいだ」
ネロの気のせい」
「あら、本当にそうかしら」
「それより話の続きをしたら、そのためにワタシの部屋……禁書の間まで来たのだから」
「……それもそうね。 何故サラマンダーの気配が新たに建てられたニゲル宮から漂っているのかしら?」
マリアベルはふたりの会話に入るつもりはないのかルイボスティーを飲んでいると、
「王宮の使者が館内に……。 そう、 “ アルカヌム ” の開催日が決まったの」
「ん、ああ。 王宮の使者がアウラとルシオラのところへやって来たか」
「ええ。 ワタシの管理する世界樹の図書館館内のことなら把握出来るから……1週間後……これはまた急ね」
「時間はないからな。 マリアベルも気を付けろよ」
「ワタシは水属性と風属性と……土属性の妖精と精霊とは相性が良くて、火属性と雷属性とは相性が悪いから心配はないわ」
そんなフレイムとマリアベルのやり取りを眺めていたネロは、
「マリアベル様。 貴女、まるで何が起きているのか、分かっているような口ぶりね……」
「……ええ。 ……ワタシが15年前のニゲル宮の放火の一因を担ってしまったのだから」
「マリアベルそれは……。 お前のせいではないと何度も言っているはずだ」
「一因ね。 それは……」
フレイム様が纏ってるマリアベル様の “ 加護 ” と関係があるのかしら――……。 ネロはそう疑問に思いながらも言葉で発することはしなかった。
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