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雨上がりの太陽

作者: 裏剣王

「三度目の正直だ‼︎頼む‼︎‼︎もう一回勝負してくれ」

季節は梅雨、クラス替えしてまだ間もない。

彼は千葉県の日笠ひがし高校に通っている高校2年生、雨間晴也あめまはるやだ。

「ったくお前は弱いな。3回勝負なんだから、もう俺の勝ちで決定でーす。強いキャラ入れればいいってわけじゃないのよ。」

彼は春也と同じ高校に通う、昔からの幼馴染、相川誉あいかわほまれだ。誉も春也と同じ2年4組だ。

「てか明日の国語のスピーチ考えた?席順的にお前が最初の発表だぞ。春也」「あっ‼︎完全に忘れてた‼︎ことわざについての自分の考えだっけ?」「そーだよ。そんなことよりお前あの学年一かわいい風花日菜かぜばなひなと隣なんてずりーよなー。好きなんだろ?告白しちまえよ!」「ざっ、ざけんな!好きでもなんでもねーよ。」「席替えのあと顔真っ赤だったけど?」

彼らの高校生活は至って普通。ちなみに言うと、春也も誉も彼女が出来たことはない。




「よし。じゃあ雨間から、自分の好きなことわざと、それについての理由を話してもらいます。1人3分程度で回していくぞ。そんじゃあ、雨間よろしく」

「僕の好きなことわざは『三度目の正直』です。このことわざの意味は、勝負事で、初めの2回は失敗しても、3度目には成功すると言う意味です。でも僕は必ず3回やれば成功するというわけではないと思います。自分の信念と努力あってこその三度目の正直だと考えています。それらが無ければ、何度やっても同じことだと思います。勇気を出して、一歩でも踏み出せば変わる未来があるように感じます。僕はこれから色々なことが……これで僕の発表を終わりします。」

「良い発表でした。じゃあ次は、風花よろしく」

「みなさんは奇跡を信じますか?人は、一度や二度だけ起きたことを偶然と言います。そして、三回以上その事象が起きることがあれば、それを必然だと言います。しかし、私はこれら全てのことが"奇跡"だと思います。これまでのことも、これからのことも、たくさんの奇跡が繋がっているのではと考えています。今日、私が紹介したいのは『二度あることは三度ある』ということわざです。このことわざは、本来、物事は繰り返し起こる傾向があるものだから、失敗を重ねないようにという戒めとして使われてきました。しかし私には逆のように思えます。このことわざは、『未来の奇跡を信じて』と言ってるように私は感じます。これから先、色々なことが……これで私の発表を終わりにします。」



「えー、みんないい発表でした。後半組は次の授業での発表となります。あと、感想シートを今日の放課後までにみんなで集めて私の職員室の机に置いといてください。それでは、授業を終わりにします。」



「ジャンケンで負けたやつ、感想シートの運び屋な〜!」

「別にそんぐらい誰でもいいでしょー。」

「1人はイヤだから、せめてジャン負け2人ねー」

このクラスには40人の生徒がいるが、ジャンケンに参加したのは前半の20名だ。

『最初はグーー、ジャンケンッ‼︎』

負けたのは春也と日菜だった。

「うーー。ヒナちゃんと2人きりはずりーよ〜」

「ラブラブ2人で持っていきな‼︎」



「ごめんねー。俺の友達あんな奴らばっかだから。」と春也。

「いやいや全然平気だよっ!………」と日菜は言い、少し沈黙が続いた。

「あのさっ、今日の風花さんのスピーチすっごく良かった‼︎俺も奇跡とかめっちゃ信じるタイプ!」

「ありがとう!でも、雨間くんの話したこととは逆っぽくなかった?わたし、あんまり努力とかできないから、雨間くんみたいな考えに憧れるな〜。」

「いや〜、あんなこと言ったけど俺も努力はちょっと苦手かなー。でも、本気になったことは諦めたくないな、絶対に、……なんかごめん!カッコつけた!」

「ふふっ、雨間くんてっ、カッコ悪い‼︎」

2人は笑った。


次の日から、春也は日菜に、日菜も春也に話しかけるようになった。2人はいつも他愛もない会話で盛り上がる。そこに邪魔するように晴也の友達が乱入してくるようになった。それでも日菜は笑っていた。日菜の友達も会話に入り、春也は内心2人だけで話したいと思いつつ、いつも楽しそうに笑っていた。



時が経ち、季節は夏、日笠高校にも文化祭がやってきた。

春也のクラス、2年4組はお化け屋敷をやることになった。しかし、春也はサッカー部の練習でなかなかお化け屋敷の準備に手伝えないでいた。


「ねー春也くーん。たまには手伝ってくれない?人手たりてないの。部活忙しいのは分かるけどさー、周りのことも考えてよ。」と、クラスの女子が言うと、

「悪いとは思ってるけど、そんなみんな本気じゃないっしょ?別に適当に作って、適当に当日なんとかやれば良くない?そんな高校生の作ったお化け屋敷くらいたかが知れてるでしょ。」と、春也。

「そんなこと言わないでよ!私たちみんなで決めて、一生懸命やってるのに。一回も準備したことないのに、よくそんなことが言えるね。」

「俺にとっては時間の無駄だから…」と言って、春也がその場を立ち去ろうとした時、

「ひどいよ。雨間くん。みんなが頑張ってるのが分からないの?…ほんと雨間くんは、カッコ悪い…」と、日菜は言い、その話は終わった。


それから数日経ち、春也は日菜を含め女子たちと話さなくなった。

「おーい春也ー。お前そろそろ謝ったほうがいいんじゃねーの?このままじゃ、風花と付き合うことは愚か、目が合うことも無いかもよ?」と、誉。

「別に風花さんのことななんとも思ってねーよ。ただ、今更謝ったって、カッコ悪いだろ。」と、春也。

「はー、お前はなんも分かっちゃいないんだな。やっちまったことは仕方ねーからさ、女子たちに謝んなきゃ、それこそもっとカッコつかねーぞ。それに俺はお前の幼馴染で親友だ。お前の好きな子くらい余裕でかかるってんだ」



「なんか私たちに言うことないの?春也くん。」

「何もねーよ…」



時はさらに経ち、文化祭まで1週間を切った。

「えーと、今日の総合の時間は、文化祭の準備としたいと思います。大体完成はしてきているようですが、『IT』さえ怖がらなかった私を、声を上げさせるくらい怖いお化け屋敷にしてください。」



「段ボール足りねーなー。春也と風花さんで職員室から持ってきてくれる?」と、誉。

「まーべつに俺はいいけど…」と、春也。

「それじゃあ、行こっか……」と、日菜。

2人は黙ったまま、廊下を歩いて、職員室へ向かった。

階段を降りる途中、日菜はつまづいて階段から落ちそうになった。が、とっさに春也が日菜の体を支え、日菜に怪我はなかった。

「ありがと…」と、日菜。

「どういたしまして…」と、春也。

その後も沈黙が続いたせいで、春也は自分の心臓の鼓動が速くなっているのに気づいた。しばらくして春也は、

「ごめん…実はさ、ずっと謝ろうと思ってたんだけど、なんだか恥ずかしくてさ。こっちの方がよっぽどカッコ悪いって、誉に言われちゃったよ。そのさ、、なんて言うか、自分なりの償いの意味でさ、誉に聞いたところ、まだ考えてない場所があるらしいから、怖いお化け屋敷の特徴を調べて、トンネルとかどうかなと思って作ってきたんだけど…」

「はぁー。全く雨間くんったら、わたしにだけじゃなくて、他の女子にも言いなよ〜。でも良かった!雨間くんが謝ってくれて!三度目の正直だね!」

2人はまた前の梅雨の季節に話したときのように笑った。


春也はクラスの女子たちにそのことを話し、謝り、許しいてもらい、トンネルについては、採用されることになった。


「ほんと春也くんて、不器用なやつ〜!」

「はるやは女子に強いようで弱いよなー」



そして、文化祭の日はやってきた。今日はあいにくの雨だが、客はたくさんきた。


「お客さん、怖がるといいね。」と、日菜。

「このクオリティだ!絶対みんなビビる‼︎」と、春也。

「まえは逆のこと言ってたのにー、ずるい!」

「えへへ、そういえば初めて話したときも、俺は逆のこと言ってたっけ?」

「たしかに!雨間くんのことわざとわたしのことわざは反対の表現の言葉なのにさっ!」

「それより、晴れるといいね」

「ねっ」



無事、文化祭は終わり、担任もお化け屋敷をとことんびびっていた。そして、1時間後には後夜祭が行われる。後夜祭では、花火が何発か上がり、最後の花火を一緒に見た男女は結ばれるという噂を耳にした男たちは好きな女子を花火に誘うために全力を注ぐ。

奇跡的にも雨は上がり、花火は打ち上げられることになった。

「はーるやっ。俺は他クラスの女の子誘ったらOKだった!おめーも風花さん誘ったんだろ!頑張れよ!」と、誉。

「なんで知ってんだよ‼︎2人きりの時に話したのに…」

「ばーか、親友はなんでもわかるもんだぜ!」



2人は職員室の隣の視聴覚室を約束の場所にした。日菜はそこで一人でずっと花火を見ていた。そして、大きな花火の後、長いこと花火が上がることはなかった。


「遅れてごめん‼︎俺から誘ったのに」と、言って春也が教室へやってきた。

「最後の花火、上がっちゃったね…」と、日菜は悲しげに言う。

「一緒に見たかった。その気持ちのせいで、外で足を滑らして、泥だらけになっちゃって、これで風花さんに会うのは悪いと思って、洗ったんだけど、全然汚れ取れなくてさ…」

「ほんと雨間くんって、カッコ悪い‼︎」

「げっ、三度目の正直で今度はカッコいいとでも言われるかと思ってた…」

「二度あることは三度あるの原則だよ!でも嬉しかった。花火誘ってくれて!」

「……そのさ、、、風花さん、俺と……」



『ヒュ〜〜〜〜、、、ドッカーーーーン‼︎‼︎‼︎‼︎』



雨上がりの空には、それはとてもとても綺麗で大きな太陽が上がった。その時間は長いようで短く、不滅のものなのか消え去るものなのか、その時の2人にはまるでわかっていなかった。

2人で見た夜の太陽は、真っ暗なお化け屋敷を出た時よりも眩しく感じ、2人の未来を照らしていた。



「花火、上がったね。」と、日菜。

「これも奇跡かな?」と、春也。

「たぶんそうじゃない?……そういえば、さっき言おうとしてたことって何?」

「……俺さ、風花さんのことが好きだ。付き合って欲しい。」

「…はい、、わたしも好きです、、、お願いします!!!」

「はー、、、よかった〜。まじで緊張した。」

「ありがとう。雨間くんが勇気を出して言ってくれたからよかった!」

「本気になった子のことは絶対に諦めたくなかったからさ。…あれ、またカッコ悪いこと言っちゃった?」

「ううん。とてもカッコいい。」

そして、2人はいつものように笑った。










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